2016年9月7日水曜日

長井鞠子(会議通訳者)     ・オリンピックが原点 通訳人生

長井鞠子(会議通訳者)     ・オリンピックが原点 通訳人生
宮城県生まれ 73歳 東京オリンピックで通訳を経験し、その仕事を一生の仕事に選びました。
その後会議通訳者の草分け的存在としてサミットや国際会議で50年活躍を続けています。
8月に開催されたリオデジャネイロオリンピックでも通訳を務めた、長井さんに伺いました。

主に日本の2020年にあります東京大会の組織委員会から通訳として来てほしいと言う事で、森会長、武藤事務総長が出席される会議等の通訳を担当するという事で行きました。
追加種目に関してのIOC委員会でプレゼンテーションがあり、そこで会議の同時通訳をしました。
ほかにいろんな場面で同時通訳などをしました。
同時通訳、逐次通訳が有りますが、集中力が無いといけません。
発言内容をイヤホーンで聞きながら、理解しながら、訳しながら、発語する事を同時にやっています。
逐次通訳は一区切り話し終えたところで訳して、通訳する。
楽しく続けてこられたのは、好きな仕事だからと思います、通訳は私の天職だと思います。
母親が通訳をした場面が有ったので、人の世話役が好きな人間だったことと、通じてほしいと言う事をいいがちな性格だった。
私の関心項目は移り変わるんで、通訳も内容が毎日違うので面白いと思った。
短期執着型、性格に有っていたと思う。
メモ、1997年長野オリンピック冬季大会のオリンピック関連のページが有り、手書きで書かれている。
仕事を始めた時から単語帳ずーっと作っている。

書く作業を通すことで脳にインプットされているような気がする。
キーボードでは私はインプットされない様な気がする。
「ガッツポーズ」 英語で言っていいかどうか分からないので調べて、
「握りこぶしを空中にあげるように、勝利の中に彼はこぶしを突き上げた」という風にしたい。
思いついた時に何でも書く。
こんな言葉がでるのではないかとか、段々コツが判るようになってきた。
当時大学生でオリンピックが好きで、東京でオリンピックが有ると言う事で英語の通訳要員をどうするかという事で、大学生なら英語ができるだろうと言う事で、大学ごとに競技を割り振った。
私の大学が振り分けられたのは水泳と馬術でした。
女子水泳選手のコース紹介、結果などを発表する事を行いました。
三鷹から代々木までうきうきして通いました。
バイト料がとても高かったのを覚えています。
通訳になったら楽かもしれないと思って、この道に入りました。

30代ぐらいからサミットに抜擢されて歴代首相を担当する。
子育ても、仕事がしたいから子供はどうするかという風に考えます。(母も同様でした)
基本のところだけ抑えれば、多分子供は育つなと思って自分中心にやってきました。
夫は文句を言わなかったことが最大のサポートだったと思います。
順調に来た方ですが、通訳の仕事で出入り禁止が一回ありました。
言い訳もありますが、絶対私の準備不足だったことはありました。
貰った原稿が40ページあって、読み原稿ではないと思って、ザーッと斜め読みをした。
その人は時間にお構いなく40分ぐらいしゃべって、原稿も部分読み ちゃんと準備していなければ追いついて行かなくて、しどろもどろだった。(出入り禁止になりショックだった)
その時誓ったのは手抜きをしない、どんな仕事でも手抜きをしないで準備をするという事を学んだ。

ベタヤク→全部訳すこと。(実力がついてきたらやらないが)
サイトラ(サイト トランスレーション(英文を前からどんどん訳してゆく)の略で英文原稿に意味のかたまり毎にスラッシュなどを入れておき前から訳出していくこと また、通訳者や通訳を目指す人がするトレーニング方法)ざーっと原稿を読んでゆくと眼から入ってきてもなかなかっきちっと訳せない所は全部ベタヤクをすることを今でもやっています。
準備はするが、ベストを尽くすことしかない。
日本語を学ぶため、月に1回京都に和歌を習いに行く。
「ふれあい」という言葉は難しい。
コミュニケーション コミュニケーションがとれるセンターとかと言うしかない。
冷泉家 和歌の総本家の門人のはしくれとして、月に一回和歌のお稽古にいっている。
訳せない言葉は所謂大和言葉、自分としては圧倒的な和歌の語彙不足です。
言葉は符号ではなくてメッセージなので、言葉の引き出しを沢山持たないといけない。
そのために和歌の勉強したり、本を読んだりしています。

人工知能で自動翻訳がすすんでいるのは、マニュアル 物の説明。
人工知能で自動翻訳がニュアンス、声の調子からその人の気持ちが判るのは難しいと思う。
言葉にたいする感性を失ったら駄目だと思います。
日本語も英語も読む事が大事だと思います。
生の言葉が持つ力って大きいと思います。
面と向かってちゃんと会話をする(face to face)

通訳をしたい、私が介在することによって人と人の意思疎通が出来るならば、その場に立ちたい、役に立ちたいと思っている。
自分がやりたいことを中心に置く。
オリンピック招致の時は前向きに表現しなくてはいけないという事に釘刺された。
人間が身体能力の限りを尽くして、とにかく自己ベストを狙っている、自己ベストを尽くす姿が美しくて感動することだと思う。
人間賛歌だと思う、そう感じたら世の中もう少し良くなるのではないかと思う。