穂村弘(歌人) ・〔ほむほむのふむふむ〕
去年はたくさん本を出版して、最後に出たのが「たこ足ノート」と言う本です。
*「大晦日しぼりにしぼったチューブから出掛けた歯磨き粉が引っ込んだ」 穂村弘 昔は今より新年の特別感があったような気がして、新しい歯磨き粉、下着などをおろす。 新年におろしたいがもう中身がないような。
*「裏表ばらばらのまま片付けたトランプ眠れ雪の大晦日」 穂村弘 親戚が来たりして遊んで夜更かしをしてもいいような大晦日、裏表ばらばらのまま片付けたトランプのような感じがあって、時間が進んでゆく。
「ほむほむと短歌を楽しもう その後」から「乗り物」と言うテーマでの作品
*「バス旅行酔って戻して青ざめた顔してたてる集合写真」 白井義彦 バス旅行で酔って、マイナスの思い出ではあるが思い出です。
*「パンクした自転車を曳く夜の道野犬が囲みジュースまき去る」 白井義彦
*「パトカーのお腹にポリスと書いてありポリスっぽくない人が出てくる」 海老沼祐 日本のお巡りさん、ポリスと言うような風貌ではない違和感がある。
*「救急のシートに乗って運ばれる重いと漏らす隊員の声」 ズボラノサウルス 緊迫した事態とのズレがユニークな感じがします。
*「牛乳を配る武骨な自転車をセーラー服で配るマドンナ」 石井秀行 本人に似合わぬごつい自転車でしている、それに憧れる私がこっそり見ている。
*「自転車であなたのあとをついてゆくさらさら秋の暖かい風」 高橋聖子 二人の自転車での距離に独特の情感があるが、「あなたのあと」、「秋の暖か」の「あ」が連続で出てきて、暖かさに繋がっているような、響きの面でも工夫があると思います。
*「観覧車冬の夕陽に照らされる茜にほてり廻り続ける」 水野正弘 観覧車の夕陽の歌は意外とめずらしい。 回るという事が宇宙、地球、大きなものと関係しているのかもしれない。
*「日米の少年野球のバスが来て米軍基地へと入って行った」 長嶋末信 異文化の 外国がフェンスの向こう側にある。 少年野球で特別に入れる。
*「幼き日北海道に住みたりて連絡船の船底に乗る」 金田君子 船底に乗るというところが凄くリアルですね。
*「ゴンドラの一つに君が落書きをしてからずっと探しています」 春野咲子 観覧車のことですかね。 心の中のゴンドラか比喩的な感じがします。
*「運転手バスから降りて大分待つ段々うつつの気配をおびて」 晃希星 運転手がなかなか戻ってこないと、変な感じになって来る。 現実にもどって来れない何かが起きているのか。 もやもやした時空間がある。
*「長すぎるトレーラーの切り返し待っていた時一度地球が終わったような」 晃希星 不思議な待ち時間、その時こそ時間を意識します。 主観的な時間は物凄く伸び縮みする。
リスナーの作品
*「耳たぶに冬の近づく感じしてやや足早に歩くゴミだし」 ノーネーム ゴミ出しは寒さの防御が少ない。 とりわけ耳たぶで寒さを感じる。
*「冷凍庫に肉肉肉が詰めてある緊急入院後の兄の部屋」 ミズポッポ ちょっとぎょっとしたんだと思います。 自分が好きなように生きて行くと偏って行きますね。 その感じがリアルの現れている。
*「亡き友の名前見つける映画館エンドロールの数大きなり」 小笠原純一 エンドロールに人名が並んでいて、映画製作に関わった多くの無数の名前のなかに友達の名前があった。
*印は かな、漢字又人名なども違っている可能性があります。