2016年9月12日月曜日

白石加代子(女優)      ・変幻自在に演じ、語る(1)

白石加代子(女優)  ・変幻自在に演じ、語る(1)
東京出身、昭和42年劇団早稲田小劇場(現在のスコット)に入団、演出家の鈴木忠志さんとのコンビで劇団の看板女優として数々の伝説的舞台を踏み、日本だけではなく、世界で活躍されました。
その後、フリーとなって蜷川幸雄さん、野田秀樹さん、長塚圭史さんといった現代を代表する演出家の作品に出演されて益々存在感を見せています。
一人舞台00物語は22年かけて完結しましたが、ファンの期待にこたえて、新たにアンコール上演にも取り組んでいます。

一人舞台100物語はアンコール上演が8月の終りから始まっています。
怖い話と笑いの組み合わせ。
南條範夫、「燈台鬼」、恐ろしい話ですが、ロマンティックな、遣唐使として父が行くが、帰ってこないので息子が父を追い求める、色々恐ろしいことが起こる。
筒井康隆さんの「五郎八航空」は抱腹絶倒な話です。
100物語は古典もあれば若い方の作品もあれば、ありとあらゆる作品が盛り込まれている。
1992年に100物語を始める。
舞台が入ってきたりして、時間が取れなくて、22年もかかって大変でした。
100物語は99話で終わるのが昔からのならわしで、100までやると本物のもののけがでてくるという言い伝えが有り、99話を目指し、2年前に終了。
終わってみて、懐かしくて恋しくて、周りから是非もう一度という声がかかり、2つの作品を選び出しました。
昔やったDVDを見たらテンポが速かったが、感動して、100物語でこの2つを合わせると言うのは、この年齢になってとても大変だけれども、わたし自身が乗ってしまいました。

夏目漱石の夢十夜より、第一話のさわりの朗読。
「こんな夢を見た。
腕組みをして枕元に座っていると、仰向けに寝た女が静かな声で、もう死にます、という。
女は長い髪を枕に敷いて輪郭の柔らかなうりざね顔をその中に横たえている。
真っ白なほほの底に温かい血の色が程良く射して、唇の色はむろん赤い。
到底死にそうには見えない、しかし女は静かな声で、もう死にます、とはっきり言った。
・・・・・。
しばらくしたら女が又こういった。
死んだら埋めてください。・・・
墓のそばに待っていてください、又会いに来ますから。・・・
あなた待っていられますか、100年待っていてくださいと思いきった声で言った。
100年私の墓のそばに座って待っていて下さい。
きっと会いに来ますから。
・・・女の目がぱちりと閉じた。
長い睫毛の間から涙が頬に垂れた。
もう死んでいた。」

NHK大河ドラマ、2005年の義経ではお徳さん、花燃ゆ(ほんの少し出演)
ナレーションも担当。
義経は懐かしい作品です。

昭和42年早稲田小劇場に入団。
区役所に7年勤めて、早稲田小劇場の稽古を見て、鈴木さんが演出をしているのを見て、こういう演出のもとに舞台をやりたいと思って、直ぐ区役所を辞めて行きました。
変わった女優だなと、見てくださって割と早く役につきました。
当時は大劇団しか、劇団ではないと言う様な時代でしたので、小劇場の芝居なんて箸にも棒にもかからない様な時代でしたが、鈴木さんも力が有る方でどんどんお客様が並んでいい時期でした。
ギリシャ悲劇を選ぶようになって、外国に持って行ってもストーリーを知っていたので、フランス、イタリア、ベルギー、ドイツとかで評判が高くて、鈴木さんもとっても楽しかったのではないかと思います。
その後アメリカでも随分鈴木さんの名前は有名になりました。
外国公演で良かったのは、いつも違う劇場で公演させていただいて、自分の身体で空間を計ると言う事が物凄く身につきました。
この広さでこれだけの声をだせば、収まるとか、空間の中の距離を身体で計ると言う事をいつも身につけないと、劇場のいろいろな大きさに対応ができない。

海外公演ではギリシャ悲劇はストーリーは知っているので、肉体でどんなふうにストーリーを見せてゆくか、ビジュアルでお客さんをどう引き付けるか、という事を常に考えているので、外国では日本語でやりました。
呼吸が上がってしまって、肩が上下するようになったらセリフは思うようには出てこないのでまずはトレーニングをして、しゃべりながら歩くとか、歌を歌いながら何かをするとか、やりました。
鈴木さんは厳しいです、演出家は存在自体を否定する様なことを言います。
怖い役が多いですし、自分でも嫌いではないです。
マクベス婦人、メディア、クリテムネストラ、怖い女、この3つの役は舞台女優なら結構みんなやりたいのでは。
メディアはやっていないです。
日常は全然のう天気おばさんです。
若いころは袖で震えている人でしたが、100物語でお客様と舞台と交流するような場面を作ってもらったら、随分人格が変わる様になりました。