2016年10月17日月曜日

井上道義(指揮者)           ・地方オーケストラを育てる

井上道義(指揮者)・地方オーケストラを育てる
井上さんは1971年イタリアの指揮者コンクールで優勝して以来45年間に渡って第一線で活躍されています。
井上さんは国内の主なオーケストラのほか、ニュージーランド、アメリカ、ヨーロッパの有名オーケストラも指揮して来ました。
9年前の2007年からは石川県のオーケストラアンサンブル金沢の音楽監督に、おととしからは大阪フィルハーモニーの首席指揮者に就任、あまり取り上げられることのない、近現代の音楽を積極的に取り上げるなど、地方の楽団の演奏活動に力を注いでいます。
この秋、これらの活動が評価され民間企業メセナの音楽賞を受賞しました。

7月に大阪フィルの500回目の定期演奏会。
バカロフという作曲家のミサ・タンゴをやって、踊る様にお祈りする、をやってからベートーベンの「英雄」をやりました。
オーケストラは今のその街の誇りになる様な物になるべきであって、その街を表現できればいいと思っている。
日本で一番ラテン系なところが大阪だと思っています。
言葉というものは全ての文化の元だと思います。
石川県のオーケストラアンサンブル金沢は9月に石川県立音楽堂開館15周年スペシャルコンサートをする。
駅前なので人がたくさん集まる。
音はホールが作ると思っていて、ホールで練習しないと本当の個性は出てこないと思う。
ヨーロッパ、アメリカなどは皆自分のホールで練習しているが、日本だけはなかなかそうは行かなくて、アンサンブル金沢は本当にそこでやっている。
岩城さんが亡くなってから2007年からやってきて本当に一つの音色が出来たと思います。
金沢だけでなく、非常に旅の多いオーケストラで海外旅行も今まで18年間行っています。

或る日中学2年の時に、父が義務教育は中学でおしまいなので、高校からは自分で行くようにという様な事を言われた。
父はアメリカで育って苦労していたし、差別を受けてきたようだった。
シカゴで苦労して大学まで行ったので子供に対しても厳しくした。
18歳まで指揮者の道でやってみて駄目だったら辞めようと思った。
当時ピアノ、バレエ(殆ど男性はやっていなかった)をやっていた。
バレエでは身体が硬くて駄目で、舞台をやりたかったが、外国にもいきたかったし、指揮者を選んだ。
桐朋学園大学に入って、伝説的な指揮者斎藤秀雄さんについた。
厳しいなかでピアノも勉強した。
指揮者はちゃんと楽器ができないと駄目だと思います。
斎藤秀雄先生は言っていることは全部正しいが、世の中答えは一つしかない先生で、答えは一つしか無いのかと、何時も反発していた。
先生をやると言うことは壁になることだと、途中から判って尊敬した。
日本の良い指揮者を皆教えたが、指揮者としてはよくなかったと思う。
1971年にイタリアのミラノスカラ座主催のグィード・カンテッリ指揮者コンクールで優勝する。
小手調べぐらいの気持ちで参加してみて優勝してまずかった、天狗になってしまった。
エリアフ・インバルリッカルド・ムーティも優勝してる。
仕事をバリバリやったが、ネタが尽きて、英語ができないし、レパートリーを増やすためにもニュージーランドに行きました。
ニュージ-ランド放送協会のオーケストラで、最初のコンサートで第九をやって、彼らも初めてだった。
勉強ばっかりしていました。

日本に戻ってきて、新日本フィルの音楽監督になる。
音楽監督を辞めたくなって、オペラをやりたくて、ヨーロッパに行った。(35歳)
友達から連絡がきて京都市交響楽団に来てほしいとの事だった。
クラシックをふに落ちるところまでやりたくて、ヨーロッパの仕事をしながら、京都市交響楽団で8年間やりました。
2007年からは石川県のオーケストラアンサンブル金沢の音楽監督をやりました。
岩城さんが初代でした。
彼は色んな病気を抱えていたが、アンサンブル金沢の文句を言ったら2年で凄くなった。
良いところに良い人材を入れて、個性的になってきた。
自分達の世界は地方とか関係なくどこでも持つべきだと思っている。
東京なんてブラジルから見たら地球の果ての小さな島です、そういう意識は大事だと思う。
歴史の有るところで音楽の土壌を掘ってゆく、金沢は成功していると思う。

オーケストラアンサンブル金沢は35~40人の小さなオーケストラで、若い人が入りたがっています。
とんがっていて素晴らしいものをどこにも負けないものを作るべきです。
大阪でも金沢でもそうあるべきだと思っている。
東燃音楽ゼネラル賞を受賞、地味だけれどずーっと一つ一つ積み重ねた人に与えられたというもの
らしいです。
ハイドン、モーツアルト、ベートーベン、これをちゃんとできる指揮者になりたかった。
マーラーをやったり、色々やってきて良い録音ができていると思う。
古典、ロマン派はちゃんとやってきたつもりだし、現代ものも随分取り組んできました。
N交響楽団とも11月に予定されています。(32年ぶり)
練習していても楽しくて面白い、物凄く通じやすい。