崔江以子(川崎市ふれあい館館長) ・ヘイトスピーチと闘って
ヘイトスピーチはある特定の人たちを地域社会から排除するために、言葉の暴力で心を傷つける行為です。 2015年11月在日コリアンに対してヘイトスピーチをする団体が、川崎市ふれあい館がある街にやってきて、街頭活動を始めました。 自らも在日三世である崔さんは、街の人々と一緒にヘイトスピーチを辞めるよう行政に働きかけ、国の法律「ヘイトスピーチ解消法」の成立に大きく関りました。 去年2020年7月には崔さんが暮らす川崎市で、ヘイトスピーチに対して罰則が設けられた全国で初めての条例が執行されました。
11月8日(日)デモの参加者は20名に満たない参加者でした。 ゴキブリやウジ虫に私たち在日コリアンを例えて、退治しようとか叩き出そうというような言葉を出しながら私たちの街に来ました。 多くの市民などが道路に立って「差別を辞めて共に生きよう」というメッセージを発信しましたが、抗議活動が警察によって排除されてしまいます。 警察はデモの許可が許されているスムースな進行のために配置されていました。
表現の自由は大切ですが、何を言ってもいいのかというと違うと思う。 ルールが無ければルールを作ればいいのではないかと思いました。 ヘイトスピーチは議論ではなくて、一方的な偏見侵害と人権被害ですから、行政機関に具体的に実効性のある策を講じて、市民と共に生きる生活を守ってほしいと願い行動をしました。
2016年3月16日に横浜地方法務局川崎支局に崔さんは人権審判被害申告書を出して直接訴える行動を起こしました。 チマチョゴリを着ていきました。 社会に知ってほしかった、仲間が欲しかった。
インターネット上にはたくさんのヘイト書き込みの被害にあいました。 初めて私個人に向かって「死ね」というSNS上でのメッセージを見たときには、本当に驚いて恐怖で眠れませんでした。 息子にもターゲットがありました。 端末を操作している人を見ると、私に対してしているのではないかと思って、心の休まる時間が無くなってしまいました。
2016年3月22日に参議院法務委員会で参考人として参加、国会でもヘイトスピーチをめぐる法律を作ろうという動きが出てくる。
2016年5月に「ヘイトスピーチ解消法」が成立する。 禁止規定や罰則がない理念を詠っている法律で、私にとっては宝物のような法律です。 3月31には国会の参議院法務委員会の人たちが街に来て、実際に何が起きたのか、どんな被害があったのか、被害の話を聞いて、「ヘイトスピーチ解消法」の案が提案されて成立していきました。
2016年6月に予告されたヘイトデモに対して市長が公園の使用不許可の判断をしました。 司法もふれあい館から半径500m以内でのヘイトデモの禁止の仮処分の司法判断を示しました。 警察も抗議をする市民を排除することがありませんでした。
川崎市が実効性のある条例作りに向けて、川崎市と市議会が実効性をどのように確保するのか、市民の応援を受けながら、丁寧に組み立てたのが、2019年12月に成立し2020年7月に完全施工した川崎市差別のない人権尊重の街作り条例です。
デモの回数が減り、ストレートなヘイトスピーチが言いづらく成ったりしたが、インターネット上での表現活動、駅前での街頭宣伝活動、選挙活動など、行為を変えながら人権侵害が続きました。
ルールができたからといっても差別がすぐにゼロになるかというと、なかなか難しいがルールがあることによって一定な抑止効果は生じていると思います。
ヘイトデモの主催者にやめて欲しいという風に何度かアプローチしたり、手紙を出したりしましたが、なかなか聞いてもらえませんでした。
土台が対等ではないから、対等にするためには政府の力、法律の力が大事になってくる。
施設に通う在日コリアン一世、二世の方が、今回のヘイトスピーチをなくすための条例ができたことについて、思いをつづった冊子が発行されました。 やっと川崎市民になれたようだような気持ちです、という喜びをつづったわけです。
自分が差別をしていないだけでは、今社会にある差別はなくなりません。 差別をなくすためには関心を持つこと、発信をすること、考えることが差別のない社会を作ると思っています。 是非前に前に諦めずに、共に生きる道を歩み続けていきたいと思います。