2024年8月20日火曜日

高橋うらら(児童文学作家)        ・子どもたちへのメッセージを ノンフィクションに込めて

 高橋うらら(児童文学作家)  ・子どもたちへのメッセージを ノンフィクションに込めて

高橋さんは1962年東京都生まれ。(62歳)  児童向けノンフィクションを執筆し、これまでに児童文芸ノンフィクション文学賞などを受賞、自身の作品では障害者問題、動物保護、戦争、環境といったテーマを取り上げ、命の大切さを伝えてきました。 今年4月に出版された「おとうとのねじまきパン」、ずっと昔満州という国であったことが、戦時中開拓団と共に満州国へ渡った家族の実話に基づいた物語です。 この作品を通して戦争を知らない子供たちに今につながる過去を知って欲しいという高橋さんの思いを伺いました。

「おとうとのねじまきパン」の表紙に込めた思いは、かつて満州で暮らされた原和子さんという方の主人公の絵なんですが、終戦後大変な思いをされましたが、その方を判りやすく子供たちに伝えたいという事で、イラストにして描いていただきました。 本当にあったちょっと悲しい物語です。 主人公の原和子さんは昭和11年に4歳の時に東京から満州に渡りました。  父親が役所に勤めていて、結核を予防する活動をしていて、その活動を満洲にも広めようということで、満洲に渡って行きました。 満州は1932年(昭和7年)に日本が中国大陸東北部に作った国です。 軍人だけではなく開拓団と言って、中国の大地を耕すために渡って行った開拓団と、多くの民間人も一緒に渡って行きました。 終戦時には約150万人の民間人がいたと言われています。 主人公は最初満洲の新京(長春)に移り住みました。 日本人の学校も数十校あったと思います。 満洲に行けば豊かな生活が出来ると思ってみんな行きました。 主人公はその後九台という田舎町に引っ越しました。 そのに新しくできた病院の事務長にお父さんはなりました。 

その夏に終戦となります。 ソ連は日本とは中立条約を結んでいたが、8月8日にソ連がいきなり対日参戦をしてきます。  一番被害を受けたのは開拓団の人です。 ちいさい赤ちゃんは泣くと見つかるという事で首を絞めて殺されて、歩けない子供は泣く泣く中国人に預けて逃避行を続けました。  日本に帰国できなかったのが、中国残留孤児です。 中国人も日本人に差別をされて労働とかさせられていたので日本人を恨んでいる人が多かったんです。 略奪するという動きもありました。  9月12日に中国人に襲われて、家を追い出されて、ソ連軍が用意した収容所に入りました。 (中ほどまでのあらすじ)

*中国人の暴徒が襲ってくる様子、逃げる様子などを朗読。

児童文学者の青柳貞夫?さんとの出会いがありました。 青柳さんは満州を題材にした童話をいくつも書いていました。  自分が何も知らなことにショックを受けました。 青柳さんから原和子さんを紹介してもらい、話を聞きました。  周辺の方々の話も聞いたり取材を続けました。 現地にも行きました。 こんな遠いところまで150万人ぐらいの人が来ていたのか、というのが感慨深かったです。 2006年に取材を始めて、2024年に出版しましたが、その間に青い八木さん、原和子さんも亡くなりました。 本人たちには読んでは頂きチェックをしてもらいました。  引き揚げが開始されたのは、終戦の翌年からでした。 貨物列車のような列車から引き揚げ船に乗って帰って来ます。 

最初、原和子さんの話、青柳さんのいた先崎?小学校の子供たちの話、谷口正?さん(終戦時に中学校3年生)という方の話の3部作で書いていました。 3部一緒に出版してくれるところがありませんでした。  谷口正?さんについては、2014年に「ほりょになった中学生たち」という絵本で出版することが出来ました。 2016年には満州の話をフィクションで「幽霊少年シャン」を出版しました。原和子さんの話はようやく2024年に出版することが出来ました。 

戦争を知っている大人がほとんどいなくなってしまった。 戦争中に何があったのかを正しく今の子供たちに伝えていく義務があるのではないかなあと思いました。  満洲については大人であっても知らない。  正しく知ってゆくことが大事です。  小学校で日本の歴史を習うのは6年生です。 どうやったら判るのかを思いながら書きました。 大人の方も是非読んでいただければと思っています。  

児童文学もいろいろなジャンルに別れています。  しかしほとんどがフィクションの物語です。 私がテーマにしているのが、戦争と、障害者の問題、動物保護ですが、共通しているのが「命の大切さ」というテーマです。 ノンフィクションで伝えた方が伝わりやすいのではないかと思いました。 取材するにあたって、初めての人に信頼してもらうといことが大事です。 誠心誠意向き合う事で、時間をかけて信頼してもらうようにしました。 

児童文学はテーマをはっきり打ち出しやすい文学です。 小学生のころから物語を書いていました。(フィクション)  妹は障害があるので、テーマの対象になっています。   或る時に出版社の編集者さんからノンフィクションをやってみないかと言われて、聴導犬(耳の不自由な人に音を教える犬)が主人公の「聴導犬誕生物語」という本を書きました。 ノンフィクションでは全く事実は変えられません。  フィクションのほうが伝わり易いという面もあります。 取材の時間の方が短いと思います。 書く時には主人公になったつもりで楽しいです。 

9月に2冊出します。 一つは兄弟児(病気や障害の有る子供の兄弟)がテーマです。 私の妹も耳が不自由でした。 ヤングケアラーになってしまうのかとか、親が亡くなった後自分が面倒を見なくては言えないのかとかいろいろな事で悩む場合があります。 3人の方を取材して1冊にまとめて「自分らしく貴方らしく 兄弟児からのメッセージ」という本です。  もう1冊は小林幸一郎さんという目が不自由ですが、パラクライミングで世界選手権で4連覇された方の話です。 「見えない壁だって越えられる小林幸一郎」という題名です。

ラジオ深夜便 明日への言葉「クライミングの可能性を信じて」

https://asuhenokotoba.blogspot.com/2023/07/blog-post.htmlを参照ください。