2018年8月19日日曜日

鈴木 徹(東京海洋大学大学院教授)    ・【"美味しい"仕事人】冷凍を学問する

鈴木 徹(東京海洋大学大学院教授)    ・【"美味しい"仕事人】冷凍を学問する
美味しいものがあふれている日本の食、その美味しいものの舞台裏で食を支えている人達がいます。
今日は今や家庭の食卓や外食産業に無くてはならない存在となった冷凍食品についての話です。
冷凍学の一人者、東京海洋大学大学院教授の鈴木徹さん(62歳)は30年以上に渡って研究してきました。
鈴木さんが主導している食品冷凍学研究室は国内で唯一の研究室です。
冷凍学はただ単に食品を保存するためだけではなく、料理のおいしさに役立ったりフードロスやエネルギーロスの解決にもつながる学問として注目されています。

冷凍食品はスーパーマーケットとかコンビニエンスストアーとかで売られているものが一般の皆さんには冷凍食品と思われているかもしれませんが、ファミリーレストラン、外食産業、お弁当屋さんの裏方を支えているのが冷凍食品なんです。
ドライブインのうどんとか大学の食堂で出て来る昼のご飯などまあ多いんじゃないでしょうか。
原料の物流、魚、肉などの輸入の冷凍技術が無いと食品産業は成立しない。
生鮮野菜は冷凍が難しい。
食文化は国ごとに違うのでそれに対応した冷凍技術がそれぞれあります。
寿司、刺し身だとかなま物をいかに冷凍して元の状態に戻すかという技術に関しては日本の独壇場です。
クッキングされた野菜であり、最終的に火を通すものならば野菜も問題はない。

前の東京オリンピックの前には魚系のものは冷凍で物流は始まっていた。
冷凍食品がはじまったのが前の東京オリンピックです。
レストランはまだなかった。
選手団が来た時にどういうふうに食事を提供するかが問題になった。
帝国ホテルの村上さんにJOCの人が相談した。
料理してそれを解凍調理して提供することを考えたそうです。
調理した料理もやれるんだと言うことでメーカーさんが市販にも売り出したし、業務用にも提供、学校給食にも冷凍の物が増えてきたようです。
電子レンジの普及も冷凍食品を加速させました。

大学院の食品工学の修士を終わってから、ガス関係の会社で冷凍の機械、冷凍食品を作ってる研究開発部門に入りました。
冷熱のアプリケーションのセクションで食べ物に使うと言うところに配属されました。
当時ピラフが出始めていました。
ソテーはなにをやっているかというと最初は水分を飛ばすわけです。
蒸発している間はいくら加熱しても温度は上がらない。
水分が飛んでしまうとどんどん温度は上がってくる。
なまの場合は細胞がしっかりしていて、細胞の中に水が入っていてその水は飛びづらい。
冷凍すると、細胞の膜が壊れているんで、直ぐに水が出て来る。
それで1/3の時間で出来るというメリットがある。
冷凍、解凍するとうま味が増えると言うのは、茸類ではグアニンの成分が増える効果があります。
茸類はいい方向に作用していると考えられています。
シジミも同様です。(オルニチンという物質が増える。 最大8倍に増えた実績がある。)

家庭で冷凍をうまく利用しようと考えた場合、保管と解凍でほとんど駄目にしている。
肉類を保管する時に購入したパッケージのまま入れておくことは駄目、何故かと言うと乾燥してしまう。
氷も冷凍庫の中では段々気体になって出て行くので、冷凍したものも同様に出て行ってスカスカになってしまってまずくなる。
薄いラップだとどんどん水分が飛んで行き酸素も入ってくる。
氷が抜けると肉の場合は油とタンパク質が残っていてむき出しになっている。
そこに空気の酸素がアタックすると油が酸化して色が変になりタンパク質も変化して戻らなくなってしまうという現象が起こる。
乾燥しないように工夫すればいい。
買ってきてすぐに取り出して別のラップで空気が入らないように隙間のないように(三重程度)巻いて、保存袋に入れてやる。
きっちり遮断するとラップだけで保存袋はいらない。

小さなアジ、イワシなどを内臓はそのままにして水に浸けて保存袋に入れそのまま氷らしてしまう。
そうするとバリア性があり、3カ月ぐらい持ちます。
貝類あさり、しじみなどを買ってきて、パックに水と貝を入れて、それを氷らしてしまう。
氷の中に貝が埋まっている感じになる。(長持ちをしていつで取りだして使える)
解凍は冷蔵庫で解凍しては駄目。
氷っているまんま一気に加熱してあげる。
魚は解凍する時に酵素が残っているので、フライパンなどに水をはってそこにいれておく。
冷たい状態の水の時にスプーンで叩いて氷を割る。(流水では駄目)
気を付けなければいけないのは魚の表面の温度が上がってしまうと言う事。
ウニも永遠の課題だったがうまく戻るようになってきた。(研究中)
ウニの殻付きで冷凍して解凍して殻を取ってやると何割かで上手く身が復元できる。
その原因を現在追求中です。
ウニはシーズン性があり、殻をむいて市場に出す訳だが、地方には人がいない、冷凍、解凍して出荷することで一定に供給できることになる。

握り寿司の冷凍の研究も今しています。
電子レンジで10数秒するとご飯が70℃、ネタは熱くならない、半解け状態です。
その後3~4分置いておくとご飯は温度が下がり人肌となり、ネタは20℃位になりベストになる。
ご飯は37℃位、ネタは20℃位が一番美味しいと感じる。
日本で握って海外で美味しい寿司を食べると言うことも夢ではなくなるかもしれない。
冷凍技術を使ってフードロスを解決していきたい。
食べ物は口に入るまでエネルギーをどんどん使っている。
食料もエネルギー問題として捉えるべきだと思っています。










































解凍