松田卓也(神戸大学名誉教授) ・コンピューターと人間の未来
西暦2045年にコンピューターの能力が人類を越えると言う予測が有ります。
それによっておこるさまざまな問題を2045年問題と言います。
そんな未来の姿を描いたNHKスペシャル「ネクストワールド私たちの未来」ではコンピューターの進歩によって人間の平均寿命が100歳に達し、暮らしのあらゆる場面にコンピューターが関わり、人生の進路に至るまで、コンピューターが選択肢を示す社会が描かれ反響を呼びました。
神戸大学名誉教授松田さんは国立天文台客員教授や日本天文学会理事長などを歴任した宇宙物理学者で、1960年代から大型コンピューターを駆使した研究を行うなどコンピューターの最新事情に詳しく日本の2045年問題研究の第一人者です。
本当にそんな時代がやってくるのか、何が問題になるのか、伺いました。
①自分が大学に入ってコンピューターに触れた。
自分の研究は一貫してコンピューター使って宇宙のシュミレーション、ブラックホールが出来たり、銀河が渦まいたり、そういうことをコンピューターで計算すると言う事を生涯の仕事にして来た。
②SFに非常に興味をもっていて、ハードSFに特に興味をもっていた。
この二つが有る。
「2001年宇宙の旅」と言う映画が1968年に公開されたが、今見ても全く古くない。
アーサー・C・クラークと言う作家の作品を元にしている。
超知能と呼ぶが、超知能が出来ると人間を越える。
超知能は人間の能力をはるかに超える機能です。
一人の人間の能力は1Hと名付けるが、1Hができる頃は2029年だと言っている。(15年後)
10億人、100億人の人間と同じぐらいの知能をもつ様になるのが2045年と言われて、技術的特異点と呼ばれている。(レイ・カーツワイルの言)
レイ・カーツワイルと言う人はアメリカの発明家、未来学者で音声認識とかスキャナーとか発明してきた。
彼は特異点大学をナサの構内に作った。
人間の知能と同じ様なことを機械にさせるのが、人工知能です。
機械は端的には人間の筋肉の役割をするが、考えることを機械にさせようと言うのが人工知能。
グーグルの検索などは人工知能が働いている。
将棋 今回は人工知能は負けたが数年すれば、人間は負ける。
アメリカ「ワトソン」 クイズで人間のチャンピオンを打ち負かした。
IBMは「ワトソン」を医者の補助として利用する事を考えた。
医者は本、論文を読まないといけないが、忙しいので本を読む間が無い、ワトソンは100万冊を一遍に読むことは可能なので、或る患者を見た時に、どういう病気が何%かを判断する。
癌の時にどういう治療法がいいかを判断する。
未来の姿を描いたNHKスペシャル「ネクストワールド私たちの未来」ではコンピューターの進歩によって人間の平均寿命が100歳に達し、暮らしのあらゆる場面にコンピューターが関わり、人生の進路に至るまで、コンピューターが選択肢を示す社会が描かれ反響を呼びました。
すでに行われている事として、コンピューターの予測に従って、パトロールを行って検挙率が大幅にアップしたというアメリカの警察の取り組みが紹介された。
膨大なデータから傾向を読み取る、機械学習と言うが、現在の人工知能の流行です。
ムーアの法則 1年~2年で能力が2倍になる、と言う法則
集積回路のトランジスターの数が1年~2年で集積度が2倍になると言う事を1960年代に言った。
1980年代の終わりに使っていたスーパーコンピューターの能力は1ギガフロップス(10×9乗)、現在の最高のコンピューター「京」は10ペタフロップス (10×16乗) 10×7乗の差(1000万倍)
20数年で能力が1000万倍上がったと言う事です。
膨大なデータの中から人間には見えない様な傾向を探知するのが現在の人工知能です。
人間と人工知能の差は、特定目的では人間よりもはるかに勝るが、人間はそこそこあらゆる事に能力をもっている。
人間と同じような常識を持った機械を造る、これを汎用人工知能と呼ぶが、これが最大の目標。
2029年には出来ると言う。
良い点、人間がやりたくない仕事を代わりにやってくれる。
医学が進歩、自動運転にすると交通事故率が圧倒的に減る。
悪い点、運転手はいらなくなり、運転手は失業する可能性がある。
家事は極めて難しい、看護、介護でも同じでロボットにやってもらいたいか、そうは思わないと思う。(ロボットにやってほしくない仕事)
工場での仕事はロボット化が進むと思う。
アメリカのコールセンターでの研究では、顧客からかかってきた声を、話し方を人工知能に聞かせて、人格を判定する。
ナサではグループを構成するときに、人格を合わせないといけないと言う事でその研究をしたが、ソ連はそれを行わなかったために、宇宙船内で大げんかが起こってしまった。
知能型、感情型 二通りに分けるとすると、感情型に理詰めで対応してはいけない、先ずは謝る、そういう中で顧客のクレームが半分に減り、顧客満足度が倍になり、コールセンターの時間が半分になったので人が半分になった。
2015~2045年の間では、科学者、運動選手、芸術、感情的な仕事(看護士、家事、セールス等、)
石黒浩先生 デパートでロボットに実演販売させたら凄く売れたと言う。
人の場合はうっとうしいと言う感情が生まれることが有るので。
最後に人間に残るものは遊びです。
2045年以降は総カルチャーセンターになるのではと思う。
人工知能のニュース スティーヴン・ホーキング、 イーロン・マスク、 ビル・ゲイツがオープンレターを出したが、超知能の危険性を訴えた。
イーロン・マスクは今後5年以内にロボットは殺人を犯すだろうと言っている。(核兵器と同じように危険)
今ある危険は人工知能を悪用する事、機械ではなく人間が悪用する。
どう使うかが問題、だから問題は人間です。
今、超人類、超知能ができると言う事は人類が次の段階にステップアップしようとしている。
①機械超知能ができると言う考え方があって、それが人類を滅ぼしたり、支配したりする世界。
②人間が人工知能と一体となって、人間の知能を強化する、人間自身が超人類に成って行く世界。
2029年に人間と人工知能が一体となるという発想は、「攻殻機動隊」にすでに描かれている。
「ターミネーター」 意識を備えたコンピューターが未来人類を支配していて、現在に戻って来て、反乱軍の
リーダーの母親を、リーダーが生まれてこない様に殺してしまう。
「マトリックス」 人間の脳がコンピューターにつながれていて、人間が仮想現実の中、夢を見させられている。(シュミレーション仮説)
哲学者ニック・ボストロム 現実と仮想現実かは否定できないと言っている。
現実とは何か、それは電気信号に過ぎないと言っている。
2100年の世界では、巨大なスーパーコンピューターがあって、小惑星に死んだ人間の魂を皆そこへ持って行って、(バーチャル天国と呼ぶが) 魂、精神が残る、と言う様なこともあるのでは。
現在、アメリカの脳の研究に関しては、アメリカが100としたら日本は1ですね。
アメリカ政府は脳の研究に投じているのは100億円、ヨーロッパは2023年までに人間と同じ脳を再現しようとしているが、10年間で1600億円。
アメリカのある大手会社は年間数千億円を投じている。
日本は頑張って追いつかないといけない。
人型人工知能を開発すべきだと思っているが、出来た時に如何に善用するか、ここが難しい。
全員が平等に享受できる様なことが理想だと思います。