2016年12月8日木曜日

小酒部さやか(マタハラNet 前代表) ・働きながら育てられる社会を目指して

小酒部さやか(NPO法人マタハラNet 前代表) ・働きながら育てられる社会を目指し
働く女性が妊娠や出産を理由に職場で不当な扱いを受けるマタニティーハラスメント、通称マタハラ、厚生労働省の調査に依りますとマタハラを受けた経験のある女性の割合は正社員で5人に1人、契約社員では半数近くに昇っています。
自らもマタハラの被害にあった小酒部さん、退職後にマタハラNetを立上げ、被害者支援に尽力してきました。
来年2017年1月には企業にマタハラ防止策を講じることが義務付けられます。
深刻なマタハラの実態や被害を防ぐために必要なこと、支援を続けてきた小酒部さんに伺います。

二度流産して、不妊治療して4年かけてようやく妊娠して、7か月になります。
9月末に自宅安静していて、今は自分自身の生活を大切にしたいと思い、交代しました。
2014年7月にNPOを立ち上げる。
妊娠、出産、育児をきっかけに職場で精神的肉体的嫌がらせを受けたり(ハラスメント)、解雇や退職強要など不利益な扱い(不法行為)を合わせたものをマタニティーハラスメントと言います。
簡単な嫌がらせの言葉から始まって退職強要など幅が広いです。
私は二回流産していますが、最初妊娠した時には自分も初めてだったので深夜残業を繰り返して、流産してしまって、上司に実は妊娠していたと言ったら、今は妊娠などしなくていいのではないかと言われ、暗に仕事に専念するように言われました。
業務改善を要求したが改善されず、半年後に妊娠した時には切迫流産しかかって自宅に安静していたら、自宅に上司が来て迷惑をかけたんだから辞めろと言われました。
なんで妊娠をきっかけにこんなふうに仕事を退かなければならないのか、ショックでした。
他の上司からも厭がらせの言葉を言われて、人事部に相談に行ったら、仕事を続けたいなら妊娠は9割諦めろと人事部長から言われて、理解を得られず非常に残念でたまらなかったです。
最終的には会社を辞めました。
二度流産して、卵巣機能不全になってしまって、上手く排卵ができなくなってしまって、勤めながら妊娠は無理だと思いました。

主人からすると上司達の言動は余りにもおかしいと捉えてくれて、退職強要で労働審判で解決しようと思いました。
上司とのやり取りの録音を取ってあったが、言ってないやってないと言って事実を認めてくれなかった。
裁判でも人格攻撃をされてしまって、会社でも悪いことはしていないと言う様な感じでした。
司法の場でも苦しめられました。
私の方で証拠を持っていたので、3回で和解しました。
口外禁止条項を約束されるが、団体を立ち上げたかったので、企業名、上司名を言わければどうぞ活動してくださいという和解条項になり、マタハラNetを立ち上げて、自分の体験談を語れてマタハラという言葉が広げられたと思います。
裁判を通じて今まで生きていた中で一番怒りを感じました。
同様な経験をして来た人達が何人もいました。
マタハラNetを立ち上げて、直ぐ被害相談が来ましたが同時にバッシングも来ました。
男性からも来ましたが、女性からのバッシングの方が言葉が辛辣でした。
マタハラという問題があるということはそれを肯定する、マタハラしてもいいじゃないか、マタハラして当然というような考え方があったから、マタハラ問題があったと思います。
一番の敵は無関心、バッシングする人たちは記事なり、ニュースを見てくれているが、それはまだいい、無関心の人がターゲットだと思いました。

私は怒り狂っていましたが、それを表に出してしまうと怒りは人は寄り添えないのでひた隠して共感してもらえるように、そのためにはどうすればこの問題を解決出来るのか、ここまでやって一つのNPOだと思いました。
マタハラNet 目的
①被害者支援
②アドボカシー活動(政府への政策提言)
③企業への啓蒙(講演、セミナー、DVDの販売)
立ち上げて2年半になりますが、300件近い被害相談が寄せられています。
都市部が多い傾向が有ります、特に東京近郊。
2015年3月 アメリカの国務省が表彰する世界の勇気ある女性賞受賞、人権擁護、社会の進歩を訴えて活動してきた女性をたたえる賞。
この賞を受賞する先進国の女性は極めて少ない、発展途上国が多いという賞に日本が入ったということはどういう反応するのかと不安な思いもありました。
男女格差は2015年では日本は111位でカンボジアとネパールに挟まれている状況で、発展途上国並みだと、それがこの賞に現れていると言う事で、受け取ろうと気持ちを切り替えて受賞しました。

司法が先ず動いてマタハラ裁判と言う言葉が出来て、行政が動いて、厚労省が通達を出して、妊娠を契機に前後1年ぐらいは妊娠が理由と見なしますと変えました。
法改正と言う事になりました。
労働問題は被害者が声を上げないと、その問題はないものにされてしまう。
電通の長時間問題で高橋さんのお母さんが声を上げましたが、被害者が声を上げないとなかなか解決していかない。
マタハラの根っこは二つ
①性別役割分業の意識(男性は外で働いて女性は家事育児)
②長時間労働(長時間労働ができない人は半人前扱いされてしまう)
男性が育休、子育て等でのパタニティーハラスメント、これからは上司が介護休を取る時代になってくる、ケアハラ、マタハラ、パタハラ、これをファミリーハラスメントと呼ぶ人がいますが、この問題が大きくなってゆくと思います。
逆マタハラ、産休を取る女性のフォローをしている人たちが残業残業を強いられる。
これにも目を向けていかないといけない。

マタハラ、は日本の経済問題だと思います。
労働力不足、女性の労働力は必須です、企業の経営問題でもあるわけです。
私がしたかったのは2回の流産を意味のないことにしたくなかったことが非常に強かったです。
その経験が私を強くしてくれましたし、仲間も増えて、自分の宝だと思っています。
私は妊娠して代表をしていて運営をするのが大変でしたが、私もそうですが、女性経営者の妊娠は守られていないので、身をもって知ったので、これも考えていきたい。
女性だけでなく男性の労働環境にも同時に目を向けてもらって行かないと、マタハラ問題は解決しないし、全ての労働環境の見直しにつながっていったら嬉しいと思います。