2018年6月11日月曜日

田名部和裕(日本高等学校野球連盟理事)  ・【“2020”に託すもの】高校野球と歩んだ半世紀(2)

田名部和裕(日本高等学校野球連盟理事)・【“2020”に託すもの】高校野球と歩んだ半世紀(2)
前回は2000年ごろまでの話、佐伯 達夫会長、牧野 直隆会長時代。
大きな人気を得ながら高野連が将来を見据えながら続けている様々な取り組について伺います。
選抜での21世紀枠。
春休みに行うので日程的な問題もあり、通常は32校となり代表を送れない地区が出てくる。
GHQの意向もあり全国という名前を外したいきさつもあるが、今になったら出場校を増やしてほしいとかの苦情が出てきて、牧野さんが自由に何処の地区でもチャンスがあれば出られる発想が必要だと言うことでした。
「教師冥利につきることとはどいうことか」ということでアドバイスをもらって教室ではなくてグラウンドに置き換えた場合はどうすべきかを考えて、ちょっとの違いで代表になれないとか、地域に非常にいい影響を与えているチームを選んだらどうだろうということに行きついて、牧野さんに相談したら、面白いからいいのではないかということになり、21世紀に向けて良い案を出してほしいと言われた。
21世紀枠で2001年に福島県の安積高等学校と沖縄県の宜野座高校が甲子園に来ました。
当時のキャプテンが私の所に来て、甲子園に出たことで関心を集めたことで、努力しなくてはだめだと言うことで、大学を出て6年間沖縄の教員採用試験にチャレンジして那覇商業の先生になりましたと言うことで、まさに21世紀枠の狙い通りだと思います。

タイブレーク制が導入、今年から導入されました。
94年からアジア大会、世界大会迄行くとタイブレーク制が導入されていて、ピッチャーの投球傷害、選手の健康管理などを考えると、これからの時代はどこかで区切りを付けてやらないといけないのではないかと思いました。
1986年の天理高校の本橋投手、91年の沖縄水産の大野投手痛々しい形で決勝では投げていて、なんとかしなければと言うことで、93年の大会で投手の関節機能検査をしました。
それは大きな変革だったと思います。
故障の内容を見ると小学校、中学校の時代に故障しているというのが結構あるのでこの問題はみんなで考えていかなければいけない問題だと思っています。
暴力、いじめ、体罰、などの問題。
佐伯さんは暴力の問を講演をしていましたが、「暴力は心が貧しいからだ」というように説いていました。

最近はいじめが出てきて、信じられないがそういう環境になってきてしまっている。
2007年プロ野球選手会が協力してくれてシンポジウムを行っていたが、地元の理事長の松本さんが、宮崎出身の木村拓也さん、青木 宣親さんに対して「シンポジウムを開いてくれるのはうれしいが暴力事件、いじめがあって残念だ」とポロっと言ったのを聞いて、3時間のシンポジウムが終わった後に暴力、いじめに関して話し始めました。
「いじめなどちっぽけな考えで駄目だ、世界を目指せ」というようなことを話してみんなシーンとなってインパクトがありました。
2007年特待生問題、尾藤竜一さんを塾長に山下さん等が指導者への教育として甲子園塾を開きました。
生徒に手を出すのは即効性を求めるからで、選手を育てるのには急いでは駄目だと、作物を育てるように大事に見守ってやることが大事だといっていました。
生徒とのコミュニケーションも大事だと話していました。

2002年脇村春夫さんが高野連の会長になる。 自身が高校球児
湘南高校で初出場初優勝の時の選手で東大でもキャプテンを務める。
野球が大好きな人です。
不祥事件があるのは指導者の問題もあると思うので「育成功労賞」というものを設けて、表彰する。(8名)
8月15日に毎年やっています。
戦争での鎮魂とともに高校野球ができるのも平和のお陰なので平和が続くようにという願いを込めて、「育成功労賞」の方々を含めて黙とうをしていただいています。
プロとアマチュアの問題。
プロ野球選手会の松原徹さん、(事務局長)からオークションで溜まったお金が1000万円になるので使い道をどうするか、についての相談がありました。
高校野球への恩返しをしたいと言うことでした。
2002年に一回戦で負けてしまった高校野球チームにボール半ダースずつ送ることにしました。
400人余りのプロ野球選手が自分の高校野球に対する思いをはがき大の紙に書いてもらって、箱に入れて各学校に選手が直接送りました。
メッセージ集も作って、シンポジウムでは自分たちは高校時代にこういうことをやったから今プロ野球選手になれた、君たち高校生はこう言うことをやっておくべきだと言うこの2点をテーマにしてプロの選手たちに語っていただきました。
3時間のメニューで2000人位夏各会場に集まってくれて、生徒は熱心にメモを取って聞いていました。
全国を回ろうと言うことになり、8年間かかったが6会場づつで回り切りました。
シンポジウムを各地で開くと先ず大事なことは、どの会場にもプロ野球のセリーグ、パ-グの球団の代表が冒頭5分間挨拶します。
シンポジウムは御当地の選手を出すので、教師の方でもあれは教え子だと言うことにもなり、話も熱心に生徒も聞いているので、プロ野球との関係もなんか考えないといけないなと考えるようになりました。
特待生の問題、越境入学などが昔からあり、20年ぐらい前に野球留学という形で地元の選手があまりいなくてどういうものかということになりました。
有るべき姿を考えようと言うことになり、いいきっかけになったと思います。
佐伯さんという偉大な人がいて高校野球が育ってきたという思いとともに、地方に出かけて行くと甲子園には行っていないが素晴らしい指導者に出会ったりして考え方が変わってきました。
野球を通じて将来社会に役立つ青少年を育成するんだと、勝つだけではなく日頃きちっと指導している先生がいると言うことを見ると、高校野球はそういった点では非常に大切かと思います。
約2000校/4000校は一回戦で負けてしまうが、敗者から学ぶものは物凄く大きくて、特に高校野球は大切にしていることと思います。
連盟史を作っているが学ぶ事がいっぱいあり、振り返って足跡をたずねてもらえれば指導者にとって新たな思いが開けるのかなあと思うので、良い指導者として生徒を育成していただければと思います。