2026年3月23日月曜日

頭木弘樹(文学紹介者)           ・絶望名言 「孤独」

頭木弘樹(文学紹介者)           ・絶望名言 「孤独」

今回は、井伏鱒二色川武大、哲学者ニーチェの言葉などを取り上げて紹介してきます。

「あぁ、寒いほど一人ぼっちだ。」  井伏鱒二

僕(頭木)は、20歳で難病になって13年間病院にいたわけですけども、13年間の間にほとんど孤独になってました。 ベッドの上で、自分はどんどん知り合いが減っていて、親も亡くなって、本当に一人ぼっちの孤独な病人なってしまうかなぁと怖かったです。 そういう時に出会ったのが最初に紹介した言葉です。     「あぁ寒いほど一人ぼっちだ。」 井伏鱒二(山椒魚と言う短編小説の一節)

代表作に「ジョン万次郎漂流記」、「黒い雨」などがあります。「山椒魚」も有名な作品です。 山椒魚が岩屋の中で一人ぼっちで外で水すましやカエルが、自由に動き回っているのを見て、辛くなって目をつぶり、その暗闇の中で言うセリフです。

「僕は生まれながらに孤独のたちなんだが、決してその孤独を愛することはできないんだ。」 牧野信一 (「露路の友」と言う小説の1節)

牧野信一の代表作には、「父を売る子」、「ゼーロン」、「吊籠と月光」などがあります。 人と一緒に居たくないのに、1人だと寂しいと言うことになると困ります。 

「神は人間に孤独を与えた。しかも同時に、人間に孤独ではいられない性質をも与えた。」 佐藤春夫 (退屈読本と言うエッセイの一節)

佐藤春夫の代表作には、「田園の憂鬱」、「西班牙犬の家」などがあります。 佐藤春夫は群衆は地獄であると書いていて、でも同時に孤独はまさに煉獄であると書いてます。

「どこかで、ラジオの合唱だとか、子供の声だとかが聞こえると、不意に鼻孔の奥に嗚咽が溜まって、自分でびっくりしたことがあります。 孤独と言うものは結構いろんなものにすり替えて過ごしていて、普段はそれほど感じないですが、身体の奥にじんわり溜まってるんですね。」色川武大(「私の旧約聖書」と言う本の中の孤独と言う文章の中の一節)

広川武大の代表作には、「狂人日記」「百}などがあります。孤独と言うのは貯まるもんだと思います。

「孤独は山になく街にある。 1人の人間にあるのではなく、大勢の人間の間にあるのである。」 三木清(人生論ノートの一節)

孤独の分類っていうのは4つのタイプがあって、Aは人と一緒にいれば孤独を感じないで済むけれども、ひとりでいると寂しい。 Bは周りにたくさん人がいても、心が通じ合わない。 Cは人と人とはそもそも本当にわかりあえない。 表面的には付き合えても、本質的には孤独なんだというより深い孤独です。 Dは人と人とは本当にわかり合えないんだけれども、だからこそ少しでも理解し合おうとすると言うふうに考える。

「孤独は良いものです。 落ち着いて自分らしく生きることができて、やるべきことがはっきりしているなら。」ゲーテ (ゲーテの手紙の一節)

「君は自分だけが一人ぼっちだと思うかもしれないが、僕も一人ぼっちですよ。 一人ぼっちは崇高なものです。」夏目漱石 「野分」と言う小説の中の登場人物の言葉) 代表作には「吾輩は猫である」「坊ちゃん」「三四郎」「心」などがあります。

哲学者のショーペンハウアーもこういうことを言ってます。

「孤独は、幸福と平静な気持ちとの源泉であるから、孤独に耐える修行をすることを若い頃の主要な研究題目の1つとすべきだろう。」 ショーペンハウアーは19世紀に活躍したドイツの哲学者。 代表作には、「意志と表象としての世界」「読書について」「自殺について」などがあります。

「孤独であるときに、その孤独の中に持ち込んだものは成長する。だから、内なる獣も成長する。だから、多くのものに孤独を進めてはならない。」ニーチェ   代表作に「善悪の彼岸」「道徳の系譜」等があります。内なる獣とは例えば憤りとか恨みとか。 社会全体を敵と思えてしまうことがある。

「人気のない住まいで暮らすのが、僕にはとても好ましい。 かといって、全く人気がないのも良くない。 住んでいた人たちの思い出が詰まっていて、しかもこれからの生活のために準備されている。 そんな住まいが良い。 ただし、住民が実際に現れてはいけない。」  カフカ 代表作に「変身」「審判」「城」などがあります。 

「孤独は僕の唯一の目標であり、僕は最も心惹かれるものであり、僕に可能性をもたらしてくれるものだ。 にもかかわらず、これほど愛しているものを、僕は恐れている。」  カフカ  孤独を愛しながら孤独を恐れている。ではどうしたらいいのかその答えが今回の答えです。 人気のないところで暮らしたいかといって全く人気がないのも良くない。 面白いですね。但し、住人が実際に現れてはいけない。

突き詰めるとすべての人が孤独なのかもしれないですね。 理解し合えないと言う事は一人一人が違っていると言うことで、それは悲しいことではありますけれども、一人一人が違うと言う事は尊いことでもあります。

人との関係が孤独であったとしても、自然を愛して深く見つめる人が孤独をあまり感じないで済むという面もあるかなと思います。

「地球の美しさと神秘を感じ取れる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれる事は決してないでしょう。」 レイチェル・カーソン