2020年11月29日日曜日

大宅邦子(元客室乗務員)        ・定年まで飛び続けた3万750時間

 大宅邦子(元客室乗務員)        ・定年まで飛び続けた3万750時間

早くから優れた仕事ぶりが評価され国際線就航後はファーストクラスのチーフパーサーとして8000人を数える同僚や後輩キャビンアテンダントのあこがれと尊敬を集めてきました。   3万750時間に及ぶ飛行時間を無事に終えてラストフライトから帰ってオフィスには200人を超える同僚や後輩たちが大宅さんを迎えました。  感謝の涙と思い出話が尽きなかったといいます。  45年のキャビンアテンダントの人生にどんなことがあったのか伺いました。

小学生の頃毎週日曜日に「兼高薫 世界の旅」という番組を見ていました。  各地の人、景色、食べ物とかを見て日本とは違うところにはこんな世界があるんだと思って、何時かそういうところに行けるような仕事がしたいと思っていました。

親族が学校の先生が多かったので、学校の先生になる大学に入りました。  外国へのあこがれがあり大学2年の夏休みにヨーロッパへ一ヵ月旅行して20か国回って、やっぱり学校の先生ではなくて海外と関係のある仕事がしたいと思いました.。  秋口にANAの客室乗務員の試験があるという事を知って応募して受け、合格してANAに入社しました。

入社10か月で寿退社する人もいました。 当時客室乗務員の定年退職は30歳でした。

28,9歳の時に、ボーイング767型機 270名ぐらい乗れる新型機を就航するにあたって、知識を代表者がアメリカに行って一般に広めるという仕事があって、行ってみないかと言われました。

定年が37歳、45歳、1985年男女機会均等法ができて60歳になりました。

国際便で最初からチーフパーサーで、自然とファーストクラスを担当するようになりました。

シャンパンをお客さんの前で開けて噴出して、その前のお客さんの背中にいっぱいかけてしまったというような失敗もあり、失敗も結構ありました。

クレームを頂戴してもチャンスになることもあるという事を後輩に話していまして、後輩では手の負えなかったことがあり、クレームを言ってきた人にお茶を出して、飲んでいただいて後輩からもらったクレームについて伺いました。    クレームに対する反省会をして、みんなと共有して自分たちのサービス向上についてきちんと考えますと言って、こちらからの思いも伝えて収まったこともあります。

機内はティーバッグですが、ティーバッグでもおいしいお茶を出したいと考えていて、或るお客さんは食事はいいという事だったので、私がお茶を入れて持っていってもらったところ、大変喜んで、私を呼んでほしいと言われて、伺ったところ、「こういうお茶を飛行機の中でいただいたのは初めてで、食事は同じものでいただかなかったが、この茶いっぱいをいだいたお陰で、ここに乗った価値がありました」と言ってくださって、嬉しかったのと、お茶いっぱいでもおろそかにしてはいけないと思いました。

まず水を紙コップに1/5入れて、ティーバッグを入れて十二分にスプーンで押し出すと、緑色の濃い液体ができるが、それは甘さしか出ていないが、そこにお湯を足して撹拌すると、先に甘味があり苦さが加わっておいしいお茶ができます。

肉もオーブンで焼いて出しますが、焼き方も研究してほぼお客様のお好みの焼き加減をできるようになりました。

「いつも次に使う人のことを考える。」  ギャレー(船潜水艦列車飛行機内で食べ物調理や準備をする場所)はいろんな人が使うので、ちょっとしたことで綺麗になるので、オーブン、電子レンジの隅々まで濡れフキン、乾いたフキンでピカピカにして引き継ぐようにしました。

「素敵を見つけて言葉にする」  自分が眼にしたものが素敵だと発見したら伝えるようにしています。 (お客様、客室乗務員問わず) 

「欲しいものではなく、必要なものを買う」  CAにとっては海外に行くことが日常なので、欲しいと言って買い物をしていると家中ゴミだらけになってしまう事もありますから、必要なときに、必要なものを買うという事を習慣付けないと無駄が多い生活になるのではないかなと思って伝えます。

「経験はかさばらない」  私自身美術館で絵を見るのは好きなのでよく美術館に出掛けました。   心が豊かになった思い出があったので、経験をたくさん買って来ましょうね、という事です。  土産話にもなります。

「好奇心の翼を広げなさい」  兼高薫さんにお会いしたことがあり、80歳を過ぎても目が輝いて素敵な人でした。   アッツ島を通過するかどうか聞いてきて、今日は通らないと伝えたたら、アッツ島の方向を遠くをご覧になって物思いにふけっていて、13,4時間ずーっと窓から見ていて、まだ行ってみたいところがあるんだろうなあと思いました。 兼高さんよりはまだ若いのであちこちいろんなものを見て歩きたいと思ました。

60歳まで勤められるようになって、60歳で辞めたらいろんなところに旅行できるようになるのでやめようかなと思ったが、母から「元気なんでしょう」と言われて、雇用延長もあり、65歳まで勤めることになりました。  

2018年11月20日 ラストフライ ロンドンからの便でした。  いつも通りにしました。

飛行機に「ありがとうございました」と一礼して後にしました。  オフィスに着いたら、200人ぐらい人がいました。  退職したCAとかの方とか吃驚するほどの人達でした。  後輩たちがメッセージカードをアルバムにしてくれたものの厚さが5,6cmぐらいのものが7冊ぐらいありました。

飛行時間は3万750時間29分です。