本池秀夫(革工芸作家) ・革に命を吹き込む
鳥取県1951年生まれ 革を利用した工芸品を作って45年になります。
その優れた技術が認められ今年鳥取県の無形文化財保持者に認定されました。
革を扱う工芸技術が文化財になるのは国や都道府県で初めてのことです。
本池さんは大学時代から独学で革工芸に取り組んで、その仕事はカバンなど実用品にとどまらず、レザーアート言われる美術の世界に展開しています。
老人や子供の何気ない日常の一こまを題材にした革の人形や、動物を等身大で表現した革の動物などの作品は髪の毛一本一本迄見分けられるほどリアルに作られて、衣類や家具、壁なども革とは思えない質感を持って表現されています。
無形文化財は伝統工芸の世界のものであるみたいな流れで、師匠がいてかたくなに守っていきながら、自分のカラーをどう出すか、それに対し認定を受けるという様な現状ですが、縁がないと思っていました。
人形とかが好きだった訳ではなく、革が小さい時から好きだった。
祖父から母から公務員だったが、自分は革の素材が好きで、革で何か作ったりしました。
中学から大学まで器械体操をやっていましたが、殆どの人が体育の先生になる世界でした。
ヒッピー見たいに旅をして何カ月もヨーロッパを旅しようとして、二ケ月あまりしてイタリアに入ってローマで焼き物の人形を見ました。
磁器の中に血が流れている様な温かみを感じた。
作った人は人間国宝みたいな人でした。
若い職人の手本になっていた人でした。
焼き物でこれだけリアルなものができるのなら、牛の革で作ってみようと思ったし、一生の仕事にしようとも思ってしまった。
もっと旅をする予定だったが二ヶ月で取り辞め、見た後直ぐ日本に帰ってきました。
生活をしなくてはいけないので、バック、靴、小物などの革製品を作りながら人形の研究をして或る程度完成してきました。
縮尺1/27 25cmぐらいの人形で、額の皺、髪の毛一本一本まで判るリアルな人形。
下着、Yシャツ、ベスト、スーツなどまで実際に着ています。
見えないところの物がリアルさを出して行ってるんじゃないかと思います。
靴も木型を作って靴を作って人形に履かせています。
一体を作るのに一週間位掛かりますが、木型を彫ったり見えないところに手間がかかっています。
2cm程度の顔を作るのに、革は20cm以上の革をカットして、乗せて残しておいてそれを長く切って髪の毛にして結っていきます。
65歳になりますが、40年ぐらいリアルにやって来ましたが、皺も3~4本の皺を0~1本で80歳の老人の顔が出来るようにならないかと思って今は取り組んでいます。
日常生活の中の或る場面を捉えた様な作品が多いです。
老人と子供がメインのテーマになってやっています。
革は本来捨てられる部分だが、再び生まれ変わる。
人形がしゃべってる様な気がするから、可愛いねとかお客さんが喋ってくれるような気がする。
もう一度生かされるような思いで、好きでいいなあと思っています。
動物もいろいろ作っているが、インドサイは数百頭しかいなくなって、絶滅の危機にあり、作って見せてこんな動物がいるという事、絶やしては駄目という様な問いかけをしたい。
キリンは6mぐらいあり、足場を組んで作っていきます。
足が細く不安定なので、彫刻用の発砲スチロールで型を作って、樹脂でもう一度復元して、その上に革を張るが、中に鉄で溶接して安定させます、牛を20頭分ぐらい使って一頭のキリンを作ります。
1から私が勝手に考えだしたので、毎日毎日が何ができるのか判らない、ものができ上ってからこんなものが出来たんだと、いつもわくわくします。
東京に10年いましたが音がすると言う事で9回位引っ越しました。
広い場所も必要なので鳥取の米子に帰ってきました。
欧米からも人形を見せてほしいと、きてくれますので、どこでやっていても同じだなあと思います。
美術館なので個展をやったりしているが、革の人形が一つのジャンルとして認められるのは大変なことだと思います。
木竹、染色、陶芸なども全て何百年掛かって工芸と言われたりするが、私が一代で、という様なことがとてもじゃないと思っていたが、鳥取県の無形文化財として認めてもらえたのは、ちょっとは認めてもらえたのかなあと思って、若い人に伝承していけたらいいなあと思っています。
常時見られるちっちゃな美術館が出来たらいいなあと思っています。
革の仕事は古いと思う、マンモスの時代から寒さを防ぐために作ったりしているので、面白いなあとは思う。
革の素材でアートの世界に入っていったのは今までにはなかった。
海外から注文が来たりしますが、農耕民族と狩猟民族との違いがある様な気がします。
何故日本人の顔を作らないのかと言われるが、日本人は畑で取れる植物、綿だとかが合っていて、革ではないと思う。
欧米の人の顔つきは皮の服、靴が良く合うわけですね。
日本人の顔を作ったことはいくつかあるが、何か異和感が有る様に感じます。