白阪琢磨(国立病院機構大阪医療センター) ・エイズ治療最前線の30年
(HIV/AIDS先端医療開発センター長)
12月1日はWHO世界保健機関が定めた世界エイズデイ、この日を挟んだ11月28日から12月5日はエイズ予防週間です。
厚生労働省のエイズ動向委員会の報告に寄りますと、わが国のエイズ患者は1980年代統計を取り始めてから増え始めていて、2016年には437人が新たにエイズ患者と報告され、感染経路の87%は性的接触でした。
エイズ治療の最前線に立ち続けてきた国立病院機構大阪医療センターのHIV/AIDS先端医療開発センター長白阪さん(61歳)を訪ねてエイズはどのように発症するのか、感染を防ぐにはどうすればよいのか、日本でのエイズ医療の歴史をたどりながら伺いました。
エイズはかつては死の病と言われた、感染すると10年ぐらいでエイズになって1年ぐらいで亡くなっていたが、1996年ぐらいに新しい治療法が出来て、死ぬことも無くなり、早くから薬を飲めばエイズになることは無くなった。
慢性疾患と同じ病気になりました。
薬をやめてしまうと又ウイルスが増えていってやがてエイズになる可能性が高くなる。
1996年ごろはアメリカ全土でかなりの患者さんがいて、多くがゲイの方だった。
ロビー活動から大統領に声が届いて、クリントン大統領がエイズ対策を国のトップの一つに挙げられ、薬を作ることに力を入れて、薬を飲む時間を分刻みで決めたり、色々な条件で沢山投与された。
仕事を辞めて薬を飲むことに専念した人もいた。
薬の開発が進んで行って今では1日一回一錠でいいです。(一つ飲めば3種類が飲める)
注射薬も開発されて、月に一回で良いと言うようになってきています。
副作用も当初は吐き気、下痢、頭が痛い等有ったが、最近ではほとんどなくなりました。
HIVのウイルスは変異しやすい、自分が増えるときに姿を変えると言う特徴があるので、増えなければ姿を変えようがないので、薬を飲めば増えない。
HIVが私達の身体に入ってきたときに、自分の持っている酵素、タンパク質の中に逆転写酵素、インテグラーゼ酵素、プロテアーゼ酵素、が無いと増えない。
今使われている薬は今3つの酵素をそれぞれ抑える薬なので、これを飲んでいるればウイルスは増えようがないんでおとなしくしている。
年間200~300万円の薬剤費ですが、健康保険が使えます。
この疾患に対しては身体障害手帳の対象疾患になっているので、月1万~2万円で済む事もあります。
HIVとエイズは混同して理解している人が多いと思いますが、エイズは病気の名前、原因を調べるとウイルスだった、そのウイルスの名前がHIV。
HIVに感染すると、CD4陽性細胞という免疫細胞に感染して、段々数がゆっくり減っていって、あるラインより下ると免疫が弱くなって、身体に住んでいる色々な菌が暴れ出して、エイズの様な肺炎だとか、そういう症状が出る。
下がって行く期間が10年ぐらい掛かる、感染してエイズになるのが10年ほどと言うことになる。
4~7割の人がインフルエンザのような症状、高い熱、体がしんどいとか、病院に行くと急性のウイルスの感染症と言うような検査結果が出るぐらいで多くの人は治ってしまう。
10年ぐらいは症状の無い時期が続きます。
半数は肺炎と言うことだが、良く調べるとエイズですとか、疲れると口に水虫のように出たり、もっと奥の食道に広がるとか、ひどい下痢が続くとかになる、これがエイズと言う症状です。
免疫を下げないと言うことが大事で、薬を飲んでいただければ免疫は下がらない。
HIVは男性であれば精液と血液、女性であれば膣分泌液と血液、お母さんの場合は母乳、ここにしかいない。
涙、汗には居ない。
感染経路は性行為、輸血(日本ではまず無い)、医療事故などもありうる。
母乳での感染は非常に少ないと言われているが、うつらないと言うことはない。
