2017年6月13日火曜日

貫行子(日本音楽療法学会評議員)  ・心を和らげる音楽の力

貫行子(日本音楽療法学会評議員)・心を和らげる音楽の力
5歳からピアノを習い音楽に関わる仕事をしたいと東京芸術大学音楽学部学理科に入学し、音楽心理学を学びました。
当時日本ではあまり知られず、研究が始まったばかりの音楽療法と出会いました。
1960年のことでした。
以来音楽療法の研究一筋に取り組み、大学や病院の協力を得て実験をかさね、音楽と自律神経、年代別のストレス解消音楽の違いなど、データで実証しました。
今では音楽療法は心のケアや高齢者の認知症予防にも効果がある事が知られるようになってきています。
来月7月には、茨城県つくば市で世界中の研究者が集まって、音楽療法の世界大会が開かれます。

子供の時はピアノを勉強していて、東京芸術大学、音楽学部楽理科に入学し、音楽史、音楽美学、音楽心理学を主に勉強して、ピアノに、歌のレッスンも毎週あります。
桜林仁先生が日本に音楽心理学を導入した先生で、お手伝いをするようになって
続けてやってきました。
聞いて癒されると考えるかもしれませんが、認知症予防、介護予防とか実際に身体をつかって貰ったりして歌ったり、楽器をつかったりして脳を活性化する方に重点があります。
中高年の方の場合はストレス解消と言うことで素敵な音楽を聞くと云うことになります。
大学卒業後、筑波大学の理療科教員養成施設に行って、生理学的反応(心拍数、脈拍、血流量を測る装置がある)を測定して、音楽を聞いたりした時の生理的反応を調べたのが始まりです。
20世紀になってからアメリカで、戦争での帰還兵の心身症がなかなか治らなくて、音楽療法が始まった経緯があります。

実際にダンスをしたり歌ったり身体を動かす、実践する音楽療法がなされていました。
93歳の女性の方、音楽療法が自分の生きがいと言っていた人ですが、昨年複雑骨折で背中が痛いということだったが、音楽療法のその時だけは痛みを忘れると云って下さって、痛みの緩和と高齢者の音楽療法の研究をまとめて今年発表することになっています。
イギリスでチェロを障害児に聞かせて、障害児への音楽療法を始めて音楽療法協会の会長をされて、日本にも来られて、著書が2冊在り、その1冊を私と桜林仁先生で共訳して、日本ではじめて「音楽療法」というタイトルで出版されました。(1969年)
研究をしてデータを出すのが好きでした。(生理的反応、脳波)
ベータ波アルファ波があり緊張するとベーター波が増え、リラックスするとアルファ波が増える。
アルファ波が増えるような音楽を提供すれば役に立つのではないかと思って、バイオミュジックとして世に出しました。
1980年代の最期の頃 発表して後にCDとなる。

データを取りだしたころはコンピューターがなくて、物差しで測って解析したりして大変でした。
大きい振幅は活性化していると言うデータ、裏付けが出せました。
聞く人の年齢差、男女差でも色々違いがあります。
クラシック、ロック、せせらぎの音を実験した時には、60代ではモーツアルトのクラシックが一番安らぎを感じて、20代ではロックミュージックで一番安らぎを感じると云う事がありました。
音楽の訓練を受けた人と受けて居ない人でもリラックスの傾向が違ってくる。
育った環境によって自分がリラックスする音楽も違ってきたりします。
クラシックが一番リラックスしたと言う人が実は秋田民謡が脳波では一番リラックスしたと云うような結果もあります。
フィーリングミュージック(癒し音楽)を使ってストレスホルモンの研究を東京大学の先生と一緒に研究したことがありますが、音楽を聞く前、直後、15分経過後の血液を採取して調査をしたら、音楽を聞いた後にはストレスホルモンが減っている事が判りました。

この研究成果は世界音楽療法大会で発表しました。
モーツアルトの曲を牛に聞かせると良いとか、胎教にいいとかありましが、乳の出方が多かったと言うが、絞る人が心地よくなって手の技がさえたのか牛なのかは判りませんが。
胎教音楽の研究もしましたが、妊娠7か月のおかあさんのベッドで色んな音楽を聞いてもらったのですが、モーツアルトよりもディズニーの音楽がお母さんは好きで、ディズニーの音楽を聞いた時の方が、超音波診断であかちゃんが好ましいような動きをしたということでした。
自分の好きな音楽が一番いいということですね。

2000年に日本音楽療法学会が出来ましたが、理事長は今年105歳の日野原先生で、昨年辞められました。
音楽療法士はそれなりの経験および資格が必要になります。
高齢者音楽、1990年頃から施設に行ってやるようになりました。
ある患者さんに色々な曲が入っているものを4週間聞いてもらって、「ヤシの実」と言う曲が入っています。
通常認知症の方は我々のまどろみの脳波、シータ波が出ているが、音楽を聞く事によって少し活性化してアルファー波になる、健常の人はアルファ波だとリラックスですが、認知症の人がアルファ波に変わったと云うことは少し活性化したということです。
音楽療法をやったあとで実際に自分が歌ったり、弾いたり、身体を動かすことをやってきて、20年ぐらいになります。
うつむいて居た方が上を向いて顔色が良くなったりして、予防医学という観点からも高齢者の音楽療法は必要だと思いました。

スキンシップをすると云うことも喜ばれます。
解放される音楽は人によって育った地域、思い出などによって違ってくる。
感覚統合理論に基づいておこなっていて、聴覚だけでなくて、視覚、触覚等たくさんの感覚刺激を同時に行うことで、いっそう脳が刺激されます。
プログラムとしては「こんにちわの歌」を歌って、挨拶をして、時、所、人を認識してもらって、体操をして、腹式呼吸をして、発声練習をします。
その後季節に合った唱歌を二つ歌います。
脳刺激のために歌いながらじゃんけんするとか、並行して色々動作するとかも行います。
回想療法、若かったころを思い出して意識の回復を促す為に昔の歌謡曲、演歌などを歌います。
器楽でテンポの速いリズミックな曲で活性化します。
そこでプログラムを終了して、クールダウンとして穏やかな曲を私が歌ったり弾いたりしています、最期にさようならの歌を歌います。
何のためにこれをやるのかということを理解してもらいます。

7月に茨城県つくば市で世界音楽療法大会が開かれます。(2000人 そのうち500人は海外から)
今はホスピスでも音楽療法が行われて居ます。
たとえ治らなくても精神的に生き甲斐を持って、人生を全うしていただけるようにと音楽療法が役立っていますが、手を握ってるだけでもいいといわれて居ます。
気持ちいいとか、楽しいとかそういう時には、幸せホルモンが出るそうです。
幸せホルモンとはβエンドルフィンというもので、痛みを忘れさせたり、気持が高揚して、脳を刺激して老化を防いでくれて、免疫力を高めてくれて健康長寿にも繋がります、と言うことを免疫学の先生から聞きました。