2024年8月21日水曜日

上田 藍(プロトライアスリート)      ・〔スポーツ明日への伝言〕 笑顔のチャレンジャー

 上田 藍(プロトライアスリート)      ・〔スポーツ明日への伝言〕 笑顔のチャレンジャー

上田さんは北京、リオデジャネイロ、ロンドンと3大会連続でオリンピックに出場するなど、日本のトライアスロン女子の第一人者として活躍してきました。 ワールドトライアスロンのレースには231戦に出場、36レースで優勝63回表彰台に上がり、国内では日本選手権では女子最多の7回の優勝と素晴らしい実績を残すとともに、その明るい笑顔で多くのファンを引き付けてきました。 怪我のために選考基準を満たせずに断念した東京オリンピックの後は、オリンピックよりも4倍以上距離が長く、時間も9時間前後かかるという過酷なトライアスロン、アイアイマンレース(鉄人レース)のプロとして世界に挑み続けています。 上田さんにそのあくなき挑戦し、トライアスロンの魅力などを伺います。

9月に世界選手権があります。 スイムが3800m泳いで、180kmの自転車を漕いで、ランが42,195kmのフルマラソンの距離です。 アイアイマンレースにチャレンジしているところです。 フランスのニースで開かれます。  プロのカテゴリーとエイジグルプがあり、5歳刻みで年代別で出場権を獲得したトライスリートの愛好者の方もレースには出られます。 プロの女子では出場権を獲得したのは私一人です。 6月のオーストラリアの大会で7位で時間が9時間6分50秒で出場権を獲得しました。 オリンピックはスイムが1500m、自転車が40km、ランが10kmとなっています。 トータル51,5kmになります。 時間は2時間ぐらいなのでアイアイマンレースでは4倍以上の時間がかかります。 アイアイマンレースでは制限時間が17時間とか16時間の制限時間があります。 完走した人すべてが勝者と言われます。  

3歳からスイミングスクールに通いました。 鉄人レースの愛好者のおじさんたちがスイミングスクールに通っていて、マスターズ水泳がありました。  父が手書き友禅の職人でしたが、マスターズ水泳をしていました。  中学生の頃には家から自転車で25分かけてスイミングスクールに来ていて、助っ人で陸上のメンバーに入ってもいました。 おじさんたちからトライアスロンを薦められました。(中学2年生ぐらい)  両親が手描き友禅で2階が工房になっていました。 小学校でスイミング、お絵かき教室、ピアノを習いました。  絵は家で描けばいいという事でスイミング一つになりました。  絵を描くことでイメージトレーニングにもなるし、やってきたことが今につながることは興味深いです。

父からは「日々しっかりと練習をしていれば、上達して結果が出るから、やりだしたことは最後までやりなさい。」と助言され軸が出来ました。   高校を出て山根英紀さんから指導を受けるため、京都から千葉へ移りました。  オリンピックを目指すようになって北京、リオデジャネイロ、ロンドンと進んでいきました。  オリンピックを目指すという事を言葉に出す事によって、どういう努力が必要で、どういうタイムが必要なのか、段々明確になって行きました。  自分の可能性を最大限に出せた舞台ではありました。  目標を持ったのであれば発言したほうが、周りの方もそこに向けての応援と共に厳しい見方をしてくれるので、やる気が倍増してきます。 

身長は155cm、体重は45kgぐらいです。 世界で戦う選手としては小柄なほうです。 2019年2020年怪我の為に東京オリンピックには出場できませんでした。   2019年3月に開かれた世界大会で、自転車から落車してしまって、肺気胸、脾臓の裂傷、外傷性のクモ膜下出血という大きな怪我をしてしまいました。 病院に行きついた時には肺気胸で肺がしぼんでいました。 肺を膨らませるための手術をしました。 1週間以上の入院をして日本に帰ってきました。  親指ぐらいの太さのチューブを抜いて帰国しました。 穴をふさぐのに左肺の可動域が少なくなりました。  

復帰して6月のワールドカップでは優勝しました。 かばうために足に無理が来ていて、7月のドイツのハンブルグの世界大会のレースの時に足裏が痛いなあと思いながら最後の300mでスパートしたら、パンという音がして足の裏の腱膜の断裂をしてしまいました。  日本に戻って8月にある選考レースには間に合わないと診断されました。 リハビリをして、10月のワールドカップでは優勝しました。  2020年最終選考レースがアブダビで開かれる予定で、ヨシそこでと思っていたら、コロナの為大会が中止になってしまい、オリンピックも延期になってしました。  選考大会では基準を満たせずに日本代表を逃す結果になってしまいました。

パリをめざすのか、いろいろ悩みましたが、私はランが得意な後半追いかけ型で、協力し合いながら勝つ戦略もあり、パリへの流れではスイム先行型の選手が多くて、自分の可能性をチャレンジするには、自転車、ランが得意なロングディスタンスの方に舞台を変えた方が、世界で戦えるのではないかと思いました。 プロのカテゴリーの出場権を獲得できたので、チャレンジャーとしてしっかりやって行きたいです。  試練を乗り越えた時には、試練を受ける前よりは絶対強くなれるぞと、わくわくするんです。  いい時も悪い時にも前向きで過ごすという大切さも、そのたびに学ばせていただいたので、何が起こってもコツコツやっていけば乗り越えられるし、目標に近づくし、やっぱり楽しいんだなと再認識できる。 タフな競技ではありますが、健康に留意して過ごす大切さを私も皆さんも学んでいます。