2021年11月27日土曜日

竹下景子(俳優)            ・宮城の心を語りたい

竹下景子(俳優)            ・宮城の心を語りたい 

おかえりモネは、2021年度前期放送のNHK連続テレビ小説」第104作として、5月17日から10月29日まで放送されたテレビドラマ。  竹下さんが演じたモネの祖母永浦雅代はドラマの中では当初から亡くなっています。   震災で亡くなったのではなくその後病気で亡くなっています。   そして海の中の牡蠣に生まれ変わって、モネたちを見守る語りを担当します。   竹下さんにおかえりモネ』に込められた思いや、震災10年を過ぎた宮城県とのかかわりについて伺いました。

私が1次ロケに参加したのが9月の終盤のころで、2回目に気仙沼にいって撮影したのが10月でした。  あっという間の気がしますが。   連続テレビ小説に参加したのは5回目になります。   震災後10年の節目の年にこのおかえりモネ』が制作されるというのは意義深いことだと思います。    私自身がいろんなことを教わったなあ、気づかさせてもらったなあと思います。    おかえりモネ』の大きなテーマが「循環」でした。  水を通して海と山と空は一つにつながっているという事がわかります。  命のめぐりという事が一つありました。  もう一つは震災という大変大きな辛い出来事がありましたが、それを経験することで痛みを持っている人たち、当事者でない人たちは簡単に判ったと言えない、そこを踏まえたうえでそこをどうやって人と人が繋がって行けばいいのか、という事を模索しながら進んでゆくドラマでもありました。   自然の中で物を作ってゆく大変さも知りました。   ナレーターとして参加することはドラマを俯瞰するように見るというのが 普通なんだと思いますが、役を通して語りをやっているので、気仙沼の言葉の優しさとか、柔らかい感じをアクセントを交えて、隣の人に語りかけるようなつもりで読ませていただいています。    

ハラハラすることが前半には多かったですね。   東京に出てきたときの初々しい感じ、気象予報士として気が付いたら番組に参加していたとか、思い出すといろいろありいます。亡くなった方が生きているという感じがするのって、凄く救いになるんじゃないかなと思います。   及川新次さんが自宅や建造したばかりの自身の漁船を流され、妻の美波も失う。    「自分は絶対立ち直らない。 立ち直ってたまるか。」というセリフがありますが、もしかしたら十字架になっているかもわからないけれども、その負担を背負って一生自分は生きて行くんだという、その覚悟ですよね。   こういう方も実際にいらっしゃるだろうなあと私は思いました。   そういう人達の周りに放っておかない、一人にさせない人たちがいて一緒に生きてゆく、その姿はとても美しいというか、胸を打たれました。   

「生活ホットモーニング」の番組の旅のコーナーの中で、初めて訪れたのが気仙沼であり、気仙沼大島でした。     幻想的な海霧がのぼっていて、気仙沼大島に渡って気仙沼の暮らしぶりとか漁に出てゆく男たちを見送る時の話、帰ってきた時のもてなしなど、島の風土暮らしをちょっとだけ体験しましたので、それがおかえりモネ』につながったんですね。    話を伺った熊谷鈴子さんはもう90歳を越えていて、80歳のロケの時にすでに島の名物おばあちゃんでした。   兎に角ホスピタリティーの塊のような方で鈴子さんがいるといつの間にか人が集まってくるような雰囲気があり、気仙沼大島が大好きになりました。   東日本大震災の時に手紙を出しましたが返事がなくて、別の番組で気仙沼を訪れる前日に鈴子さんから返事が来ました。   プロデューサーに経緯を話してどうしても会いたいと話をしたら、そのことも含めて取材をしましょうという事になりました。   仮設住宅でお会いすることが出来、二人で抱き合って泣きました。    そういったいろいろなことを思い出すようにして永浦雅代さん(語り)の言葉にして読んでました。  島は一つの大きな家族のような感じがして、人と人とのつながりが濃いところです。  気仙沼はおしゃれでセンスのいい街でもあります。  海は外へ開かれて行く場所なんですね。   

阪神淡路大震災の時に私の友人が被災して、震災の4年後の1999年から私も参加させてもらって、「朗読と音楽の集い」で毎年神戸に通っていました。   2011年に東日本大震災が起きましたので、2012年の春に東北大学災害科学国際研究所が主催して、体験談を新たに朗読用にリライトしたものを毎年読ませていただいています。   自然災害、それがあまりにも大きな出来事なので、個々のお皆さんの思いがそれぞれなので、いつも読ませていただくたびに、この事実の重さに読んでいるだけでも気持ちが押しつぶされそうになることはたびたびあります。    言葉でつながるという事は人でしかできないというか、人を救うのはやはり人なんだなあという事もこの朗読を通じて私が感じたことの一つです。    経験した苦しみ、悲しみなどは、何十年経っても決して消えないことだと思います。   

いろんな機会を見つけて公私を問わず足を運びたいなあと思います。   立場が違うという事で終わりにしないで、でも一緒に生きて行こうというそういう人とのかかわり方、寄り添い方そういったことを考えさせられるドラマだったし、一生懸命生きようとしているモネをはじめに若い人たちの生き様が本当にすがすがしくて、こういった人は絶対いると思わせてもらいました。