2018年6月15日金曜日

本田美和子(国立病院機構東京医療センター ) ・ユマニチュードを日本に紹介して

本田美和子(国立病院機構東京医療センター 総合内科医長)・ユマニチュードを日本に紹介して
認知症患者の数が、団塊の世代が75歳以上になる2025年には、700万人になると予想されるが、認知症の人達とどのように接したら良いのかが、医療や介護の現場で大きな課題の一つになって来ました。
本田さんは1993年筑波大学筑波大学医学専門学部を卒業、アメリカの大学病院に勤めるほか、日本で内科医として20年余り働いてきました。
認知症の医療介護と向き合い、試行錯誤の日々を過ごす中で、本田さんはプロのケア技術を誰にでも出来るように体系化し効果が高いと注目されている、フランス生まれの認知症ケア、ユマニチュードに出会いました。
6年前から日本に導入し、普及に努めています。

ユマニチュードというのは人間らしさを取り戻すという意味のフランス語の造語です。
フランスで介護の施設、病院の職員向けにどうやればいい介護が提供できるかということを40年間現場でやってきた方々がいるが、その方々が作り上げた基本的な考え方と(哲学)と具体的な技術が一体化したケアの技法です。
英語で読むとヒューマニチュード(Humanitude)になります。
私は内科医になって、仕事をやり始めたころと今では社会の状況が変わって、20年前ごろは病院にいる患者は自分の病気が判っていて、病気を良くしたいと思って検査、治療などに協力してくれ、協力し合うと言うことが前提になっていた。
今は90,100歳以上の方が入院するが、非常に脆弱な状況で認知機能が落ち来てしまっている方がおり、自分が何処にいるのか判らない、目の前にいる人が何をする人なのかが判らない、どうしてこんな痛い事をされるのかわからない。
働いている人にとっては提供したいという治療を受けとってもらえないという事態になる。
そのような思いを届ける技術が無いと駄目な時代になってきたがどうするかわからない。
フランスではそういう取り組みをしている人がいることを雑誌を見て知りました。

知っておきたいと思って、或る日聞きに行きたいと思って2011年夏にメールを送りました。
エイズについての仕事をやっていましたが、良い薬が出来て、長生きが出来るようになり、エイズの高齢の方の問題が出てきて、ユマニチュードを知りたいと思いました。
新しい分野で高齢者への医療を実践したいと思いました。
日本の看護師、介護士さんには絶対出来ると思いました。
あなたと私はここにいてとってもいい関係にあるんだと言うことを互いにやりとりをし合うと言うことが大事なんです。
言葉によって色々話すが、これだけでは一方通行になり、相手から持ってきたものを受け取っているんだと頷いて返してくれることで、良い関係があると言うことが二人は判る、それを医療で実現すると言うことがユマイチュードなんです。
ケアされる人からは色々の情報を発信している。(声、音、仕草等)
限界まで近づいたと思った時に声をかける。
良い語彙を選ぶ、声は低く大きくしない。
目を合わせて声を掛けた2秒以内に触れた方がいい。
なるべく鈍い所、背中、肩等にゆっくりと触る。
掌、顔は敏感なので触らない。
ケアをする時には腕を掴むと言うことは吃驚するので、下から支えて広い範囲にする。

介護が楽しくなったと言う人が増えました。
介護される人も穏やかに過ごすことができる。
互いに良い時間を過ごしたということを互いに認識し合う時間が増えて行くのではないかと思います。
今年は新しく地域社会でユマニチュードを学んで、みんなで高齢の人にお元気に過ごしていただけるようにという自治体が増えてきました。
福岡市では「プログラム100」というプロジェクトが出来て進められていて、リーディング事業として採択されて2年前からやっています。
公民館でユマニチュードを学ぶということを行っています。
小学生にも学んでもらっていて、先生に対して教え方を教えることなどもやっています。
救急隊の隊員の方にも学んでもらうと言うこともやり始めました。
家族介護をしている方に対しては、短い時間で教材を渡すような形で役立ててもらえればということをしていてDVDの教材も作りました。

家族の心持ち、考え方、技術が変わったという声をいただきました。
一人では頑張り過ぎないということは重要で、助けを求めてもらいたい。
地域で支えて行く、そのためには様々な取り組みが有ります。
日本科学技術振興機構から研究費をいただいて、5年間に渡ってユマニチュードが何故有効なのか、多くの方に学んでいただくためにはどうしたらいいのか、大学の先生たちと一緒にチームを作ってやっているところです。
困っている様子をビデオにとって安全なサイトに持ってきて提案することができる。
試行的ですがやっています。
課題は学ぶ時はしっかり基本から学んで、ビデオなども使っていただけたらと思います。
上手く行かないに時にユマニチュードを学ぶと判るようになります。
教える人が圧倒的に足りないのでAIを使ったり様様な技術を使って行きたい。
介護に困っている方にはユマニチュードは伸び代があると思います。
地方への展開も進めています。

海外に付いても講義に出かけたりしています。(アメリカ、アジアなど)
病院は病気で困ってる人を待っている、ユマニチュードは介護士に限らず、医師、看護師、家族、店員など誰かを大事に思ってその人を尊重するという社会は、日本に限らず必要になって来ると思います。
困っている人を助けると言う考え方を実践するにあたって、ユマニチュードという技術は役に立つのではないかと思います。
そうして行くと人と人が良い関係を結んでゆくという社会が実現されて行くと思います。
社会の中で目を合わせて「こんにちわ」と言ったりすることで、人と人との良い関係を生みだすきっかけにもなります。
人が人とやりとりがある時には、その人を大事にすると言う気持ちがなければ駄目なんじゃないかと思います。