2018年1月22日月曜日

茂山逸平(能楽師狂言方)        ・【にっぽんの音】能楽師狂言方 大藏基誠

茂山逸平(能楽師狂言方)        ・【にっぽんの音】
案内役 能楽師狂言方 大藏基誠
私は京都の茂山千五郎家の14代当主の千五郎のいとこになります。
父が前千五郎の弟です。(二世茂山七五三)

大蔵流には5家があるがそのうちの一つ。(大蔵家・山本家・茂山千五郎家・茂山忠三郎家・善竹家)
17人います。
正月は1日の観世会館の謡初めと平安神宮の奉納があります。
2日は狂言会があったりします。
3日は八坂神社の奉納、滋賀県の多賀大社での奉納があったりします。
大槻能楽堂が新春能が必ずあります。
4日に家のけいこ場で舞い初め式をしてひと段落します。
観世会の催しなので、観世会会長の片山九郎衛門さんのまえ囃子「高砂」があり、もう一番まえ囃子があって、獅子舞、狂言方から一つ小舞いを出す、と云うことになります。

大藏基誠:東京では1日は謡初目があって、2日は東京薬師寺別院で狂言の初笑いが有って、3日は舞い初め式で、奉納はないです。

狂言「唐相撲」:中国のお相撲さんと日本のお相撲さんが舞台の上で10番ぐらい取る。
日本のお相撲さんは一人で戦う。(自由な動きがある)
10年に一回出るかどうかぐらい。(一昨年やりました)
柱にものぼったりしますが、それが出来るのは従兄弟の茂さんだけです。
兄の正邦がバク天などもやりました。
NHK連続TV小説のドラマ「ごちそうさん」にも出ました。
ドラマに初めて出たのは小学校5年生の時の朝ドラに出ました。
京都弁が喋れる子供が欲しいと云うことで出ることになりました。
お爺さんが能の振り付けなどで出ていたので抵抗感はあまりなかったです。
出ることに対してどうかというような方もいます。
発信力が公演だけだと低いのでメディアの力を借りないと、と思っています。
私は茂山家にとって次男の次男だったので、活動がしやすかった。
ドラマにでるとそれぞれプロフェショナルがいるので、次の環境の興行形態がこういったこともあるのではないかと思います。
いたずら心のエッセンスを入れると父は怒りますが、表現するのに役立っていると思います。
狂言方は器用でないとなかなかできない。
兄弟で仲良くやっています。(地方で飲みに行ったりします)

狂言のお勧めポイント、登場人物と観客がいい距離感だと思います。
自分ではないと思える距離感で、気楽に笑える。
たいがいの登場人物にそんなに罪がない、おおらか。
誰も死なないので、本当に平和だと思います。
終わり方がもやっとしているのでその後どうなるのかなと、想像するのが面白い。
「おち」はない。
その場の大爆笑よりも、家に帰って布団に入って思い出してて笑う、これが狂言なんじゃないかなと、思います。
お客さんが笑うと演座も盛り上がりますね。
舞台上で凄くふざけたことを大真面目にやっていて、これが面白いんじゃないかと思います。
観賞すると云う目的でくるお客さんがいるが、楽しむと云う方向だと思います。
リラックスして楽しんでみていただければいいと思います。

自分の好きな演目、「口真似」。
(*あらすじ
主人は酒をもらったので、だれか酒の相手になる人を探してこいと太郎冠者に命ずる。太郎冠者は顔見知りの人を訪ね、主人と交際がないというのを無理に連れてくる。主人が客を見ると有名な酒乱の人なので、無理に連れてきた手前穏やかに帰そうと考え、太郎冠者に自分のいうとおり行動するよう命ずる。冠者は、主人の物まねをすればよいと勘違いし一挙一動主人の真似をするので、怒った主人が冠者を打つと冠者は客を打ち倒す。)

あれこそ狂言だと思っています。
太郎冠者がご主人様の云う通りに言ってしまう。
わざとやっているのか、天然なのか、気軽で面白い。
三番叟」を舞う気軽さはだれにも負けない。
能楽の囃子方以外の楽器で舞った回数の方が多いぐらいです。
津軽三味線とやったこともありますし、一番変わったのではロック三番叟、エレキギターとドラムを三番叟風にアレンジした曲を京都市役所の前でやりました。
五穀豊穣、誰にでもわかる精神性と跳んだり跳ねたりする動きはやっていて楽しいし、見ても楽しいと思います。(歳を取って出来ないので若いうちにやっておきたい)
父は高校大学が剣道部なので厳しいです。
39歳になるので40歳で一区切りつけたい。
40歳からは仕事を選ぼうと思います。(そのための地盤を作っていきたい)
次の世代を前に出していかないといけないと思っています。
次の代の狂言師として子供が食えるようにしたいと思っています。

3日に「三番叟」、7日に「那須語(なすのかたり)」、5月に「釣狐」、6月に「花子(はなご)」をします。
凄く忙しいです。
「釣狐」は特殊な演目で他の舞台には還ってこない。
体を鍛えないといけないと思っています。(アスリート並みのトレーニングが必要)
8年前に1回やっていて身体が劣化していて、更に劣化しているので大変です。
3月から4月にかけては海老蔵さんと地方公演を一緒に回ります。