2017年5月10日水曜日

上原淳(救急クリニック院長)    ・深夜に安心を

上原淳(救急クリニック院長)   ・深夜に安心を
川越救急クリニック 53歳 麻酔科の医師だった上原さんは川越で8年前医療機関の体制が手薄になる夜間や週末だけ、患者を受け入れる救急クリニックを個人としては日本で初めて建ち上げました。
資金面では相変わらず苦労している上原さん、患者の話を聞いてあげるだけで深夜に開いていてよかったと言ってくれると役に立っていることを実感するとおっしゃいます。
救急クリニック院長上原さんに伺います。

救急を要する医師の判断と患者の判断が大分かい離しているので、問題が出てくることはよくあります。
大学病院の救命救急センターに勤めて居て、軽傷の患者さんが結構来ます。
軽傷の患者さんは各科に振ってしまうので、振られた側の医師が悲鳴をあげてしまうわけです。
救急を受け入れたくないと言う話が出てくるわけです。
軽傷者のうけ入れを何処かに作らないといけないと思って、次の日の朝まで面倒をみて、朝に既存の医療機関がスタッフがそろうので、その状態で診てもらおうと思った訳です。
夜中の手薄なところだけをカバーしようと思った訳です。
うちに来る患者さんの98%は歩いて帰れます。
最近多いのは高齢のかたが、もともと持病を持っていて、夜になって直らないから不安になって来ると言う患者さんが多いです。
心臓系は多いです。

心電図、心臓の超音波エコーとか、採血とか、或る程度の証拠を提示して全く問題ないから心配いらないと一言言うと喜んで帰ります。
胸が苦しいと言ってきて、心電図をとり何もなくて、症状が何もなければ処方も出さないで大丈夫だと言って帰してしまうことが多いが、ほとんどの先生は何か処方を出します、処方を出すためには病名が必要で、狭心症と言う病名が着いてしまって、ニトロ(狭心症の発作を止める薬)とかを持たされて本人はますます不安になってしまうので、医師にも問題があり患者にも問題があると思っています。
夕方4時に診療を開始して10時に受付を終わって、その患者を診るのは12時ぐらいになってしまいます。
その他に救急車が来たりしていて、朝の9時までスタッフが居て、9時になると他の病院が開くので、その時点でバトンタッチします。
最初は一人で金、土、日、月の4日間やっていました。
その活動が紙面などで知って、今の副院長の木川先生が加わってくれましたが、木川君の人件費を出せなくて苦労しました、今は木川君に火、水、木をやってもらっています。

救急専門で夜間だけやるクリニックは日本では無くて、モデルにして全国で困ってるところがあったら真似をして作ってもらったら、救急事情が良くなると思って、医師会に入れて下さいと書類を出したら断られてしまって、実績がない、夜間にやっているので夜の医師会に参加できないだろうと言うことで、断られました。
今でも入っていません。
医師会に加入していれば、消防、警察、学校などの健康診断、予防接種などを行う事が出来るので、或る程度のお金が入るし、横の繋がりが出来るのでそのメリットはあります。
救急科としたかったが一般の人が判らないと思って、内科、外科、整形外科、小児科をあげて居る。(医者の免許を持っていれば可能)

一番広まったのはインフルエンザの予防接種とか、お母さんネットワークがあってそれで評判になっています。
救急をメインにやるのだから、予防医学で儲けてもしょうがないと安い値段で出したら市内で一番や安くて殺到しました。
ホームレス、身寄りの無い方、他の医療施設に断わられた患者さんなどが来たりします。
そうすると何処からお金をとったらいいか判らないこともあり、7年間で未収金が300万円を超えています。
喧嘩をして被害者が来て、そういった患者さんはお金を持ってきてくれない場合が多いです。

コンビニエントクリニックを目指しました。
基本的にはかかりつけにはしてほしくないと思っています。
慢性疾患をもっていて、悪くなって夜来るとか年末年始なども来ます。
大学で医局長をやっていたときに会議がたくさんあって、そういうので時間がとられてしまうのが一番嫌でした。
僕が救命センターに勤めて居た時におかしいなあと思ったのは、救急隊が行き場がなくて、現場で1,2,3時間と動けない、救急隊は医療が出来ない。
救急隊が困っているのならば医師が一回受けて、自分が出来なければデータを付けて紹介で受診させるというシステムを作らないと、いけないと思いました。
それが独立した一番大きなことだと思います。
いま、年間1万人の患者さんを見て居ますが、ほとんどが初めての方です。
救急は診断をつけなくて良くて、今の病態を改善してやって次の専門医につなげればいい訳です。

救急の初療、診断、検査をして今の状態を把握して、それに近い病名を付けて、紹介状を書いて専門の所に受診するように勧めて居ます。
自分の付けた病名、方向性があっていたかどうかの答えは欲しいですね。
たいていの病院では返事をくれますので、次のフィードバック出来ればいいと思っています。
トリアージ、患者さんが何処が問題で今どういう状態で、すぐに対応するのか、急がないのか仕訳を出来る医者が一番必要かなと思っています。(救急医、総合診療医など)
私は横になるとスーッと寝てしまいます。
医者になってからは似たような生活です。
世の中の日本の医師の多くは、30時間連続勤務は普通にこなされているのではないかと思います。
患者さんと会話をするのは好きです。(患者さんも愚痴るし、私も愚痴ります)

高齢で多いのは、連れ合いが亡くなって一段落するまでは気が張っているが、やる気が無くなって具合が悪くなってくる方がいます。(精神的な事)
そういう場合は薬も出さないし、30分話して頂けるのは初診料しかもらえません。
進路について高校生になると将来を語ることがままあり、社会貢献したいとの思いのなかで医者の道は納得しやすかった。
医者になって最初のうちは無我夢中でした。
エリート集団の学生から始まり一般的に医師は隔絶した社会にあり、自分が偉いと思ってる人はいますし、説明しても何で判らないんだと言う人もいます。
私は医者はサービス業だと思ってやってきていますが、そうじゃないと言う医師もいます。
医療は科学だと言われるが、医療はアートな部分があります。
今まで悔いたことは一杯あります。(違う道はバラ色に見える)
卒業するまで心臓外科医になりたかったが、麻酔科を選んだが、そのまま居ついてしまいました。

幾つまでこのままこの仕事をやれるのだろうとは思いますが、ここを継いでくれるかどうかは判らない。
若者は救急科を選ばない傾向があるので、救急科でも開業が出来る、将来的にバラ色的なものを見せたいと思っています。