2017年2月5日日曜日

池田昌子(声優)        ・【時代を創った声】(第12回)

池田昌子(声優)        ・【時代を創った声】(第12回)
ローマの休日、等オードリー・ヘプバーンの殆どの作品出の吹き替え、銀河鉄道999のメーテル等多くの作品に出演。
初めてのオードリー・ヘプバーンの作品は「許されざる者」という西部劇でした。
家族だけの話でした。(ヘプバーン自身も初期のころの作品)
ヘプバーンの初々しさには本当に圧倒されました。
どうしてヘプバーンの声を担当したのかは判らなくて覚えていません。
私はすごく引っ込み思案で、母が心配して、担任の先生に相談して、児童合唱団の募集があり、試験を受けて合格して、児童劇もやるようになってそのうち芝居の方に入って行って、気が付いた時には好きでやめられなくなっていました。
劇団自体がラジオドラマ、TVとかかわっていたので、劇団員が出演しました。
自然に大人のお芝居の中に入って行きました。
最初はNHKのラジオドラマでした。
TVで初めてやったのは牛若丸でした。(小学校6年生ぐらい)
弁慶は恩田清二郎さん もう亡くなられましたが。

大人になっても色っぽい役はやっていません、さっぱりした感じの役が多かったです。
声で表現するということがすごく好きだった、声だけだと顔、姿形は関係ないし、安心していろんな人になれるし、魅力的で面白くて、ラジオドラマは大好きでした。
吹き替えの仕事の方にも気持が移っていったのはごく自然でした。
女優だったら吹き替えなど声だけでやる仕事に一生懸命なっていては駄目だと言われて、吹き替えの仕事に好きになっていた時だったので物凄くカチンときて、これから先声だけの仕事をやっていこうと思いました。
性格的にあっていたんだと思います。
アニメは最初はそんなに多くなかったです。
洋画がほとんどでアニメをやったのは「エースを狙え」などで遅かったと思います。
1978年 松本零士さんの作品 銀河鉄道999のメーテル役
メーテル役はある時読んで聞かせてほしいということで、松本先生もいまして、そこでやったのですがそれがオーディションだったのかもしれません。

銀河鉄道999のメーテル役はこんな幸せだったことがないと思うぐらい素敵な作品で素敵な役でしたし、やりがいもありました、今でも大好きな作品です。
鉄郎役(野沢雅子さん)は考えられないぐらいピッタリでした。
メーテル役は生々しさのない、妖精っぽい、何歳なのか判らない、現実的な事はすべてなしで、あくまでも私の想像の中の世界で、鉄郎がいて、車掌がいて、物語が現実の世界とはかけ離れたもので、私は凄くやり良かったし大好きでした。
ナレーション(高木均さん)、野沢雅子さん、肝付兼太さんと私のほとんど4人だけだったので、もし気があわない同士だったら、しんどかったと野沢さんと話しました。
極々自然に一緒になれました、それがすごく不思議でした。
登場人物がすくなかったというのがとても大きかったかもしれないし、3人が力を合わせて一つの問題に立ち向かって行き、解決してまた旅に向かうという話のあり方も3人が自然に一つになる要因だったかなあという気もします。
ムードメーカーは肝付兼太さんだったかもしれません。
私生活でも野沢さんとは鉄郎、メーテルで今も呼び合っています。

気をつけていても風邪をひいたりします。
銀河鉄道999は長かったので、風邪をひいてしまって声がどうにもならず、一度だけ他の日に一人でやらせていただいたことがあります。
私たちが始めた頃の雰囲気と今はかなり違うように感じます。
みんなが初めてやるというような状況だったので、緊張感とは今とはかなり違うと思うし、手が震えるような気持ちは決して悪いものでは無かったと思います。
それがなかったら私は続けていなかったかも知れません。
若い方は器用なのですぐ慣れてしまうが、慣れっこになるというのもすごく怖いと私は思います。
細切れにとると、物語の山とか、流れが判りにくいので、流れが判ることで自分の役がこの話の中でどういう役割をするのか、どこが山でその時自分が何をしているのか、そういうことを考えるだけでも台詞は違ってくるので、そうすると出来上がったものも厚みが違うと思う。
私たちは面白かったし、楽しかったが、今は忙しく細切れ的に仕事が進んで行ってしまったりしてかわいそうだと思ったりします。

10年以上北鎌倉のお寺の本堂で語りの会をやってきました。
初心忘るべからずという思いで江戸の話を着物を着て正座してやってきました。
正座しなければできない声があるんです、椅子では声の出方が違います。
膝を痛めたのはショックでした。
甘えて椅子に座ってというのが慣れっこになって、当たり前のように椅子に座って楽に語るようになったらそれはやらない方がいいと思って、申し訳なかったのですが、自分の区切りかなあという気がしてやめました。