2016年11月28日月曜日

鈴木登紀子(料理研究家)   ・食べることは生きること

鈴木登紀子(料理研究家)   ・食べることは生きること
今年 11月14日に92歳の誕生日を迎えました。
「きょうの料理」や自宅の料理教室で季節を大切にした和食を教えています。
料理研究家としてTVに初めて出演したのは46歳の時、料理を教えるようなきっかけになったのは、鈴木さんの家庭料理がおいしいと近所に評判になったこと、いつしか自宅が教室になっていたそうです。
平成24年には第64回NHK放送文化賞を受賞、料理研究家としては3人目です。
家庭料理を通じて伝えたい和食の魅力、もてなしの心について伺います。

主人が91歳で逝ったので、私もと思っていましたが、今も生かされています。
「70年作り続けてきた私の味」 本を出版。
吉祥寺で現在教えています。
毎月、10日間料理教室を開いています。
教室は40年以上経つと思います。
札幌の方が一番遠くから来ます。
11月の献立、おせち料理、23品を半分ずつ2カ月に渡って行います。
おせちは日本の大事な行事で、今伝わっているもののおせちの節句、5大節句があって、元旦、3月3日の雛の節句、5月5日の端午の節句、7月7日の七夕の節句、9月9日の重陽の節句(菊の節句)、その中でも一番おせちは大きい行事だとおもいます。
季節を待ちわびて旬のものを頂くのは、日本の素晴らしい特徴の一つです。

菊見和え 菊の花が咲き乱れてきますが、南部八戸あたりは黄色い食用菊があり、山形あたりでは紫もある、自然のものなので体に優しい食べ物だと思います
お碗はすずき、蛇の目のしろうり、みょうが、青柚で香り付け、冷やし鉢は里芋、ニンジン、牛蒡、しろうり、干しシイタケ、エリンギ、いんげん、青柚、 アナゴの棒上げ(丸ごと揚げる)、箸休めはえのきだけ、 白滝のしぐれ煮、麦とろで御飯、いちじくのワイン蒸し。
カイセキは懐(懐石)と会う方(会席)と二つある、懐は禅から来ていて、禅を組んだ時に食べたり飲んだりできないので、お腹のむしがグーッとなるので、ちょっと虫を封じるために温かい石をおなかのところにあてたわけです、そしてその場を凌ぐ訳です、だから懐石料理は贅沢ではない。
会う方の会席は板前がここぞとばかりに御馳走を並べて大変な御馳走で全然違います。
家庭料理は煮込んでしまう様なイメージだが、綺麗にいくらでもできて味は変わりなくと言うのが私のモットーです。

子供のお母さんたちと知り合いになり、家に遊びに来た時に作って出したらおいしいと言う事になり、教えてほしいと言う事になり、それが料理教室の始まりです。
長女が小学校5年生の頃でした。
昔はよくお盆を使ったが、最近はお盆を知らない若い女性の方もいます。
飲みながら歩いている人もいますが、好きじゃないです。
NHKの料理番組「きょうの料理」の仕事を頂きましたが、46歳の時でした。
基本は家族の為、夫の為、暖かいご飯は食べたいと言っていましたので、蓋つきのどんぶりにご飯をいれて布巾に包んで炬燵にぶら下げていた。
私は青森県八戸で産まれました。
母は岩手県の生まれで、馬も泊まれる宿屋でした。
母の傍にいて酒の肴を作る姿を見ていたので、家事の学科は甲をいつもいただきました。
母からしつけもいろいろ学びました。
母からは何でも大事にしなさい、粗末にしてはいけない、丁寧にしなさい、静かにしなさいと良く言われていました。

第64回NHK放送文化賞をいただいた時には、母から「お前さまの分に過ぎる」と言われました。
丈にあったこと、どの様に身を処したらいいか、厳しかった。
おもてなし、母からはいつも相手を慮る(相手を立てる)、と言われました。
歯が丈夫だったことは、味見にも役に立ったと思います。(入れ歯とは味が違うようです)
子育てのころは、豆腐を売りに来る叔父さんが来たが、いつも買っていて、寄せ豆腐、昆布をしいて、しいたけあんをかけて、わさびをちょっと掛けて食べますが、又あれねと子供からは言われていました。(自分でいろいろ工夫をしました)

料理番組で、皿の持ち方、箸の持ち方、なっていないねといいました、先ず皿を持って、箸をもつ時には手先を動かして、口に運びやすい様にするとか、昔はだれでも知っていましたが。
先ず自分の国の大切なマナーを知って頂きたい。
食べることは生きること、精神、心、奥深いものがある。
相手を慮ると言うことは相手の健康も気使う、昔のいいことは伝えたい残しておきたいことはいっぱいあります。
優しい気持で暮らせたらいいんじゃないかと思います。
食べる事は生きること、生きるためには食べなくてはいけない、お腹が空いていると元気も出ないし思考力も鈍るので、自分にあった様な料理を食べ、食べすぎない。