菅原由美(全国訪問ボランティアナースの会「キャンナス」代表) ・ 看護師の力を在宅ケアに生かす
20年前、退職した看護士の力を活かして高齢者や障害者を在宅で看護する訪問ボランティアナースの会を神奈川県藤沢市で立ちあげました。
名前のキャンは英語で「出来る」、ナスは「ナース」を意味するNPOのボランティア団体です。
菅原さんは昭和51年東海大学医療技術短期大学看護学科を卒業し、看護士として1年勤務しましたが、結婚で退職しました。
その後出産や子育てで職場復帰が出来ませんでしたが、祖母、義母が入院した際、自宅に引き取り介護したところ、とても喜んでもらえた処から、退職した看護士が働きやすい環境を作り、復帰してくれれば在宅での看護、介護がもっと良くなるのではないかと考え、訪問ボランティアナースの会を始めました。
キャンナスは看護士に依る初めてのボランティアの為、当初保健所や看護士の団体から活動があまり理解されませんでしたが、次第に在宅医療を進める医師などから支持され、現在では全国で100か所を越えるキャンナスが活動しています。
全国のキャンナスは藤沢市にある本部とメーリングリストで結ばれ、東日本大震災ではこの呼びかけでおよそ1万5000人の看護士や介護関係者がボランティアに駆けつけました。
地域が好きなナースが自分達の地域を少しでも良くしたいと言う思いで、出来ることを出来る範囲でやっていきましょうと、20年前に始めた時には潜在看護士が100万人いると言われていて、声をかけてやってきました。
そして癌末期のかたたちのターミナルを病院ではなく、家で迎えることができるお手伝いをしたいと立ち上げたのが趣旨です。
介護する家族の方たちのお手伝いをしたいと言うのが、目的にあります。
家で死にたいと言っている家に泊りこんだりしたり、認知症の人の家に行って見まもりをして家族の方にゆっくり休んでもらったり色々なことをしています。
看護士の人が付いてくれていれば安心だと思っています、注射をするとか吸引をするとかの作業はほとんどしません。
強制的な関係は一切ありません。
メーリングリストを使って(フェースブックも)、お互いのことを連絡し合っています。
年会費もなければ、何にもないです、各地がそれぞれの拠点で独立採算でやっています。
有償ボランティアで、金額も全国まちまちで、800円~2000数百円/時 あると聞いていて、それぞれ自分の街に合わせて活動しています。
平成8年に立ち上げるが、前年に阪神大震災があり、それが大きなきっかけになりました。
行って見て自分が自惚れであることに気づきました。
ガールスカウトのリーダーをやっていて、日本赤十字社の救急法のインストラクターを持っていて、そして看護士というのは多分日本では私しかいない状況だったと思っていて、私が行かなければ誰が行くと言う思いで、行きました。
アムダで看護士の募集をしていると言う事で参加させていただきました。
私がこういう団体を立ち上げたいと言いましたら、絶対今の時代にマッチしているからおやりなさいと医師の方々から応援するからと言われました。
子育て期間にブランクが出来てしまう事で、医療から遠のいてしまった自分に自信が無くなってしまって、躊躇していた。
今こそ立ちあがって、地域の為に頑張りましょうと言いたいです。
結婚を機に病院を辞めて、主人の祖母の事で病院ともめて家につれて帰ることを選択して、母と一緒に在宅で看取りました。
今度は母が癌になり、わたし自身も家で看たいと言う気持ちがあったので、癌としてもう手遅れだったので連れて帰っていいよと医師から言われて、家で看ることが出来ました。
二人のケアをしていて、子育てもしていて、主人も脱サラをして自営業をしていて、介護も入ってきた。
祖母を介護している時に、二日に一遍徹夜をして、二日に一遍会社の仕事をして、祖母とどっちが先かというほど限界を感じて、全て自分の時間をカットして、息き抜きが出来ないことで、虐待こそしなかったが祖母とどっちが先かと言ってしまいました。
当時専門職集団によるボランティア団体は日本でアムダはあったようですが、非常に珍しいとの問い合わせがありました。
看護士は医師の指示の基に動くと言うのが大前提で、ボランティアで勝手に利用者の家に行って、利用者の顔を拭いても医師法に触れるので、免許のはく奪ですよと注意されました。
そんな理不尽なことがあるのかなと思い、行政にぶつけました。
看護の団体からも色々言われました。
災害があった時に、どこに看護士がいるのかという事も提案しましたが、それは行政がすることだとか、言われました。
今年、日本看護協会からヘルシーソサエティ賞をいただきましたが、夢の様な出来事だと思います。
介護の世界も色々変わらなくてはいけない時代を迎えたと思います。
山梨市立牧丘病院、古屋聡院長の言。
圧倒的な存在感、華やかなオーラ、並はずれた行動力に驚いて、そうだなあと思いましたが、4つ目におばさん型思考形式。
近所にいるおせっかいなおばさん、手も出す、口も出す、その典型だと言う様に思っています。
送りだすナースたちに言ったのは、何の指示、命令もありません、あなたがナースとして恥じない行動を取って来て下さいと、今回被災地に行くときはできることを精一杯やって来て下さい、自分で考えて行動してください、と言いました。
責任を与えて、自分で出来ることを精一杯と言う事だけで皆さんが良く働きました。
どこもトイレが汚くて、感染の危険性があるため、私達がどこへ行ってもトイレの掃除から始めました。
夜ずーっと泊ってたことが評価されました、夜一緒に泊ることで、大事さを知らされました。
昼は被災者も頑張っているが、夜になるとおいおい泣いている姿等、夜しか見えない光景を垣間見て、そばに座っているだけですが、寄り添えたことはよかったと思います。
「キャンナス」で東日本大震災で参加した人は延べ1万5000人の方が活動しました。
普段は地域の在宅ケア、家族を助けることがメインです。
介護保険が出来てからそれに頼るという事を皆さんが学んでしまった部分がありますが、私的な形には発展していかない。
これからは厚労省が言っている様に地域包括ケアになると思いますが、助け合いのある街が作られないと厳しいと思います。
自助、互助、共助、公助、と4つありますが、公助は非常に薄くなるのでみんなで助け合いながら、やってゆく、おせっかいの街を作らないと駄目だと思っていて、そういった講演もやっています。
今の若い子たちは気付いて20代、30代の人達がでてきています。
お金ではなく、心の豊かさを求めて、集まってくるんです。
霞が関、永田町の方々にお会いして必死に考えていると言う事を判るようになって、一番考えていないのが、国民、個人だと思っていて、個人が賢くならないといけないと思います。