藤原道山 (尺八演奏家) ・尺八で尺八を超える
邦楽界の貴公子と呼ばれる藤原さんは、1972年東京都出身42歳、人間国宝の尺八演奏家山本邦山に師事し、東京芸術大学音楽学部を卒業、2001年にCDデビューしました。
これまでにCD14枚を発売してきたほか、尺八演奏の新しい可能性を求め、坂本龍一さんや、野村満斎さんを初め様々な分野のアーティストと共演を重ねてきました。
デビューから15年、更に新しい表現を目指す、藤原さんに伺いました。
「アメイジング・グレイス」 讃美歌として歌わている作品 祈りの曲
尺八も江戸時代に虚無僧が祈りを込めて吹いていたといわれる。
祈りをささげるような気持で演奏しています。
尺八の音色は様々なものであるにもかかわらず、荒々しいところがクローズアップされていて、多彩な音を知ってもらいたいと思って、それとは対極にある音を演奏して、見直してもらう事が出来るのでは無いかと、そんな思いでこういう音を使っている。
音楽は何でも好きで、リコーダーが特に好きで、吹いていた。
祖母や母が琴をやっていたので、小学校5年生の時に、琴よりも尺八の方がいいのではと勧められたのがきっかけです。
最初音が出なかったのが衝撃的だった。
悔しくてたまらなかった。
1週間ぐらいしたらようやく音らしきものが出て、非常に嬉しかった。
徐々に音が出てくる。
次に曲が吹けるようになって、なってきた。
最初は街のお師匠さんに習って、途中から山本邦山さんに習う様になった。
先生はほとんど細かいことをおっしゃらなくて、自分の演奏を見てとって生きなさいというタイプだった、丁寧に教えるのではなく、逆だったからよかったと思う。
舞台に声を掛けられて、自分にも勉強になり、別の集中力が加わっている様な気がして、一つの舞台は100回の練習に勝るといわれる。
東京芸術大学の邦学部に入る。
クラッシック、民族音楽などにも接して、仲間にも知り合えて取っても大きな財産になりました。
5つの穴しかない楽器 表に4つ、裏に1つ穴があいている。 非常にシンプルな楽器。
普通に演奏すると5つの音しか出ないが、洋楽の作品をやると5つだけではできないし、邦楽でもいろんな音を使っている。
いろんな技が有る。
①息 息の調整によって様々な音が出る。 澄んだ音から荒々しい音等。
②指 指孔 直径1cmの穴があるが、半分開けたり1/4開けたりして、部妙な音程を作ってゆく。
微妙に動かせば無限大の音ができるはず。 新しい尺八に慣れるには2~3年ぐらいかかる
③首 一番特徴的 縦に振ると音の高さが変わる。 首を上げると音が高くなる。
横に振るとビブラートがかかる。
3つの組み合わせで1音、1音作ってゆく。
ちょっとしたニュアンスの差が出てきてしまうので、或る意味自分の考えている事がダイレクトに出てくる楽器なので、恐い楽器であると同時に面白い楽器だと思う。
楽器をコントロールをすることが難しい。
自分の感情、思いと出てくる音が一致するようになるが、そこまで来るのに長い道のりです。
今出している音が全てなので、後で反省する事はあるかもしれないが、今の等身大の自分という意味ではそれが正解なんだと思います。
2001年にCDを初めて作って、毎回違うことをやりたいと思っている。
尺八を知らない人が多いため、今までと同じことをしていたら、注目してもらえないと思って。
13枚常に違ったアプローチで作ってきました。
「MINORI」の曲 ウイーンフィルコンサートマスターのフォルクハルト・シュトイデ(バイオリニスト)、から参加してほしいとの事でゲスト出演して、其時に新しく作ったのが「実のり」です。
五穀豊穣、の五と尺八の穴の数の五の音 五を掛けあわせた曲です。
坂本龍一、野村満斎氏等、違った分野の人と共演。
自分の体にないものを得ることができる楽しさ、喜びが有って、又リンクする部分が有って、新たな創作につながっていく事が往々にしてある。
舞台をやっていると役者さんのタイミング、凄い役者さんはこちらの音をしっかり聞いていて、私が吹いたテンションをそのまま役にぶつけられるというのを、自分が感じ取ってから出すのが怖くなってしまったことが有る。
今の自分がもっとも表現できるものは、自分で作ってゆく作品ではないかと思うようになって、すこしづつ作るようになった。
じっくり自分の心の中で醸成されたものが出てくる感じで作曲には時間がかかる。
東京芸術大学で後進への指導もしている。
自分としては凄く学んでいるなあと思う。
自分が一生懸命やっている姿を見せるのが、大事ではないかと思っている。
この15年間は出会いが有ったことだと思う、出会うことによっていろいろ自分の中になかったものを得ることができたことは非常に大きいことだと思う。
新しいことをやってゆく事の壁、伝統的なことを掘り下げてゆく掘る作業も大切だなあと思う。
壁があるからこそ次に行こうという気持ちが、常に思えるのではないかと言う気がする。
「手塚治虫のブッダ」ー赤い砂漠よ!美しくー の曲