2012年6月1日金曜日

川北良造(人間国宝・木工芸家) ・木の命を引き出す

川北良造(人間国宝・木工芸家) 木の命を引き出す
木材をろくろで回転させながら刃物でお椀やお盆等を削る「挽き物の技術」を学び平成6年
挽き物物作りとして初めて人間国宝に認定されました
木と向き合う事を無上の喜びとして作品作りに取り組んでいる川北さんに聞きました
石川県出身。(1934年9月1日 -) 木の挽き物の産地である山中町に生まれ、木工芸家である
父・川北浩一に師事
挽き物の技術者たちが山中の上流に良い木を求めて住んでいる  私で3代目 挽き物業に変えてきた
現在はモーターで削っているが、昔は動力源はロープを取りつけて交互に挽いてて回転させていた

母は蒔絵の仕事を希望していた 当時山中にデザインをならい木を習い2年間いたが、
父親の仕事が気になって仕方なく 矢張り木の仕事が自分にあっているのではないかと思った
姓名判断に親の仕事を継ぐのが良いとでていて母を説得して 父親の仕事を継ぐことになる
弟子入りの様な感じで7年近く修行をすることになる   職人では先ず数をこなすことが大事 
綺麗に 粗引きの仕事を1日500ぐらいこなす(お銚子の大きい物)事を職人さんが自慢していたので
早くやる様に目覚まし時計を持たされて秒針と競争する様に父親から言われ600、700 
と数をこなし1000個まで出来るようになった
父は口では何も言わなかった  一人前に成ってきて その日の一番旨く出来たものを上に
積んでおくと 一番上の物は見向きもしないで 中の物を抜き取って見ていた
出来が良くないと玄関先のコンクリートの上でポーンと それが親の指導でした
  
腹が立って来るよりも如何してそうなのかと其れを拾ってきてかんがえた 20歳前後の頃の話です
轆轤を挽くという難しさは? 特別難しいとは思わなかった 
親がいなくなった時に駒を引いていた(小学校の頃)
年輪の中心 芯があるので中心を外して作る訳ですが 、重心が違ってしまうので安定して廻らないので
中心がしっかりした木を見つけてきなさいと職人の人から言われて そうかと判った
慣れ親しんでいたので粗引きは容易にこなすことができた
山中の特色 細かい技術 加飾引きが40種類伝わっている   線すじ 、イナゴすじ 乱すじとか  
毛すじ   回転させながら如何してこんなものができるのかと思うようなものができる
川北さんは3mmの幅の中に20のすじを入れる  薄い刃物を自分で作って付けて行った 
1mmで8本のすじを付けるようになった

人間の手と言うものは凄いものができる 気持ちさえあれば 
引き物にあう木は  ケヤキ トチ ブナ みずな桜  大木 真っ直ぐな木が一番適切  
木が動く習性がある(乾燥しても乾燥度合 温度に反応する)
これらの木は一遍乾燥すると動かない    木の見極め ケヤキが一番大好き  
若木は使えない  ケヤキに2種類ある あおげやき やぶげやき と
あかげやき と  ほんけやき   前者はねばりけが有り たいへん丈夫で堅いがいつまでたっても
動きが収まらない 後者は素材として大変安定していて加工した後も狂いが生じない 
木の良しあしを判断する

善光寺に行ったときに1本だけ礎石にピタッと合っていないものがある 
たった1本だけやぶげやきが使われていた 1本だけ見落としが有ったのだなあと思った
生きている木も削れた木もちゃんとこういう木ですよと教えてくれる   
其れを人間が知ろうとするのか知らないか 良い木ですよと木は教えてくれる
常に木を見て木の動きを観察していて 収縮が少ないとか常に観察することにより 木の素状が判る
氷見晃堂先生にその後師事   全く動かない木もある   栃木県の神舟神社 
当時日本一という欅の木が伐採されて見に行った 大きすぎるぐらい大きかった
直径13尺5寸有った   根っこの部分を分けていただいて 粗引き 乾燥させて 仕上げてみたら 
今までケヤキをいろいろ手掛けたがこれは全く動かない
動くのが当たり前 年輪は粗いのだが仰天した  20年後にまた行ってみた 
 
そこは新たに木が植えてあって電信柱ぐらいの木になっていた
この場所 ケヤキに良い土壌  あたりの地形  ケヤキに一番適しているのだなあと思った
全世界に4万種あるそうだが 10%が日本に有り 国土に対して67% 木が生えている 
この様な国は日本一つしかない 
雪に恵まれていて 天は人間が必要とする全て木に与えて どんな分野のも使える木を我々に
与えてくれている
木の素状がどの方面にむくかは人間が探し出すことであって 木を扱っていると時々しじむ?(縮む)
までは簡単に言えない 天もちょっと言えない 神が存在しないと
こういうことは出来ないんじゃないかなあと時々思い当たることがありまして  
若い人達に時々言っているのですが 極北の地方とか 高原地帯にしらかんばが多くはえている  
極北の寒いところに人間がいる  何かの折に寒いところに行く  
 
暖をとりたい時に 凍りついて寒いところには中々暖をとるすべがない
しかししらかんばは皮がくるくると巻きつくように成っていてところどころめくりあがっていて刃が
無くても皮は剥がせられる    そしてマッチ一本で火を付けられる
どんなに寒い時でも少々雨が当っていようと付けられる  これは神の存在と云うものを思います  
どんなに寒いところでも人間は生きてゆけよと言う事で、自然はそういう事を与えてきてくれている
気持ちの中から畏敬の念が湧きあがってきて、その気持ちをずっと大切にしてきて 
作品を作って出していただければ木に対して少しは覚えることもできるという気持ちになるんです 
木に対して畏敬の念が自然と生じてきます  沢山の木が毎月でますけれどその木の素状を
知りたいです  
奈良の正倉院の器  本当に感動させられる  百万燈 5年8カ月で作った  
繊細で綺麗なものが当時如何して出来たのか 感動させられる
1000年以上昔の人達が良く出来たと思う  紙一重をおろそかにするなと言われた  
名品と言われるものは紙一重の素晴らしいデザインがなされている
現代の生活に即応した物に繋げてゆくというのが大事だと思う    
大自然が教えてくれる造形には人間はかないません
其れをどれだけ自分として会得出来るかは、その人その人の作品に表れてくるもので 
其れが一番大切だと思います

自然はいろんなものを直線以外は 膨大なものを自然は我々に見せてくれているんですけれども 
其れを真剣な目で見れるかどうかなんですけれども大概見過ごしてしまう
しかし自然はものの形デザイン 全部教えてくれる  其れにはつくづく感動します
自然破壊 環境悪化については→大聖寺川の上流 山の入り口にちっちゃな橋が掛っている  
雪解けで増水すると直ぐ橋が流されてしまう 
橋が掛っている場所の両岸にに4本のけやきを植えて 其れを橋脚にした  
礎石が流されることも無い 大きくなると益々頑丈になる  
200年以上たっているその雄姿を見ると感動する
その光景が大好きで良く見にゆく

私は何種類かの木しか知りません  しかし天が与えてくれた国土に木を扱わして頂ける仕事に
ついているのであれば もう遅まきですが 一本でも木の性質を知って
その木はどういうところに使われたい どういうところに使ってくださいと木は待っている  
其れをちゃんと読みとって生かさせてあげたいという気持ちが今大変強く今から若い人達にも話しています
木はどんな分野にもちゃんと天は用意しています  
もっともっと木の性質を知ってちゃんとそれを生かして
使っていけたらいいなあと思います