2012年6月2日土曜日

小川真(菌類学者74歳)       ・森林再生への道

小川真(菌類学者74歳) 森林再生への道
森林のノーベル賞ユフロ学術賞(国際林業機関連合学術賞)日本人で初めて受賞  
土の中の微生物の権威として知られている
日本中の森林で松枯れ ならがれ等樹木の衰退が進んでいます 
日本でけでなく世界の森林の再生に係わり力を入れています 
自ら、「白砂青松再生の会」を作り 衰退した海岸林を再生しようとしています 
その強い味方が木の根っこ につく菌根菌と炭であると言われます  
今森林で何が起きているのか 再生への道はあるのか聞きました
子供の時に戦争中だった 舞鶴 畑仕事をしたり きのこを採ったり 雑草を母親に教えて
もらったりしていた  自然観察をする機会が何時も有った

京都大学の農学部生物学科に入る 浜田稔先生 蘭と菌の共生について研究していた 
先生から菌とマツタケについてやってみたらどうかと言われてこの道に入った 
菌根の研究  菌の根につく菌について研究する  
植物学、土の勉強 きのこ 等を勉強するようになった
菌類と植物が共生関係になるのが4億5000万年ぐらい前  シュルル紀 痩せた土の中で生きて
行こうとした時に助けたのがカビだった
カビが根について水だとか 栄養を吸収とするのを助けた 
 そのかびが助けたおかげで痩せた何もないところに植物が上陸することができた(化石に残っている)
きのこと樹木が仲良くなる時期がある 
1億5000万年前  松の仲間 楢の仲間が増えてくると
根の先をきのこの菌糸が包んで根を守って土の中に広がって
水だとか栄養を吸収するのを助けた きのこも菌根菌 カビときのこの仲間とがある  
きのこは大きな繁殖期間がある そして胞子を出して拡げる

菌類は他から栄養を貰って生きてゆく  寄生=他の者に取りついて生きてゆく  
腐生=腐った物に取りついて分解して生きる
共生=生きたものから直接栄養を貰って生きてゆく   3種類がある
植物は光合成によって糖類や炭水化物を根に送って 根から菌類はもらう 
土の中から水だとか水に溶けた栄養分を植物に送っている お互いに助け合っている
植物の90%はきのこだとか、かびを付けていて共生で生きている
農林省 土壌微生物研究室長を経て きのこ課長になって きのこ博士と言われる様になる
松林が当時は綺麗だったが段々と松が枯れてゆく マツタケが出なくなる  
何故だという事になり枯れる原因を調べ始めた

虫がついて枯らすというのが定説なのですが そのもっと前の原因を調べようとした 
虫を誘うような原因があるのではないかと言うのを調べ始めた
松枯れ なら枯れ 1900年代初めから起き始めた マダラカミキリが枝を噛んで身体に付けて
いる松の材線虫を松に産みつけて松の材線虫が繁殖して枯れてしまう
長年対策をやって来たのですが治りません  最近もう一つは虫がつかないのに木が衰弱してきて
枯れてしまう これが多くなってきている
衰弱して花が沢山咲いて松カサをたくさんつけて段々葉の色も悪くなって、枯れてゆく(衰弱死)  
2通りの枯れ方がある
どうも環境条件が悪くなっているのではないかと言われている 
 
もう一つは杉の事  杉の枯れ方を調べた 郊外に行くほど綺麗な杉が残っている
リング状になっている 大気汚染が原因らしいと思った 
大気汚染と汚染物質が土に落ちて土が痛んでくる  そうすると木が弱ってくる
弱ってくると花をたくさんつける  これは大変だと子孫を作ろうとする 木は悲鳴をあげている  
最近は色んな樹木が花を咲かせようとしている
日本だけの問題ではない ヨーロッパでも汚染が早く始まって木が枯れる現象が起きて 枯れる木は
枯れてしまい一段落しているようだ
いまひどいのはアラスカ モンゴルでも唐松が枯れてきている  文明が発展すると木が枯れるようだ    
熱帯雨林は伐採で減少が激しい
アラスカでは温暖化で乾燥して火災が多く発生している  もえるのも相当なもの   
世界の森林では 燃える 枯れる 切られる の3重苦でやられている

人間の文明と称しているものの結果 だという風に私は思っている  温暖化も人間の文明の影響
地球は大きいように見えても閉鎖系なので どこかを無理に動かすと次々に連鎖反応を起こして
変になってゆくという現象ですね
本来 木と言うものは二酸化炭素を酸素に変えてくれて 生物が生きてゆくうえで 
良い環境を作ってくれている訳ですね
木が減ってゆくと生き物が生きにくい地球になるわけですね  
地球と言うのは 物凄く大きな実験をやっている様な処があるんですね  
45億年前に生れて来てからずっと変遷してきた
木が無かった時代があり 石炭を掘り ガス、石油を掘ってきた
  
それらは生物の遺体ですから  石炭は植物 何億年もかかって出来たが 我々はあっという間に
掘り起して使ってしまった   かつて地球は二酸化炭素を固めて(石炭)埋めてしまった   
其れを人間が掘り出して燃やして二酸化炭素を排出している
今であったら 腐って無くなってしまったが、何故固まったか  これは私の仮説ですが 
地球にきのこがいなかったから、腐らせるきのこがいなかったからだと思っている
きのこには落ち葉を腐らせたり、木材を腐らせたり 腐成性きのこというものがある ものを腐らせる
そのきのこでないと木材を腐らせることができないんです   
かなり遅くなってきのこは地球上に出てきた  
腐った木を放っておくと二酸化炭素が出てきて二酸化炭素が増える   
大変な種類の生物が繁栄して循環系を形造るようになってきた

