2021年11月10日水曜日

村井章子(翻訳家)           ・天職になった経済書の翻訳

村井章子(翻訳家)           ・天職になった経済書の翻訳 

1954年東京都生まれ、大学卒業後商事会社に就職、外国との商取引に必要な手紙や企画書などを翻訳するビジネス翻訳に従事しました。   その後フリーの翻訳家に転じ、経済書を中心に本の翻訳に携わり、35年間でなんと70冊余りの翻訳を手掛けたという事です。   主な訳書にジャン・ティロールの「良き社会のための経済学」、マルク・レビンソンの「コンテナ物語」、アランの「幸福論」などがあります。

ニール・カーネマン 心理学者でもあるが行動経済学の父と呼ばれている方が書いた「NOISE」を訳し終えました。     本書は、専門家たちの意思決定で生じるばらつきのことを「ノイズ」と呼んでいます。  法律家、科学者、医者、エンジニア、その他いろいろのプロフェッショナルが、同じ問題について判断するにもかかわらず結果がバラバラになることがある。  


一日何ページと決めてコツコツやります。   300ページを3か月といった時に最後に最低2週間取っておいてチェックをする時間が必要で、実際には2か月半でやらないといけない。  500ページになるとチェックをする時間が1か月は必要で、その分急いでやらないといけない。   9時から5時まで翻訳の仕事をしています。   急ぎの時には夜中までやったりします。   

小さいころは少年少女文学を好きで読んでいました。  書くことが好きで、作文、読書感想文などがあるが、それらが好きでした。  戸山高校では国語の先生が1年から3年までずーっと一緒で、大変影響を受けました。   上智大学文学部仏文科を卒業、商事会社に就職し輸送機械部に配属されました。    最初面喰いましたが、貿易実務の勉強、商業フランス語の学校に通ったりしてようやく形になりました。   フランス語検定の資格を取りました。   7年間勤めて退社してフリーになりました。   フランス語と英語のビジネス翻訳を引き受けて行きました。   ダイヤモンド社から出している雑誌に掲載する論文があり、その翻訳を何度かさせてもらいました。  評価されて本の翻訳をやってみませんかと声を掛けてもらいました。   コンスタントに仕事が来るようになって今に至っています。 

経済学は論理的なので、誤訳しにくいし、経済学はたくさん資料もあるし、検証しやすいという事もあり好きでした。   文学では作者がすべてになってしまうので、一回間違えると全部間違えてしまいそうなところもあるので。  

「資本主義と自由」ミルトン・フリードマン  1962年に出版されているが、やりましょうという事になりました。  難しかったです。  娘からいいろいろ指摘がありました。  

ファスト&スローダニエル カーネマン   行動経済学の祖と言いますか、経済学者ではないのに行動経済学を興した人です。  心理学者です。 いかに人間は騙されやすいかという事を言っている。  クイズ形式でとても楽しい本です。  錯覚の例を沢山挙げています。  人間の思考は速い思考と遅い思考があるが、通常は速い思考で直感的に判断してしまうので大間違いをしてしまう事もある。  

「道徳感情論」 アダム・スミス   「国富論」でも有名。  山岡洋一さんが「国富論」を頼まれないのに自分で翻訳して、出版社に持ち込んで日本経済新聞社から出すという偉業をされました。  つぎに「道徳感情論」だと言っていたが、急逝されてしまいました。  思わず私がやりますと言ってしまいました。    やってみたら本当にいい本で間口も広く深い本でした。   世間は移ろいやすいものだから、世間の評価に一喜一憂することなく、中立な人の声にいつも耳を澄ましているようにという事が大きな流れとして「道徳感情論」の中にあります。   

直訳という事は、可能なのかなと疑問に思っています。  大事なのは原作者が言いたいことを日本語でどう書くかという事が翻訳者の役割だと思っています。  実は森鴎外が言っていることと私が考えていたことが一緒でした。   昔は経済に関することは経済学者が訳すものがスタンダードでしたが、学術書はそうですが一般向けの経済の本はプロの翻訳者に頼もうという流れが出来ています。   経済学に関する翻訳は女性は少なくて、嫌われている分野でよかったなあと思います。  父も経済で本が一杯家にあり父からいろいろ教えてもらいました。    まず原文を読んで理解することが大事です。   そこで初めて日本語に書くという事が出てくる。