山岡耕作(高知大学名誉教授) ・シーカヤックで探る黒潮の恵み
昭和24年 京都市生まれ 鹿児島大学水産学部、京都大学大学院で学び高知大学で教鞭を取りました。
魚類の生体学が専門ですが、カツオなど豊かな漁業資源をもたらし、日本人の生活や文化にも影響を与えている黒潮の研究拠点として高知大学大学院に黒潮研海洋科学研究所を創設しました。
2年前に高知大学を退職しましたが、NPO法人海遍路を組織して引き続き黒潮の研究をしています。
黒潮研究にシーカヤックが加わったことで研究が進み、これまでに黒潮の源流域の調査をはじめ、四国一周遍路、東北の漁村を訪ね歩き黒潮沿岸に住む人達の生活と意識調査を行っています。
黒潮 世界2大暖流の一つ もうひとつはメキシコ湾流。
北赤道海流がフィリピンに当たって、北、南の二つに分かれるが、北に上がってくるのが黒潮。
沖縄 西を通って、太平洋に出てきて、高知、静岡、千葉沖を通って、金華山沖で親潮と出会って、東に流れてカリフォルニアに至る大きな海流です。
黒潮は海の砂漠と言われる、暖たかいだけで栄養は無い。
栄養は例えば土佐湾では黒潮が土佐湾の深いところも動いているので、底には一杯栄養源が沈殿して溜まっていて、黒潮がかき混ぜて上に持ち上げてきて、栄養源が太陽と出会って、植物プランクトンが湧いてだんだん上に行く。
日本の自然文化は黒潮に依って成りたっている。
高知大学大学院に黒潮研海洋科学研究所を立ち上げる。
文理、医学を含めた分野を対象とした。
シーカヤック 手漕ぎの5mぐらいの長さのカヌーの一種。
7年前石垣島にいった時に、オーストラリアから単身でシーカヤックできた人がいると言う記事を見て眼からうろこで、高知に帰ってから、専門家(八幡 暁さん 海洋冒険家)にカヤックでフィリピン訪問したいが可能か聞いたら、だれでもできますと言う返事だった。
2010年 フィリピンルソン島あたりから始めるが、最初はうまく漕げなかった。
3回行ってルソン島の東北端サンターナ迄行く事が出来た。
シーカヤックで来たと言うと大変歓迎してくれて、漁師に話を聞くが3回とも90%のひとたちが今の状態で幸せだと即答する。
何が人生で大切ですかと聞くと、やはり90%の人が「家族」と答える。
収入は月収1000ペソ~2000ペソ(2000~3000円)
雨が良く降るので米がよく取れるので魚と米が有れば生きていける。
黒潮の沿岸を訪ね歩く事をするためにNPO法人海遍路を組織する。
日本の漁業も同じ視点で見てみたいと思った。
四国一周を3回に分けて行う。( 2011年高知、2012年徳島、香川 2013年愛媛)
日本の漁業は厳しいと思った、特に若い人がいない、小中学校が廃校なっているところが多い。
瀬戸内海、手島を訪問した時に、70歳ぐらいの漁師が「車、モーターボートなどで来たら口もきかないし相手にもしなかった、、苦労してカヤックできたから易しくしてやれた」とおっしゃってくれた。
カヤックは人と人との繋がりを作るにはいいと思う。
資金はいくつかの企業から応援してもらっている。
2014年 東北遍路する。
5月15日 名取市をでて30日に気仙沼の西舞根集落まで行った。
東北の海は豊かだなあと言うのが実感でした、皆さんは太平洋銀行と呼んでいた。
自然は牙をむくがその時は逃げればいいと或る人は言っていました。
子供達はあまりにも自然から離れ過ぎている、鹿児島県の或るところではPTAが危ないからという事で子供達を海に入れない。
子供のうちから危険を理解させ、それを防ぐための手段等を教えてゆく必要があると思う。
巨大防潮堤 賛否両論ある。
おかみのやる事なのでしょうがないと言う人もいれば、本当のリスクが判らなくなってしまうと言う事で反対と言う人たちがいる。
来年、相模湾でやりたいと思っている。
首都圏なので、そこの漁師さんがどういう考えをもっているのか、聞いてみたい。
今年は有明海を運航したい。
諫早湾 農業者と漁業者が対峙する、漁業者でも海面漁業と海苔業者の中で訴訟問題がある。
将来的に海の国として持続的にやってゆくためにはどういうふうに考えるべきか、いろいろ話を伺いたいと思っている。
筑後川の河口から20kmぐらいのところに大堰があるが、福岡に水を供給していて、栄養分がストップされてしまって、陸の土も供給が少なくなってきて、現場を見てみたいと思っている。
「Stay hungry, stay foolish」 スティーブ・ジョブズ が残した言葉ですが、世の中を大きく変える為には馬鹿であり続ける事が必要と思う。
海遍路は stay foolishだと思っている。
自然を、特に都会の人は意識していないと思う。
自然は幸せの種だと思う様になってきて、利用すれば大きく育ってくれるが、種を踏みつけて種をお金に変えてしまうとそれ以上は何にもない、と言う様に思います。
海遍路はほんの少しの力かもしれないが、海辺でつつましくではあるが、幸せな家族生活ができる様な社会を目指したいと思っています。
「不幸な国の幸福論」 加賀乙彦著
・・・経済は破綻し格差は拡大する一方、将来への希望をもつ事が難しい日本にあって、「幸せ」は遠のくばかりと感じている人は多い。
しかし、実は日本人は自ら不幸の種まきをし、幸福に背を向ける国民性を有しているのではないか。
挫折と逆境こそが「幸福」の要件である。・・・
都会に住む人々は無意識のうちに自然は牙をむかない、コントロールできるという深層心理に陥っていると思うが、寺田虎彦が言っている様に、「天災は忘れるころにやってくる。」
幸せとは何かと言う事は、判らないと言う事なんでしょうけれども、基本的には自然と言う物がかなり大きな部分を占めていると言う事は確かなことかなあと思っています。