遠藤良子(NPO法人くにたち夢ファームJikka理事) ・「DV」で苦しむ女性の居場所を作る
遠藤さんは新潟市出身で、東京都国立市在住の75歳。 2006年から埼玉県越谷市の男女共同参画センターの女性相談員を務め、その後いくつかの自治体で相談員を続け、現在でも埼玉県の相談員をしています。 遠藤さんは夫や家族からの暴力や、貧困に悩む多くの女性たちの相談に乗って来ましたが、更に具体的な助けの手を差し伸べようとNPO法人くにたち夢ファームJikkaを仲間たちと共に2015年に設立しました。 曜日ごとに様々な女性たちの相談に乗るほか、仕事やアパートの紹介、サークル活動などを実施しています。 2022年にはこれまでの活動が認められ、東京都女性活躍推進大賞を受賞しました。 遠藤さんにNPO法人設立の狙いや活動の成果、今後の課題などお話を伺います。
最初は勉強にと思って相談員を週に一回ぐらいのペースでやっていました。 はまってしまって18年ぐらい続けています。 その後掛け持ちのいつかの自治体の相談員をやっていました。
新潟から高校を卒業して出て来た後、19歳で結婚しました。 相手も19歳でお酒を飲むと暴れたり、切れたりすると物を投げたり怖いんです。 このまま続けるのは出来ないと思って逃げ出しました。 日々生きてゆくことが大変で、体験を生かそうなんて思ったことはなかったです。 子供が3人いて、長女が学校に行かなくなってこれは大変だと、ジレンマに陥って自分だけでは解決できないなと思って、不登校親の会があって、そういう所に行って学んだり、そのつながりの中からそういった子供の居場所を作ったりしました。 それが居場所つくりのきっかけです。
NPO法人を2015年に設立しました。 活動を続けるにはお金が必要で、公的な支援を受けるには任意団体では貰えないんです。 仲間たち数人と一緒になって、立ち上げました。 「くにたち夢ファームJikka」と言う名前を付けました。 突然逃げるのには実家がある人はそこにすぐに逃げるので、ちょっとだけでも助けてくれる実家があれば救われるので、そういう思いを込めて「Jikka」と言う名前にしました。 9年になります。 DVから隠れて逃げるという事は違うのではないかと思いました。 加害者を罰することも必要かもしれないが、被害者が安心して堂々と生きてゆくという事をしていかなければ駄目で、皆で守ればいいのではないかと思いました。 そのためには地域の人にDVとは何なのか、本質的にどういう問題なのかとか、世の中全体の問題ではないのかと、理不尽な暴力に女の人は絶えなくてはいけないのか、皆で考える問題だと思いました。 個人情報との絡みもあるが、もっと知ってもらわなくてはいけない。 そのなかで被害者の人たちを守ってゆけると思ってやってきました。 加害者が来たことは一度もありません。
月曜から金曜日まで11時から4時まで開けていて、スタッフは毎日変わります。 スタッフの得意なことをやります。 相談日、図書館の日などいろいろやっています。 NPOと言うと私たちの趣旨を理解してくれます。 国立市の福祉協議会、UR都市再生機構などと協力して、アパートとかの居場所つくりを進めています。 コロナの真っ最中に困窮者の生活支援があって、国立市の社会福祉協議会とのつながりがあるので、話を持ってこられてURさんと一緒に動いて困った家庭を救済したことがありました。 今は8室ぐらいあります。 女性支援新法、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律。 福祉六法があって女性への福祉はないんです。 唯一有ったのが60年前ぐらいの売春防止法です。
売春防止法に基づいて婦人施設、婦人相談所が作られた。 最近はそこを使いたがらない人が凄く増えています。 女性全般の支援が出来ない。 女性支援新法が昨年成立しました。 女性はいままでいつも世話をする立場で、自分が困った時には誰も助けてくれる人が居ない。 女性にとって過酷な世界であるわけです。 性暴力も問題になっている。 画期的な法律なので、是非生かしていけたらなあと思います。 NPOは仲間が作る法人なので、堅苦しくもないし、皆が対等に意見を出しあったりして共同でやってゆく団体です。 公的な機関と共にやっていけたら女性支援新法も生かしていけるかなと思います。
2022年にはこれまでの活動が認められ、東京都女性活躍推進大賞を受賞しました。 世に知られていない女性の存在がちゃんと認められて嬉しかったです。 女性の独り暮らしの困窮者が増えています。 50、80問題 70,80代の母親とその娘さんとの暮らしでも娘さんがイライラして暴力をふるってしまう事もあります。 娘さんから逃げてくるが高齢で一人で暮らすしかない。 18歳ぐらいの子が逃げることもあり18歳は成人なので養護施設にも入れない。 児童相談所も相談に乗ってくれない。 それでうちに頼ってくることがあります。 色々な年代層から来ます。
新潟で祖父が母子家庭、日雇いなどいろいろな人をお世話する姿を見てきました。 それが原体験として有ったように思います。 理屈抜きにして、人が困った時に肩寄せあっていっしょに生きてゆくんだという事を刷り込まれているという気がしています。 テレビなどで報道してもらえたお陰で、寄付を沢山いただけるようになりました。 助けて欲しい人が「助けて。」と言った時「ハイ」と言って動かないと、助けられないことが沢山あります。 出来る限り夜中であろうが電話を取ります。