其れが最初から旨く行っていたのではない  危機的な状況を何とかしようとして、一生懸命に
成っているのが菌根菌ですね
木を植える時に菌根菌を使うと根が付きやすくて非常に成長が良くなってくる   
胞子を水に研いだものを苗の根に蒔いてやる そうすると根の先に菌糸がからみついて土の中に
広がる  吸収面積が増える
根が増えたのと同じような状態になるので 上がしっかり育ってくる    
色んな木で実験したが 松、ラワン、ユーカリでも1~2年で3倍の大きさになる
菌を付けると根の量がうんと増える  荒れ地に植える 今やっているのは中国のこうどう高原です  
オーストラリアの内陸の半砂漠地帯 とか非常に条件の厳しいところに植える
日本だと海岸の砂 砂丘だとか  そういうところだときのこの助っ人がいないと旨く行かない
世界中に指導に行っている 東南アジアからいろいろ  あちこちで研究する人も増えている

炭は面白い  植物が育つ時に何があったか(大昔の話)  植物が育って無くなる時には燃えるか 
腐るかです  燃えた時に消し炭ができる  其れに根がついてゆく 落ち葉にも付く
雨の前に火をつけて(燃え尽きると灰になってしまうので)雨で消し炭ができる 
その中に一番最初に入ってくるのが空中窒素固定菌というバクテリア(細菌)
空中に有る窒素を自分で固定して蓄える  炭は一杯細かな穴があいている
水を沢山吸いこむし 空気も持っている 窒素も有るし、植物の根も寄ってくる  
根がからみついてくる  菌根菌 根粒菌も炭が好きでそこに逃げ込んで来る
根が来る 菌がいる ドッキングしてより効率が高まる 非常に面白い現象 余り研究をやっていない 
炭と特定な微生物と言うのは非常に面白い   松の苗にしょうろを付ける時に炭が実によく効く  
しょうろも減っている

きのこは採れなくなってきている  汚染物質が土に溜まってくると菌もやられてくる  
少しずつ減ってきている  菌根をつくる菌が減っているのも衰弱の原因らしい
外国で木を植える活動をやっていた  やってみたら日本でもいろいろ問題があることに気が付いた  
もう一度日本でもやり直そうと言うので
海岸の松林が消えて来たので 何とか再生しようと思った  
日本海側は残っていたがここ10数年でどんどん枯れてきて昔綺麗であった処が枯れてきてしまった
出来るだけ早くやっておかなと行けないと思って取り組み始めた  
13府県ぐらいになる ボランティア団体と通じて苗作りから始まっている
宮崎海岸のひとつば海岸 九州にしの松原 天橋立 大規模に再生活動をやっている   
今の松林を大掃除して 落ち葉取り(痩せさせないため)する

松の仲間は違う 荒れ地、崖等に生えてくる 菌根菌も痩せたところが好き  
草が生えて灌木が繁ると松は消えてゆく(松が譲ってしまう)
初期の状態に止めてやることが大事(栄養の少ない状態にしてやる)  
陸前高田は7万本 あったが全滅してしまった       
江戸時代から戦前の松の木は 落ち葉拾いをしていた時代なので 根がしっかり下にむかうので
津波では枝、幹がやられて、若い木は根こそぎにたおれてしまった 
根が横に広がり(落ち葉拾いが無くなり水、栄養が地表近くに上がってしまい)
簡単に根こそぎにやられてしまう
最近になってようやく林野庁も掃除をする様にとの見解になってきた
ニセアカシアというものを植えたのもいけなかった マメ科の植物なのでよく育つと言われて一緒に
植えたが 却って窒素がたまりすぎて良くなかった

菌根菌と炭で森の再生に取り組んでいるが森の衰退を止められるか → 無理でしょう  
やれる面積などわずかなものであるし 痛んでいる処を再生するには
国家的なプロジェクトでやって貰わないと動きが取れない  
ボランティア活動では限界があると言っているが皆一生懸命にやりたいと言っている
世界中の荒れた処を見ると絶望的になる  人間が原因と言うのは明らか  有り難さを忘れてしまった 
現在あるところは可能な限りに守ろうと
修復できるところは修復しようと  森林に手を加えるとか木を植えると言うのは何のために
やるかですよね
木の為にやるのではないんですよね  我々人間の為にやる  
目的意識をはっきりさせて、意志統一してやれば少しずつでも前に動くのではないかと思う

我々生活そのものを見直すことを本気で考えないといけないんじゃないのかな  
エネルギー問題、環境問題 等みんな繋がってますのでね

地球の生物と言うのは人間がいなかったら平和なんですね 
6回絶滅の危機が有ったが地殻の変動とか 大陸移動があり気候が変動して起こっている
今度絶滅の危機があるとすると人間のせいになる  
地球上に現れた生物の中でこれくらいすさまじい破壊をやっているのはないですね
自分達の欲望を抑えて小さなことでも満足出来ると生活の規模を縮小してゆくよりしょうが無いでしょうね  
生き残ろうと思えば