頭木弘樹(文学紹介者) ・〔絶望名言〕 三代目 桂米朝
米朝師匠は上方楽議に復興に力を尽くし、重要無形文化財保持者(人間国宝)で平成21年には文化勲章を受章しました。 今年は生誕100年没後10年の年でもあります。
「芸人になった以上末路哀れは覚悟の前やで。」 桂米朝
上方落語の中興の祖と言われ、戦後滅びかけていた上方落語の継承、復活、復興に力を尽くしました。 多くの落語を音声、映像、書籍の形で全集として残し、滅びかけていた話も沢山復活させ桂枝雀や桂ざこばなど多くの弟子も育てました。 その功績から1996年上方落語界では初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。 2009年には演芸界初の文化勲章受章者となりました。 今年は生誕100年没後10年の年に当たります。 11月6日が誕生日です。
米朝さんを尊敬しています。 一回だけお会いしたことがあります。 中学生の時から聞いています。 一つの話が1時間以上ありました。 病気になってから病院で多く聞くようになりました。 全44巻揃えました。 今でも毎日聞いています。
出来るだけ盛り上がっている業界で将来性のある仕事をしたいと思うのが当然ですが、衰退している落語界に入ったというのは中々考えられない。 上方落語を復興させたという事も大変な事です。 四天王(六代目 笑福亭松鶴 三代目 桂米朝 三代目 桂春團治 五代目 桂文枝)と言われ、米朝さんのほかに若い人が入ってきました。
「君らどう思っているかしれんけどなあ。 今に想像も出来ん時代が来るで。 世の中が落ち着いてきたらこれほど洗練された笑いの芸はないんやさかいな。 廃れてしまうという事は絶対ない。」 桂米團治
米朝さんの息子さんが5代目桂米團治を継いでいます。
「立ちきれせんこう 一席演じおえず だいぶみなにも慣例有りたりらしく、認識至りたるものの如くなり。 本日満月明らかなり。」 桂米朝
米朝さんは19歳の時に徴兵されるが、入隊してすぐに急性腎臓炎になります。 姫路の陸軍病院に入院することになりますが、この言葉はその時の日記からです。 「断ち切れせんこう」と言うのは落語の演目です。 他の入院患者の前で落語を一席語った。 (まだ学生だった。) 「断ち切れせんこう」は玄人でもやるのが難しい。
「かねてより私は55歳で死ぬはずやと公言してまいりました。 私の父親や師匠であった4代目桂米團治そして東京での恩師の正岡容までが皆55歳で他界したので、私もその歳にはとの?思いを拭い去ることが出来ませんでした。」 桂米朝
55歳までにいろんな仕事をしておかなければならないという事で、47歳の時に「桂米朝上方落語大全集」」というレコードの大全集を出す。 54歳の時に「米朝落語全集」を刊行。 89歳まで長生きする。
*桂米朝 出囃子 「三下り羯鼓」
「古い落語を掘り起こし復活させるのが、私の役目だと思っていた。」 桂米朝
復活させたもののなかには「地獄八景亡者戯」、「算段の平兵衛」 「三年酒」とか沢山あります。 どれも本当に面白い。 ただ復元するだけではなくて面白くしなければいけない。
「上方落語復興の足取りも年々たしかなものになり、 私は中堅として寄席、ラジオ、テレビに頻繁に顔を出すようになった。 この機会にかねての宿題を実行に移すことにした。 滅んだネタの復活である。」 桂米朝
34歳の時に京都観世会館で珍しい上方落語を聞く会を立ち上げる。 無料出演する。
「実に名作である。 よう出来てる。 と言う作品として優れた落語でも、下手な演者の手にかかると三文の値打ちのないものになる場合もあるし、実につまらなくて、こんなもの落語と言えるかと言うようなものが、素晴らしい演者の手にかかると面白いものになるという事がある。」 桂米朝
「私自身の体験から落語の面白さと言うものを少し考えてみたいと思います。 まず少年時代初めて活字で読んだ時は、童話とか少年読み物とは違った、笑いの連発、ギャグの豊富さで読んでいて単純に笑えました。 次に生の落語を聞いた時には仕草や表情の面白さに大変興味を持ったものです。 そのうちにおかしいものとは別にうまいと感じる芸の面白さが段々と判るようになってきます。」 桂米朝
録音や本では落語の稽古にはならない。 語り芸の場合は毎回違うわけですから。 初めて落語を聞く人には江戸落語ならば古今亭志ん朝、上方落語ならば桂米朝を薦めたいです。 二人とも初心者にもわかり易くて、なおかつ凄く深い。
「こんなさげで、ここで大抵のお客はわっと笑って話はおしまいになるが、もしそれからどうなりましたと聞かれたらら落語家は困ってしまいます。 それからどうにもなりませんからねえ。」 桂米朝
物語は起承転結があるが、落語は落ちを言えばどこでも終えられる、起草転結にとらわれない。 自由に物語を展開できる。
「空襲でまだ5歳ぐらいの従兄弟が火だるまになって死にましてな。 戦争云うもんがどんなに辛い切ないものかという事をやはり体験したものが語らなあかんでしょうなあ。」 桂米朝
「少々何か矛盾があっても世の中が不合理が有っても、ずるいやつが銭儲けをしていてもかまへん。 戦争はなやって貰ったら困ると思います。 これはほんまになんでもない庶民があっさり殺させるんですからな。」 桂米朝(最晩年)