2015年5月8日金曜日

秦 早穂子(映画評論家)     ・わが青春のカンヌ映画祭

秦 早穂子(映画評論家)        ・わが青春のカンヌ映画祭
秦さんは昭和6年東京生まれ 第二次世界大戦後フランス映画の輸入配給会社に入り27歳の若さでパリで映画を買い付ける仕事につきます。
最初に購入を決断したのはジャン=リュック・ゴダール監督の作品「勝手にしやがれ」でこれはのちにヌーヴェルヴァーグの代表作と言われるようになります。
「太陽がいっぱい」「危険な関係」等フランス映画の名作を輸入するが、その後映画評論家として活躍する様になります。
83歳の現在も精力的に新聞や雑誌に寄稿する秦さんに映画を見続けた半生、映画の魅力などを伺います。

カンヌ映画祭 今年で68回目  私は45回通った。
最初個人で行ったが、すごい大人の人たちの社校場でしっぽを巻いて帰ってきた。(27歳)
その後は買い付けで出かける様になる。
着物を着てゆくしかなかった、イブニングドレスと違って宝石を必要としなかったから。
今はスニーカーとジーパンの時代ですから全然違います。
世界3大映画祭の一つ ヴェネツィア(一番古い ムッソリーニの時代にできた) ベルリン 
フランスが対抗して自由主義国家として作ろうしたが、第二次世界大戦がはじまって、1946年から始まる。
1954年「地獄門」がグランプリになる。
その時にジャン・コクトーが審査委員長で、異質な美によるような(絵巻物)物は向こうにはなくて驚いたんだと思います。
「うなぎ」「楢山節考」「影武者」「砂の女」・・・「の森」

フランス映画を見たときにこんな国が有るんだなと思って、フランス映画を輸入する会社に入った。
「新外映」と言う会社のパリ支局 表向きは日本だが資本はフランス。
試写室で映画を見てリポートを書いて、日本に送る作業をする。
うちの会社では年間4本と決まっていて、1本3万ドルで一番中途半端で駄目なものだった。
絶対何か残るものを買おうと思っていた。
「勝手にしやがれ」 を選んだ理由は?
シナリオも何にもないんだけど、20分だけ取ってあるがみてくれないか、と言われた。
そういったものは普通見ないが、もしかしたら、という勘が働いてスタジオに行って見た。
感動したし、一言でいえば美しい映画だった。
真っ先に購入する事に決定したが、秋にでき上るということだったが、でき上る頃にはうちわでは物凄い評判になっていた。(1959年)
ジャン=リュック・ゴダール監督も主演のジャン=ポール・ベルモンドも日本では知られていなかった。

「勝手にしやがれ」のタイトルを変えてほしいとの要望が有ったが、兎に角それで行った。
これはのちにヌーベルバーグの代表作と言われるようになる。
次が「太陽がいっぱい」を購入する。
これらの演じた青年像はあの時代の中でアウトローであってなかなか社会に組み込められない怒りみたいなものが有って、這いあがりたいという気持ちはあったと思う。(飢えの感覚が残っている時代)
フランスの社会は女の人を認めない社会であり、それは凄く悔しかったけれど、ちゃらちゃらされるよりも良かった。
フランスは凄く保守的だった。
アラン・ドロンにインタビューしたことはあるが、人間は登ってゆくときは謙虚で、はっきりした意図があって、すがすがしかった。(俗なタイプの美男子)
ジャン=ポール・ベルモンドは型破りの自然のアウトローのような、インテリの様な不思議なタイプの男。
アラン・ドロンはイタリアの方に、さらにアメリカの方に行くが、自分は違うんだということを判っていた。

買いつけの仕事から離れるが、カンヌには45年間通う。
カンヌ祭に行けば映画だけではなくて、どれがいいかどうかというのが見れる場が有ると思った。
一番大切なのは、何時でもアマチュアの気持ち、新鮮な気持ちで謙虚に見るという事は絶対に出来ない。
カンヌでも最初は真剣に見るが、2週間、3週間も1日6本みているうちに肉体的にも嫌になってくることが有るがそれだけは避けようと思った。

思い出に残ることは?
「甘い生活」 フェデリコ・フェリーニ監督 「情事」ミケランジェロ・アントニオーニ監督 認められなくて、ブーイングされて、彼らでもこんなに苦しむんだなと思った。
「日曜はダメよ」 本作品の主演はメリナ・メルクーリジュールズ・ダッシン
71年、チャールズ・チャップリンが2度目に来るが、文化大臣のジャックデュアメルと一緒に来てステージで勲章をもらうが、ふっとそのあとにジャックデュアメルの杖を持って、くるっと後ろを向いて杖を振り回して、足で歩く恰好をするが、その時に私は彼の歩いている向こう側にチャップリンの歩いてきた道がずーっと続いているように見えて、本当に涙がでて、泣きましたね。(モダンタイムスのシーン 自由への道)

1963年「切腹」小林正樹監督 審査員特別賞受賞 ルキノ・ヴィスコンティ監督「山猫」がグランプリ
仲代達矢が主演
映画を見てきて思う事は?
精神が若々しくあるということ、寛容な精神になってくる。
世界はいろんな国が有るんだなと言う事が多少は判る。
映画は見続けると何か目が開けてくると思う。