深町貴子(園芸家) ・〔心に花を咲かせて〕 一粒の種が人生を変える
小さいころは病弱で長生きできないと言われていたそうです。 それが今では大活躍、最近はひまわりを育てて油を取ってロケットを飛ばす計画も進んでいると聞きます。 どんなことから花や緑に興味を持って、今のように元気に活躍が出来るようになったんでしょうか。
園芸って楽しくないと意味がないですね。 自分が育てた物は美味しいです。 生まれた時に骨格が異常だという事もあり、内蔵、循環器系などは普通の人とは違っていて、普通のお子さんと同じようには学校にいけなくて、家にいるか、病院との往復している感じでした。 寝たきりの生活でやることがないんです。 姉が二人いて、 外の世界の話をしてくれました。 自分もしゃべりたいが喋るものがない。 天井の雨漏りのシミを数えたり、寝たきりで折り紙を折ったり、絵を描いたりするのが好きでした。 たまたま母が窓を開けた時にカラカラという音がして、枯れ葉が踊っている音に聞こえました。 アッと思った時に秋だという事に気付きました。 それがきっかけで窓の外が気になるようになりました。
窓から見えるのは空しかないんですが、雲が流れているのが毎日違う、青かったりグレーだったり、いろんなな雲があって想像すればするほど外に出てみたいという気持ちになりました。それまでは生きることに興味がなかったので、外に出たいという気持ちもなかった。 将来に対して何も期待していない自分がありました。 庭に出てみると、蟻がどこに行くんだろうとか、 引っ越しをしたりするシーンを観たりしました。 「紅葉が赤くなっている。」と言ったら「もう秋ね。」と言われて、自分から発信できるものを見つけました。 植物、自然のことを通せば、話が出来るという事を知りました。 花の名前を知らなくて、植物図鑑を買って貰いました。 どんどんと植物のことを知りたいと思うようになりました。
段々と学校にも行けるようになりました。 植物から生きる意味を教えてもらって、それを恩返ししたいと思うようになって、植物のことを知ったらみんながもっと豊かに暮らせられるようになるかもしれないと思って、園芸を通して人とつながりたいと強く思いました。 植物は芽が出て来て、育って最後は枯れてしまいますが、必ず花を咲かせて種を作って、ポトンと落ちて又芽が出てくるんです。 命が終わらずに繋がって行って、また強くなって生まれ変わって出て来る。 一緒に付き添いながら毎日暮らしていると、私も同じように強く生きたいと思うようになるし、いろいろ困難があっても植物は絶対生きて子孫を残したいという強い意志があるんです。 何時亡くなるか判らないが、ぎりぎりまでやりたいことをやっていきたいし、それを人が見たら誰かがそれを受け継いでもらえるからと思いました。
園芸の仕事をしたいと思ったが、ドクターストップがかかって諦めていました。 或るきっかけで照明の会社に行く事になりました。 しかし体力的に持たなくて、倒れてしまい、会社を辞めました。 園芸ももっと簡単に出来る園芸であってほしいと思って、野菜に関する本を書いたりしました。 そうしているうちにいつの間にか、野菜の先生になってしまいました。 いつまで生きられるかわからないので、その時までぶれることがないんです。 母はこの子は結婚が出来ないかもしれない、こんなに長く生きるとは思っていなかったと言われました。 母はこの子は私が看取ろうと思っていたそうです。 結果は私が看取ることになりましたが。
記憶が瞬時途切れることがありましたが、凄い恐怖でした。 脳がパンパンになりすぎて、直近の記憶が出来なくなるんだそうです。 大学の先生、お店、会社、バイト、テレビにも出ていて、ぎゅうぎゅうでした。 「貴方が死んでしまっても誰も困りません、仕事に穴が空いても誰か替わりの人がやります。」と言われました。 「だから頑張る必要は全くありませんが、貴方がいなくなって困るのは家族ですから、仕事を減らしなさい。」と言われました。 一度全部やめました。 (8年前ぐらい) そうしたらよくなっていきました。 やり過ぎてはいけないという事がわかりました。
50歳ごろから狭心症などが発症しました。 夫と息子が凄く支えてくれました。 夫から「僕の夢は君の夢を叶える事。」といわれました。 インターネットで病気のことを調べて、対応してくれるところを捜して、四国の病院に行きました。 手術を受けて心臓は取り敢えずちゃんと動いています。 無理をせずに頑張れると思いました。 環境から発信するいろんな声があります。(虫の声、植物の声など) その声をみんなが聞こえるようになって欲しい。 そのためには自然体験を体感できるようなものを作って行きたいなと思います。 子供たちを集めてワークショップをしたり、何故植物が必要なのか、植物は何故花が咲くのか、花がないと野菜は出来ないとか、話をしながら、都市の緑化、それぞれの生き物が平等に暮らしているので、それを知ったうえで私たちの環境をどうやって考えるのか、一緒に考えたい。
お店の中に入った瞬間に、どこが水が無いと言っているのか、どこが調子が悪いのかという事がわかるんです。 毎日行っていて、昨日と違う空気なんです。 子供の頃は生きたいという思いはなかったが、植物と出会いようになってから絶対に生きたい、生きて次に何かを伝えたい、繋いでいきたいと思います。 今は街中にひまわりを植えて、種を取って油を搾りたい。 日本はエネルギー自給率がとても低いので上げたい、緑を通して人と人とを繋げたい。 そして街を繋げたい、次に国を繋げたい、と広げていきたい。 それには種を蒔いて、一粒の種から3000の種が出来ます。 花が咲くと虫が一杯やって来ます。 そしていろいろな植物に受粉をします。 しかし暑さで蜜蜂が減っています。 森林の破壊もあります。 蜜蜂などがいなくなると我々の食べ物も出来なくなる。 人工授粉もあるが、農家の人たちを助けるために、虫を呼ぶためにひまわりを育てています。
種からは油が取れます。 地域ごとに油を搾れば油田が出来ます。(夢) 環境に興味を持って貰う。油は潤滑油、灯油になり、絞ったかすは肥料になり、茎からは繊維が取れて和紙になります。 JAXAの中にロケット推進部、ロケットを飛ばすための燃料を研究している方がいて、菜種とかの種から油を搾って、それからロケットを飛ばせないかと考えている人がいて、その方と連絡が取れました。 それでひまわりの種を利用した研究をするために提供することで、共同研究の契約を結びました。 (小さな観測用ロケット) 子供たちを中心にやっている理由は、この子たちの誰かが必ず引き継いでくれると思うから、そこに全力投球しています。 次の未来がよりよい未来のいなる様にみんなで考えて欲しい。 緑が人を、街を国を繋いでいって欲しい。