2012年1月18日水曜日

津野海太郎(評論家)       ・若者雑誌から電子書籍まで本と時代を考える2

 津野海太郎(評論家・和光大学名誉教授73歳)若者雑誌から電子書籍まで本と時代を考える2  
最近の若い人は本を読まない 量的にも質的(堅い本)にも読まなくなった 
ずっと云われ続けてきた
70年代の終わりから80年代の初め 「活字離れ」と言う事がわんわん云われた  
事実堅い本から若い人達が離れ始めた
「軽薄短小」への移行 単行本の売り上げが雑誌を抑えていたが あの時に逆転が生じてしまって 雑誌の方が売れるようになってきて 10年、20年経つうちに、7:3ぐらいの割合で雑誌7:書籍3という割合に定着してくるわけです 
軽いもの、読みやすいものの方に人が流れてしまって 読みにくいもの ちょっと頭の筋肉を 動かさないと読めないと理解できないもの 時間がかかるもの と言うのはどんどんはねれてきたことは事実です
 
それが始まったのは少なくとも80年代には云われ始めていた 
大正教養主義で育った人たちとか、そう言った人達は当時我々に対しても 最近の奴らは電車のなかでも本なんか読まないで漫画ばっかり読んでいたと云われていた 
戦後 若者は段々本を読まなくなってきたと云われてきたことは事実ですね  
そう言ったことが重なりながら随分低いところに来てしまった事が有るわけですね
今の若い者が悪いわけではなく そういう流れが既に私が若い頃から既に始まっていて 本に自分の精神のすべてをかけて本とともに生きると云うような仕方で生きる人は私達の頃は減っていましたから 今の若者だけを責めるわけにはいかない 
あらゆる人たちが段々本を読まなくなってきていると言った方が正解かも知れない
 
今はTV、オーディオ、パソコン等が部屋に有り ケーブルで外界に全部繋がっている 
あらゆるビジュアルなものからオーディオビジュアルなものが全部そこを通じて入って来る
そんな中で活字に集中することなんてできるわけがないですよね  
そんな社会環境と言う、ものが有って 私ですら本を部屋の中で読んでいる時間はどんどん減っている
紙の本だけで支えると云う事は出来ない事は事実だと思いますね  
1997年出版危機と言われたのは→直接的には消費税ですね 
書店から出版社に返品がどんどん多く重なってしまい、売り上げが減ってしまった 
一過性のものか 不況には本は強いと云われてきた 
しかしこれをきっかけにずーっとヘリ続けてきてしまった  
1945年が270点ぐらいが8万点ですからね 
今の日本の書き手の能力を含めて編集者の能力を含めて もうそれの限界を超えているだろうと云われている
ですから質のわるいものがどんどん出てきているのは明らか 
そこまでやらないと全体が成り立たなくなってきた 

何故そうなったかは さっき言ったみたいに本が売れなくなった事は事実ですけれども 売れなくなったのをカバーするために粗製乱造する 似たような本をどんどん出す
雑誌が7割 書籍が3割 に定着した 店頭が書籍ではなく雑誌に変わった 
雑誌と言うものは定期刊行物 週刊誌、月刊誌、期間誌 基本的には書籍の場合はある
書店の場合は月刊誌ですよね ひと月たつとそれは売り物にならなくなる 
それが中心になってゆくと 全体がそれに引きずられてしまう 
そういった時代に育った人たちは 書物と言うものが生命が短いものが前提となる 
急いで買わなくてはいけないと思うと同時に急いで消えてゆくんだから、それだけの時間だけ持てばいいという風に雑誌と共に刊行本もなって行ってしまう   
本の生命が短くなってしまった 本屋さんの数もどんどん減ってきてしまった  
市場が荒れてしまった 正常なビジネスが成り立たない市場に変わってきてしまった 
「本とコンピューター」雑誌の編集者 として出したが→大手の印刷会社 電子化が早かった 
文字とコンピューターの間に有る世界、紙の本世界の人とデジタルの世界の人の言葉が全然違う 話が合わない 通じない 

コミュニケーションができる仕組みを作った方がいいのではないかと「本とコンピューター」  
を出した(両方に足を突っ込めるような) 印刷、本、デジタル 一緒に重なったような事ができないのかなと始めた
卓上出版 自分の部屋で本を作成 (パソコン プリンター)  →印刷しなくてもいいんじゃないか →コンピューターの画面がそのまま本の役割
漫画 百科事典の電子化 売れなかった 
最近の電子書籍化 インターネットで音楽を買う 当時は売り買いするシステムが無かった
流通の仕組みができた 音(音楽)がそうだとすると本も出来るんじゃないかと言う事が見えてきた  
グーグルが世界の図書館の本を全部電子化するという事を始めた
概算すると1億点(日本等含めるともっとあると思うが)ぐらいあると思う 
それは図書館の夢 実際に始めてしまった  
電子本リーダー  安価 反射タイプ画面 で アメリカで爆発的な売れ行きとなる  
日本でも展開  紙の本は絶対に無くならない
紙の本は紙に印刷し 綴じて 製本する 紙の本 これは全て物質 電子の本と言うのは物質ではない 

保存するときはともかく(ゼロと1の信号) 画面に表示するだけ 
定着感はゼロ いつまでも保持する事はできない どっちも出来る事と出来ない事がある  
共存する
紙の本にとって一番問題なのは紙の資源の問題  中国が13億人 インド他が一斉に経済成長する 経済成長と紙の使用量が比例する
日本は60年代まで世界の紙使用量 40位ぐらい 
10数年でアメリカに次いで第2位になってしまった  中国が今日本を越してしまった 
その勢いで成長するととてもじゃないけど木材が間に合わない 
ある部分は電子本に肩代わりしてもらわなくてはいけない と言う事は明らか  
電子本は恒常的に電気を供給しなくてはいけない  共存しない限り生きていけない
20世紀は異常な時代だった 紙の本がこんなにともかく社会のあらゆる層に広がって 
あらゆる層の人が読書の習慣を持つようになった 20世紀は初めて
20世紀が最高潮に達した その中に生きた事は感概に堪えない気がする