2020年11月18日水曜日

山本昌邦(NHKサッカー解説者)     ・【スポーツ明日への伝言】いま、スポーツが果たす役割とは

 山本昌邦(NHKサッカー解説者)     ・【スポーツ明日への伝言】いま、スポーツが果たす役割とは

日本代表のコーチ、監督として特に若い手選手の育成指導に手腕を発揮してこられました。  1996年のアトランタオリンピックで強豪ブラジルに勝ったマイアミの奇跡、2002年日韓ワールドカップではトルシエ監督を支えながらともにコーチとして戦い、2004年のアテネオリンピックでは 日本代表の監督を務めました。  新型コロナウイルスの下、今スポーツが果たす役割とは何か、今指導者に求められるのは何かなどを伺いました。

指導者になると声が通る声になったと思います。   

今は出番がなくて、いずれスポーツは皆の力になれるときが来るというのを待ちながら準備をしているところで、スポーツの良さは人と人が繋がってゆくという事だと思います。

スポーツはクラブとかコミュニティーみたいなものが作られて、コミュニティーが強化されて子供たちの安全、安心にもつながってゆくんだろうなあと思いました。

私は小学校5年生のころにサッカーをやり始めました。  最初フォワード、高校生はディフェンスをやったりしましたが、中盤はやっていなかったです。  中盤は俯瞰してみることが必要です。   負けないためにはゴール前の守備がすごく重要です。

メキシコオリンピックの銅メダルを取った時代からサッカーがブームになっていきました。

1977年のワールドユースの大会の第一回が私たちの年代で、それを目指そうとキャンプも7回ぐらいやりました。  推薦していただいて最大の転換点だったと思います。

大学を出て地元のヤマハ発動機に入社してサッカーを続けることになります。  午前中仕事をして午後から練習をしました。

選手をやっていると、トレーニング、食事などいろいろ疑問点が出てきて、指導者の勉強をしたほうがいいのではないかと思いました。  

25歳から指導者の勉強に参加するようになりました。  1992年からジュビロ磐田を離れて2004年のアテネオリンピックまで日本サッカー協会の仕事を中心にしてきました。

20歳以下のユースのコーチをやらないかと言われてやることになり、準決勝で韓国にやられて世界には出れなくて、その2年後にそのチームがアトランタオリンピックに行くチームになります。

世界のレベルがどういうレベルか分らないらないという事で、川渕三郎さんからいって来いと言われて観てきましたが、こんなに力強くてとんでもない差があることを意識しました。

スピード、身体の動き、ボールにまつわるスピードが全く違って、フィジカル的なスピード、強さも違う、思考の判断のスピードが違うと思いました。  10%スピードを上げるように言い続けました。

1995年ワールドユースに初めて進出するんですが、その時にわたしがコーチで、その時のメンバーが松田直樹(亡くなってしまった)、中田英寿などがいました。

1995年ワールドユースの予選でのカタールでは、時差もあり、気温、湿度も違う、ピッチの芝の質も違う、食事、文化も違う中で、うまいだけでは駄目で、逞しい選手が重要なんだと思いました。  段々コックさんも連れてゆくとか、いろんなサポート体制が改善されました。   

暑さ対策は身体を冷やす、水分補給のタイミングは徹底的に選手に指導しました。 汗腺を出しやすいようにするために1か月前にいったん行って、体を慣らすというような事をしました。

先輩仲間などからすべて学ばしてもらったと思います。  高校1年生の時に監督から大学のトップチームのキャンプに参加できるようにしてあるから一人で行ってもいと言われました。   行ってくると高校3年生が弱く見えるんです。  できないような経験をやった事が自分の成長につながったと思います。  背延びしないと届かない世界を高校3年間学ばせてもらいました。

やらされているという事は苦しくてつらいことになるので、気付かせるためにはどういうことが大事なんだろうという事で、いい質問、いいヒント、見守ることが指導者としてすごく大事だという事があとあと気付いていきました。

指導者は伝える事ではなくて伝わったことの中身にこだわってゆくことが一流の監督だと、あとあと気付きました。

サッカー以外のことも全て理解できないと一流選手にはなっていかないんだなというのは沢山の代表選手を観てきましたが、技術だけではなくて、コミュニケーション、戦術の勉強、勝利のために自分の持っている能力を最大限に出せるという選手たちが代表に辿りついたんだという事は本当に思います。

データは選手に発信機がついていて全部管理されていますが、メンタルな部分、感情のマネージメント、どう束ねて一体化させるかというのがリーダー、監督、指導者に求められていることなんだろうと思います。  目に見えないようなマネージメントをどうするかが最後の頂点に行けるかどうかがチームの力の差なんだろうと思います。

東京オリンピックでは新しく若い選手が出てきているので、期待があります。   

スポーツで学ぶことは人生そのものだと思います。  人の幸せ、惨めな思い、喜び、失望感、こういうことを学ぶのがスポーツのすばらしさだと思うので、勝つことが大切ではなくて、あきらめないことが大切なんだ、勝ちたいと思うことが大切なんだ、大切なのは挑戦し続けることだと常に若い選手に言い続けてきました。  成功よりも成長を求め続けることが人生の成功に近づいていける道だと思います。