感染の確率が非常に高い性行為が肛門を用いる性行為で、次が男女間の膣を用いた性行為
、女性が陽性の場合は男性よりもうつりにくい。
コンドームを使うことが一番防ぐ手立てです。
1981年世界で初めての症例が報告される。(アメリカ)
日本でエイズが注目されたのは1980年代の後半です。
原因が判らなかったが、研究して1983年に患者のリンパ節からウイルスが取れて、現在はエイズの原因のHIVであることがわかっています。
日本でもエイズの第1号が報告されて、国内の問題として認識された。
有る地域での女性がエイズであるとわかった時には全国の男性が保健所に殺到したと言うエイズパニックが起きた。
そのころは新聞、TV、週刊誌に出ていたが、終わって薬害が出てきてセンセーショナルに報道されたが、終わりが来たときに、忘れてしまうと言うことになったが、データを見るとHIVウイルスに感染する人は減ってはいないというデータがある。
一番多いのが東京で毎年100人前後、次が大阪、愛知県、最近は福岡県が急増している。
医者になって留学する機会があったが、専門は呼吸器だったが、呼吸器かエイズにいくかだったが、うちの大学の先生がエイズで世界で最初の薬を開発された満田先生だった。
そんな関係で1989年にエイズの方に行きました。
高濃度のHIVウイルスの操作をしました。
3か月に一度血液検査をして感染していないことを確かめました。
アメリカではエイズの研究をしていると尊敬されましたが、日本ではそんなことは辞めとけと言うように言われました。
5年半アメリカで過ごして、1994年の暮れに日本に戻って来ました。
薬の進歩で生き残れるかどうかの境目でした。
薬害エイズの患者は薬として取り込んでいったが、そこで感染してやり場のない思いがあり、免疫が弱い状態は変わらす、失明したり、食べれなかったり、食べても吐いてしまったりしていて、熱が出て、意識が無くなってくる、そんな中で死を迎えたりしている。
1996年に原告と国、製薬会社が和解する。
1997年国立大阪病院に移って来ました。
当時は新しい治療が出たばっかりで、不安も強くて、5年、10年で亡くなってしまうのではないかと思っていました。
こんなにエイズが増えるとは思わなかった。
病院の治療の累積は3000人を超えています。
治療行為に関する事、人間関係の悩みなどがあります。
結婚して男性が感染しているときには、精液を取って来てウイルスを洗ってしまうことが出来ます。
体外受精して子宮に戻すことで妊娠する方法があるが、大変なのと保健が効かないので高額です。
1994年ぐらいから母子感染のないお子さんを得ることが出来ます。
梅毒は日本には無くなったと思われますが、最近は若い女性に急増しています。
梅毒をもった状況が増えると言うことはHIV感染がしやすくなる。
中学校などで話をすることがあるが、性感染症が広がっている事を知らない人が多い。
中高年の男性も要注意、HIV感染者は30歳代が多い、潜伏期間の関係もあるが、エイズ患者は40歳前後が多い。
中高年では、潜伏期が長いためいきなりエイズと言う事が多い。(夫婦とも感染)
海外でのHIV患者と触れる、セックス等古い話。
日常での生活ではうつらない。(プール等々)
今HIVでは死にません、慢性疾患、副作用も少ない。
検査キットは妊娠反応を見るようなもの、血液を落とすと血液がしみて上がっていって、なにも映っていなければ感染していない。(15分位で結果が出る)
当初はこんなにつらい疾患を見ることはしんどいと思いましたが、最近では薬を飲めば何とかなると言うような状況になりました。
2016年エイズ患者の年間発生数、東京都97人、大阪48人、福岡46人、愛知32人、神奈川26人だが人口比で見ると、福岡県、佐賀県、東京都、高知県と順になる。
「HIV、検査、相談」、で検索すると検査の場所などが判る。