2017年3月16日木曜日

田口道子(管理栄養士)         ・視覚障害者と歩む料理教室

田口道子(管理栄養士)  ・視覚障害者と歩む料理教室
富山県立山の麓で自然に親しみながら育った田口さんは自転車通学していた中学生のときに、誤って転倒し左目を負傷、左目は失明、高校卒業後上京、料理学校の門をたたき、料理の道に進みました。
料理一筋におよそ60年今も文京区、大田区、埼玉県の川口市などで料理を教えています。

春の七草、お正月に食べられるが、春は蕪、大根、小松菜、白菜などが食べられる。
ホウレンソウはそれらとは違っていて、あかざ、とか言われて新芽に赤い色がついていたりしてアクの出方が違うので食べる時に手間がかかります。
春の七草の食べ物はそのまま食べられます。
管理栄養士、役所で言うと課長クラス、栄養士の資格を取り、何年か経過するとその一段上のランクの資格を取る。
役所関係の仕事にはその資格が必要です。
東京都の学校給食の栄養士さんの講習会をやらせてもらっています。
昭和13年生まれ、79歳。
栄養士は昭和36年に取って40年ごろに管理栄養士を取りました。
富山県立山の麓で生まれ育ちました。

親はおまえは料理が上手だからやれと云われて、セリを取ってきたりあかざを取ってきたりして、小学生からやっていました。
スピード狂で、自転車でブレーキをかけるのが好きで、たまたまブレーキをかけたところで、ひっくり返って、サドルが目の処に埋め込んで、血が出てそれを見て失神して、頭の左半分が神経がないんです。
左目は失明しました。
中学3年間はソフトボールをやっていて、2年生の時に失明したが、片目でその後もソフトボールはやりました。
料理では包丁を使うのも、火を使うのも全く怖くなかった。
昭和32年に上京、昭和36年に東大の病院でMRIを3日間かけて撮ってもらって、目に入る視神経がつぶれて居るだけで目そのものは大丈夫といわれました。
目は何ともないが、手術をして見える方の目がどうなるか分からないといわれて、そして佐野先生に診てもらって、手術をせずにそのまんまでいます。

大学へ行こうと受験勉強もしましたが、高校3年の時に技をつけた方が早いかなと思って赤堀料理教室の門を叩き、内弟子として家事全般をやりました。
先生の家の方の手伝い、家事全般をやりました。
寝るのは11時から12時で朝は5時半から6時です。
内弟子を6年間やりました。
昭和38年からアパートを借りて、目白の職場に通うようになりましたが、月給1500円でした。
昭和38年から支所があり代行で行かせてもらって先生をやるようになりました。
馬鹿にしたような感じで(上から目線)教えるのはやらないと決めました。
赤堀先生から栄養専門学校に行かせてもらったが、先生から負担してもらっていたが、こういうものは全部返してもらいなさいとか、返して下さいと言われていました。
私は住み込みだったので上司からは、底辺の仕事などをさせられた事などがありました。
ふろふき大根の写真を見て、あるプロデューサーから人柄が出ていると云う事で声がかかりました。
25年前の事ですが、今でも続いている5分ぐらいの番組です。(4年間やりました)

栄養専門学校にいたときにも障害者の教室の講習会があり、その下働きをしていましたが、最初に聴覚障害者に教えました。
食材の味の本物を知ってほしいと云うのが私の信念で、それが自分の身体を作り命を作るのだから、シンプルな料理(カレーライス、シチューなど)をこれはこうやって作ると簡単でおいしいと云う事を知ってもらう。
視覚障害者の講習会では火が付くと音が出るので強火か中火か弱火かを説明します、玉葱を炒める時も玉葱の水分が違うと音が違ってくる、香りも違ってくるので、実況放送の様にして、音と香りで教えて行きます。
ハンバーグなども簡単です、手の感触は一番いい反応です。
塩コショウでよくもむと肉が粘ってくる、それにきざんだ玉葱などを入れて、手にまつわりついていれば形が出来る。
硬い場合の調整は水を入れて練る、そうするとハンバーグが出来る。
視覚障害者への講習会は月に一回教えて居ますが、ほかに年3回特別講座でやっています。

目の不自由の方が知りたい、作りたいと云う思いは強くあります。
卵焼きを作りたいという要望があり、フライパンは何回もひっくり返さなければいけないので使えないので、100円コーナーで四角いアルミ鍋を売っていて、これは使えるとトライしてうまくいきました。
今度の視覚障害者への講習会で卵焼きを教える事が出来ます。
料理は生きるための必須と思っています。
身体を作る、命を作ると云う事は自分の口から入った食べ物からしか作れない。
口から入った時に食べ物が合っているかどうかはちゃんと反応がでる。
身体に入れる食べ物は何億年前に出来た人たちと機能が変わらない。
口に入ったらまず咬む、香り、味、硬さなどを脳に教える。(のど越しを大事にする)
おいしいと云うのは脳の答え、自分が食べなければいけないもの、食べていいものの答えになる。
料理は体に合わせて料理しなければいけない、胃に合わなかったらゲップが出る。
腸では合わなければ、悪い時には下痢になり、合わなければ栄養にならない。
中高年にとって一番大事なもの、それは自分で料理して食べる、3日で一回、1週間に一回でいいから自分で作ってください。