四世石田不識(琵琶製作職人・人間国宝) ・ビルの谷間で琵琶づくり
琵琶は1000年以上の歴史を誇る西アジアで生まれた楽器です。 シルクロードを通って中国経由で7世紀ごろ日本に渡ってきたと言われています。 石田さんは昭和12年青森県八戸市の生まれ、昭和28年に宮大工の仕事を始めましたが、琵琶職人の娘さんと結婚して義理のお父さんに師事して、琵琶製作に従事します。 初めての琵琶つくりに苦労しながら、平成18年には無形文化財保存技術と認められ技術保持者に認定されました。
1878年創業、1931年に虎ノ門の場所に移転して90年経ちました。 朝9時から夕方5時まで仕事をしています。 ビルの谷間になってしまいました。 「光る君へ」でも琵琶の場面がありました。 「かっこいい」とは言うけれど「やります」と言う人は滅多にいませんね。 9月に琵琶のコンクールがありますが一般の人は知らないです。
ここにあるのは薩摩琵琶の五弦です。 四弦は駒が無いんです。 薩摩琵琶は四弦が本当なんです。 鶴田錦史という先生が改良を加えた五弦にして、洋楽との演奏も出来るようにしました。 武満徹さんが曲を作って小澤征爾さんが指揮をして、それが評判になりました。 今は若い人が五弦をやっています。 木は桑の木です。 御蔵島から桑の木を仕入れています。 桑の木はありますが、切って出す人がいないので、ここ7,8年は入ってこないです。 蚕用の桑の木ではなくて自然の木です。 最低でも80年掛かります。 桑の木は10年分ぐらいは家の倉庫にあります。 丸太を買って乾燥させるのには7~10年はかかります。 本当は今仕入れないといけないんですが。 薩摩琵琶なので本来は鹿児島に桑の木がある筈ですがないんです。 御蔵島では切る人が一人居ますが、高齢でもう体力が無いという事です。 一本80~130万円ぐらいします。 こちらから人間を送って旅費、宿泊代などをこちらが持つとなると高額になってしまいます。
薩摩琵琶は立てて音を出しますが、平家琵琶、楽琵琶は寝かせます。(ギターのように) 楽琵琶は裏がカリンの木で、表は栗の木です。 筑前琵琶は裏は桑の木、表は桐の木です。 音が違ってきます。 筑前琵琶は女性向の音です。 薩摩琵琶は男性的です。
平成18年に無形文化財保存技術と認められ技術保持者に認定されました。 現在87歳です。 18歳で大工の見習いで東京に出てきました。 琵琶職人の娘さんと結婚しました。 先代の親父さんが亡くなり、琵琶の先生方が琵琶を作らないかと言ってきました。 いろいろなことを先生から教えてもらいました。 接着にはニカワでないとだめという事で、接着の方法も先生方から教わりました。 古い琵琶をばらして、中がどうなっているのか全部調べました。 やっているうちに演奏会にも顔を出すようになりました。 先生の出す音を理解して、段々その音が出るよぅに作って行きました。 音で苦労しました。
「さわり」、楽器の音色の名前。噪音の一種。音色は楽器によって異なる。 特に薩摩琵琶は、さわり音が強く響くことで知られている。 例えば三味線では、最も低い弦の位置を工夫することで弦に独特のビビリ音が得られるだけでなく、他の弦を弾いたときに同調して共鳴する。この音を「さわり」と呼ぶ。 三味線の「さわり」は琵琶を模したと言われている。 木目によっても善し悪しがある。 木の硬さによっても音が違ってくる。 薄めにしようとか、何面作っても同じ音にはならない。 同じものは絶対できない。 息子が継いでくれると言うので、私は音で苦労したので、息子には演奏を先に習うように言いました。 息子は56歳になります。 演奏者で製作者で修理もできます。 盲僧琵琶を作ってもらいたいという人が来ました。 息子が対応しました。 孫は21歳になりました。 正倉院にある琵琶を再現したいという事で、10年掛かって作りました。 「螺鈿紫檀五弦琵琶」です。 夜光貝も4cm角で厚さが1mmで2000円します。 100枚は使います。 彫ってはめ込みますから、手間がかかります。 もう一回正倉院のものを作って奉納したいという思いがあります。