岸田ひろ実(母)・岸田奈美(娘) ・「もうあかんわ」を切りぬける 岸田家、母と娘の15年(3)
2021年2月母ひろ実さんが再び倒れて、実家に帰ってきた奈美さんの奮闘と繰り返すピンチの中で岸田家の人がどう向き合い、その危機をどう乗り越えてきたのか、その家族の向き合い方を伺いました。
関西学院大学人間福祉学部社会起業学科を卒業。 ここだったらお父さんみたいなかっこいい経営者になりながら、お母さんのための福祉を学べるかもしれないと思って、入学しました。 入学して1か月したら辞めたくなりました。 立命館大学の車椅子の方と知り合いになり、大学に通いながらユニバーサルデザインを手掛ける株式会社ミライロの起業メンバーとして活動、広報活動を9年間務める。 作家に転身、日常の出来事を関西弁で読者を笑わせる。 今年の春には「もうあかんわ」というタイトルの本を、出版。 櫻井翔さんがパラリンピックのコメンテーターになったり、興味を持ってもらえるかなあと思って電話をしました。 お母さんを初め障害のある人が生きやすいようにという事を考えて感情をこめて伝えたのが響いたと思います。 櫻井さんの研修への姿勢が私が見てきたどんなかたより好奇心をもって一生懸命やられていて感動してしまいました。 その光景をブログにアップしていましたが、櫻井さんがそれを見て、感激してくれました。
2月に母が感染性心内膜炎という病気になってしまいました。 最初はコロナかもしれないと思いましたが、検査してもらったところ陰性でした。 熱が引かなくて、大学病院に行って検査をしたら感染性心内膜炎だと診断されました。 今考えうる一番ひどい病気になってしまって、ばい菌が心臓に巣を作ってしまって、大動脈乖離の手術をした時に埋め込んでいる人工の弁とか血管のところが食い荒らされてしまっている状況でした。 健康には人一倍気を使っている人がどうしてと思いました。 矢張り危ない手術をして、私は実家に戻ってきました。 思ったよりも祖母の物忘れが激しくなっていて、母のことから情緒が不安定になっていて、弟も急激に太っていました。 祖母が時間の感覚が判らなくなってしまっていて、時間を考えずに食事をいろいろ与えてしまっていたらしかった。 祖母は福祉の認定と、弟は別のところを捜していました。
そうしていた時に私の祖父が急に亡くなって、私と弟が急遽お葬式に行きました。 つらい思いをしていた時に或る人がそれを日記に書かないかと言われました。 今後日本中の人々が直面する課題を岸田さんがいまめちゃくちゃになっているから、書くと救われる人とか勉強になる人が出てくるんではないかという事で勧められました。 書き始めたら読者の方がたくさん増えました。 祖母の介護認定、弟のためのプール探しなどいっぺんにいろいろあったことを書き記しました。 今までの経験があるので辛いことがあるとちゃんと向き合わない、つらいことでも時間がたてば風化するといことを知っていたので、見て見ぬ振りをしていきました。 祖母と弟は口げんかも多くなっていたので二人は離れていた方がいいなあと思いそういう形にしました。(弟がグループホームで祖母がデーサービスへの施設へとか)
ひろ実:家族がいい距離感を保っていけたらいいなあと思っています。 娘が言うんですが「もう頑張らなくていい」と、でも私にしたらあんまり迷惑を掛けたくないし、誰かが喜ぶようなことをやりたいし、 でも娘は「あなたが幸せになればみんなが幸せになるから、だから一人で抱え込まないで、しんどい事は逃げたらいい。」と言われました。 そうしたらいいと今は感じています。
奈美:受け取ってくれていい母親だなあと思います。 家族は一番近い他人だとおもっているが、でも他人みたいに簡単に離れられないし、情があるから愛しいと思うけど、情があるから苦しいという厄介な存在だと思います。 でも家族を愛したいという思いがあるので、愛する事はその人を通して自分のことを好きになることだと思うので、考えた時に選択肢は距離を取るという事がありました。 仕事が出来なくなってしまう事にもなりそうだったので、それは自分のことでもありました。 安心して生きている状況を作りたかった。 不幸と幸せはいつもセットで、私は今までの人生で不幸か幸運かと言われれば幸運だと思います。 めちゃくちゃいろんなことを学んで成長してきて、今家族がいて嬉しいなと思います。 これから先どうなるか判りませんが、家族を信頼して何とかやるだろうと思っています。 オリンピックの聖火リレーで病み上がりの母と弟が参加しました。
一人で生きてゆくことを自立だと思っていましたが、たくさんの人に頼りながら生きてゆくことも自立なんだという事が、母親とか弟の姿を見て思いました。 人って思ったよりも人に頼って良いんだと気づきました。 ユーモアって私は自分から距離を取る一つの方法なんです。 俯瞰して見るというか、 一つ引いた目線で見る。 ただユーモアと自虐は書いていて難しかったですが。