久保厚子(全国手をつなぐ育成会連合会会長)・ 淘汰すべき命など、決してない
65歳、今年7月26日の未明神奈川県相模原市の知的障害者の入所施設津久井やまゆり園で入所者が刃物で刺され、46人が死傷した事件、犯人などの疑いで逮捕荒れた植松さとし容疑者は障害者は不要な存在、として犯行を計画したと供述しています。
久保さんが会長を務める全国手をつなぐ育成会連合会は事件の直後、インターネット上で障害のある人たちに向けた声明を発表し、全国から電話やファックスが届くなど大きな反響を呼びました。
重度の知的障害がある息子を持つ久保さんは今こそ障害が有る人と無い人が共に生きる社会が必要だと主張しています。
障害者に対する差別や偏見を無くし、人権を守るためには何が必要なのか伺いました。
津久井やまゆり園の事件について 障害のある皆案へ(声明発表)
「・・・障害のある人19人が殺されました。
容疑者は障害のある人は無くなればいいと話していたそうです。
・・・不安を感じた時は身内の人に不安な気持ちを話しましょう。・・・
支援者はきっと話を聞いてくれると思います。・・・障害のある人も無い人も一人一人が大切な存在です。・・・もし誰かが障害者はいなくなればいいと言っても私たち家族は全力で皆さんの事を守ります、ですから安心して堂々と生きてください。」
障害者、その家族などが不安を感じているので、心配ないと、今まで通りに活動しましょうと伝えたかった。
知的障害者は世間全体から云われている様な想いを抱いている人がたくさんいました。
貴方達の命も愛されてかけがえのない家族として思われている、だから大丈夫だと言うメッセージを届けたかった。
300件以上の意見が述べられている。
85%ぐらいは有難う元気がでた、勇気をもらったとか、救われましたと言う様な言葉をいただきました。
頑張ってほしいと言う意見もありましたが、犯人の意見に同調するような意見もありました。
姿を見るのもいやだとか、邪魔なだけだとか、犯人と似たような感じのメール、電話、手紙も頂きました。
国民の皆さんの心の奥底に、障害のある人達は自分達とはちょっと違う存在だという意識がたくさんの方が持っているのではないかと思います。
みんなが支えながら良くならなといけないなあと、そういう社会になればいいと思います。
1952年に前身となる団体が設立、制度の壁を取り払ってきました。
①発達障害、知的障害の人権擁護。
②その人たちが安心して働いたり暮らしたいと言う事に対する政策提言。
この二つが大きな柱です。
国の制度、地域の制度として安心できる社会でないと安心できないと思っています。
息子は現在41歳、知的障害で施設に入っています。
生まれた時に血を吐いていて、検査をしたら先天性十二指腸閉塞で手術をして、1カ月後癒着で再度手術、やせ細って骨と皮の様な感じになったが、元気になって来ましたが、20歳までは生きれないと言われました。
5か月の時に染色体の検査をして障害が有ることを告げられました。
主人から「僕たち夫婦だから育てていけると思って神様が授けて下さったんだから二人で力を合わせて育てていこう」と言われて気持は随分救われました。
この子と一緒に死んでしまったらと言う様なことも2回ぐらいありましたが、娘が生まれてその様なことは無くなりました。
育成会に入ったのは息子が退院してからです。
育成会のお母さんたちの力強い生き方に凄いなあと思いました。
障害があってもこれとこれ等に気を付けたら大丈夫だよとアドバイスを受けて、丸ごと息子を引き受けると言うきっかけになりました。
息子は8歳まで歩けなくて、歩けるようになったのはうれしかったです。
兄弟が仲良く暮らしてくれて、娘を二人産んでよかったなあと思います。
長女は施設の仕事をしていました。
次女は手が器用だったので、障害のある人の衣類を作ることの技術を身につけて、私からは何も言わなかったが二人ともそういった仕事を自分で選びました。
息子が娘達に大きな影響を与えたのではないかと思います。
社会の中でも障害のある人達に影響されて心の豊かさを持つ、という影響が有るのではないかと思います。
事件では被害者を匿名にしてもらって、いつまでも記号で扱われることは亡くなった人が存在しなかったような扱いになるのではないかと思って、善意ではあるが見方に依っては障害のある方はかわいそうで、良く思われない存在だと言う風な意識がどこかにあったのではないかと思ったりします。
亡くなった方がこんな人生を送って仲間と楽しく暮らしていて、だけどこの人達が命をうばわれたという、そういう意味での障害者の理解を進めるうえでも名前は出してほしいと思います。
月刊の会報「手をつなぐ」で写真とメッセージを200以上掲載、障害のある人達に興味が無かった人にも前向きに生きている人たちが沢山いると言うメッセージの出し方で、障害のある人達に関心を持ってもらいたかった、この人たちの人生が奪われていい人生だと思われますかと、そんな意味で理解してもらおうと写真を一杯出しました。
彼ら、彼女らの笑顔の持つ力は凄いと思いました。
息子が入所施設にいるので私も家族でもある訳で、障害のある人を中心にした、施設にしたいと言う思いが有り、担当者も自分の行動を反復しながら行動をしてもらいたいと思います。
この事件が起こったと言う事で塀を張りめぐらしたり警備体制を強化してほしくはないと思っています。
障害が有っても社会の中で生きてゆく人間なので、認め合って生きてゆく社会が成熟した社会だと思うので、障害者を隠してしまうと言うことは残念であるし、有ってはならないことだと思います。
この事件は心に傷をつけた大きな事件だったと思います。
障害のある人が社会の中で豊かに暮らしてゆくためにはもっと理解してもらうことが必要だと思っていますので、本人も自分で伝えられることは自分で伝えましょうと、この事件が有るからこそもっと歩みを進めて活動していきましょうと、情報を共有しながら前に進みましょうと、言いたいです。
障害者の事を伝えきれないものはあるが、一生懸命前向きに生きようとしている命の尊さ、存在の重要性とかに気付いていただきたい。
一人ひとりの持っている力の違いをみんなが出しあって、豊かに暮らしていけるようにしましょうと言う事なんだと思います。
共生の社会を作りましょうと、いうのが私の目指していきたいところだと思っています。