2024年8月17日土曜日

郷地秀夫(東神戸診療所 所長 医師)    ・〔戦争平和インタビューシリーズ〕 真実は被爆者の体に

 郷地秀夫(東神戸診療所 所長 医師)・〔戦争平和インタビューシリーズ〕 真実は被爆者の体に

広島、長崎に原子爆弾が投下されてから79年、広島ではおよそ14万人、長崎では7万人がその年のうちに原爆によって命をおとしたと言われています。 原爆による被害はいまも続いていて、放射線の影響で起こる病気で苦しんでいる人たちがいます。 神戸市の診療所で院長を務める医師郷地秀夫さんは、50年近く兵庫県内の被爆者医療に携わって来ました。 2002年からは原爆症認定集団訴訟に関わり、患者との熱心な対話や自らの足を使った粘り強い調査で、症状が原爆症と広く認定される様活動しています。 放射線による体への影響は見えにくく時間が経っても現れてくる場合があります。 被爆者の苦しみとどう向き合ってきたのか、聞きました。

今まで2000人ちょっと診てきました。(兵庫県全体)  診始めた時には被爆者が登録されているのが兵庫県だけで6000人ぐらいいました。 そのうちの1/3ぐらいを診ていることになります。  平均85歳を越えています。 被爆者検診では結構がんが見つかることが多くて、見落としてはいけないと診ています。  慢性原子爆弾症と言われるような症状、原爆ブラブラ病と一般には言われています。  さぼり病という様な風評、悪い印象があります。 身体がだるくて動けない、めまいがする、時々吐き気もする、便秘や下痢を繰り返すなどいろんな体調不良が起こって、まともな仕事とか生活が出来ないという人が沢山出ているというのが観察されます。 外からみても異常がない、血液検査をしても異常がない。

被爆した或る人が結婚して、子供が出来て、包丁を持って待っていたそうです。 もし子供に異常があったら子供も殺して自分も死ぬと言ったそうです。 そこまで思いつめたんです。 歳をとってから言ったが、その時には言えなかったそうです。 無事子供は生まれたそぅです。  何とか頑張って仕事をしてきたという方は結構います。 ですから表には出ない。 定年退職してから何もできなくなる方がいます。 そうすると奥さんにストレスがかかる。  検診してがんだと原因が判るとやっぱりそうだったのかと喜ぶんです。 がんと診断されると家族も優しくなる。 

原爆症は国が定めたものです。  被爆者の人がなった病気が原爆放射線によるものだという事が明らかになった場合に原爆症であると厚生大臣が認めるものです。 がんでも以前は認定されにくいものがある。  認定されると医療特別手当てがでて、生活保障の手当です。 月に14万円出て、3年に一回見直しがあります。 認定されるのには医師の意見書が要ります。 私は400,500書いてきました。 しかし、なかなか通らない。 何とか応援したいと思って訴訟に参加しました。(2002年から) 堂々と主張できるような人はいなかった。 甲状腺機能低下症という病名でやったりしていました。 被爆状況が爆心地から2,5kmで胃がんという事でした。 福島で言うと20ミリシーベルト  皮膚がんではケロイドが治った後に皮膚にがんが出来た。  教科書には2,5kmでは放射線の影響はほとんどないと書いてあるんです。(米軍発表の残留放射線は問題ないsとの意見が通っていた。) 私はそれを信じていたので、ほとんどが該当外ですと言ってきました。 お断りしてきた人々ばっかりが原告だったんです。 

最初弁護団から認定への医学的意見書を書いて欲しいと言われました。 20ミリシーベルトでデータもなく無理だと思いました。 きちっと話を聞かないといけないと思いました。 そうすると原爆を受ける前と受けた後で、人生が変わってしまったことを感じました。  条件を見直してみないといけないと思いました。  教科書は直接被爆の初期放射線量で決めていました。 初期放射線は1分以内でほとんど出る。 拡散したもの、残留放射線については判らないのでなかったことにすることでした。 調査、本を探してみると、2,5kmでも脱毛している人などがいました。 3kmぐらいでも原爆症で死んでいる人がいるんです。 髪の毛が抜けるのは4シーベルトという値で、2人に1人が死ぬような量なんです。  無視している残留放射線の影響が相当あるのではないかと思いました。 

後で爆心地に入って行った人が亡くなったというような話も聞きました。 被爆者のほとんどの方がそういったことを知っていました。 そういったことを元に意見書を書きました。 終戦後アメリカは原爆で死んでしまう人は死んで、後は何の問題はないと発表しているんです。 残留放射線は問題ないということを発表しています。  裁判に関わらなければ気付いていなかったと思います。  体系化した汚染度の問題は中々判りようがない。(それぞれいろいろな条件が違う。)  国側が裁判で要求してくることは、患者さんの病気が放射線に起因するという事を証明しなさいと言いますが、それは無理です。  逆にこういったところでこれだけの体験をしてこういう症状を負って、それが放射線と関係が無いということを証明してほしいわけです。 

集団訴訟が始まって20年ぐらいになりますが、原爆症というものが知られたという事に意味があったし、全面的に原告側が勝訴したという事が報道されて、凄くよかったと思います。  平和の大切さを訴える裁判は、いいきっかけになったと思います。 認定だけの裁判ではなくて、核兵器をなくさなければいけない、平和な社会が保てるよぅな社会に引き継いでゆくために、我々の為にやっていただいている裁判だなあと思います。