2023年11月19日日曜日

笠原将弘(日本料理店・店主)      ・〔美味しい仕事人〕 和食文化をつなぐ

笠原将弘(日本料理店・店主)      ・〔美味しい仕事人〕 和食文化をつなぐ

2013年の12月ユネスコ無形文化遺産に和食が登録されて間もなく10年になります。  この文化遺産と言う意味には、和食が日本の伝統的な食文化として評価されたことと、その一方で失わされつつある日本の伝統的な和食文化を、保護することがあげられます。   笠原将弘さんは和食が世界文化遺産に登録された翌年から、一般社団法人「和食給食応援団」の中心メンバーとして、学校給食を通じて子供たちに和食文化を伝える活動に取り組んでいます。 本格的に挽いた出汁の香りと味に子供たちは「美味しい」と素直に感激して、その感想を家庭に持ち帰ると言います。 「和食給食応援団」の活動の様子と、和食を日々の食卓でどの様に考えて行けばよいいのか、笠原さんに伺います。

和食が日本の伝統的な食文化として評価されみんな喜びました。 一方で失われつつある日本の伝統的な和食文化を、保護しなければいけない。  この10年で海外の方が日本料理に興味を持ったなと思います。 フランス、イタリア、スペインなどのシェフが凄く日本の食材を使うようにもなりました。 日本の中では大して変わっていないのではないかと思います。 ワサビ、ショウガ、ニンニクなどもみんなチューブで売っています。 海外では若い子が自分の国の料理のことは良く知っています。 日本の若い子に糠漬けをどうやってやるかと聞いても、多分わからないですね。  

懐石料理など日本料理と言うとどうしても高級なイメージがします。 手間がかかるというイメージもあります。  日本料理屋に行くとどこもお出汁にこだわっています。  家庭では顆粒出汁を使うのはいいと思います。  昆布とかで作ったお出汁は美味しいという事は知っておいていただきたいと思います。 「うま味」は日本人が発見した味覚なので。 日本人が毎日食べていたのが、和食なんじゃないかと思います。 まず白いご飯、味噌汁、季節にとれる野菜、魚など。  日本料理はベースの味が薄いので、海外のものを取り入れやすい。 日本人は器用んで、なんでも日本風にアレンジしてしまう。 日本のカレーはインドにはないと思います。 日本は発酵食品を上手く使っています。 味噌、醤油、お酢もそうですし、納豆、お漬物などもそうです。 

出汁の代表的なものは、昆布、鰹節、煮干し、干し椎茸、貝類など。 精進料理では大豆、かんぴょう、野菜の皮を干して、出汁をとったりします。 出汁は組み合わせると1+1が7にも8にもなります。 (昆布のグルタミン酸と、鰹節のイノシン酸) 日本の出汁は世界最速でとれます。 家でやる時には昆布、鰹節も全部水から入れて煮だして、こす時も絞ってそれで十分だと思います。  日本は海、山のものを両方恵まれてとれて、四季があって、旬の食材がとれて世界に誇りに思っていいと思います。 日本料理はヘルシ-でもあります。 「うま味」成分は、「そろそろお腹が一杯のなってっきたぞ」、と脳に教えてくれるらしいんです。 だから食べ過ぎないらしい。 「腹八分目」と言う言葉は海外にはないと思います。  海外の料理は油脂分と糖分で、食べた瞬間うまいと感じて、つい食べ過ぎてしまう。

箸で食べるという事も、良いと思います。 考えながら食べるし、口内調味と言って口の中で味を完成させるという食べ方。  おかずを食べたら無意識にそれに合うような量のご飯を食べ、口の中で味が完成する。  お味噌汁を飲んで、口をリセットする。 海外の料理は前菜から始まって、順に来て食べる。  

最初学校給食を作りに行く仕事をしませんかと、言われて給食を作って一緒に食べたりしていました。 献立表を見ると、自分たちのころと比べて圧倒的におしゃれな給食になっているんです。 和食が少ないなあと思いました。 子どもの好きな献立になってしまっている。(ハンバーグ、カレー、パスタとか) そこから「和食給食応援団」が始まりました。 2013年の12月ユネスコ無形文化遺産に和食が登録されて、その翌年から始まりました。  朝、圧倒的にパンが多いのにはショックでした。 昼も給食でパンとか、自分の国の料理をこんなに食べないのは日本人ぐらいではないかと思いました。  海外では自分の国の料理を多く食べます。  「和食給食応援団」も段々形になって行きました。 

給食はカロリー、塩分も決まっていて、予算もあるし、設備上の問題、器がないとか、結構苦労はします。  作って子供たちと一緒に食べます。  旨いとお替りに走ります。 イマイチだと箸の進みが遅いです。 本格的な出汁の授業では取り合いになったりします。 「うま味」は子供たちにも判ります。 お母さんたちがそれをきっかけに作るようになったら、嬉しいと思います。  和食を作り、食べることが環境に優しいです。(SDGsSustainable Development Goals) 食材を余すところなく使う、皮、骨なども煮だせばいい出汁がとれる。 保存食もいっぱいある。(塩漬け、燻製、発酵など) 郷土料理は和食料理の一つの根幹をなすものだと思います。  子どもたちに和食の魅力を知ってもらって和食の後継者として、和食の料理人が増えてくれればと思っています。