2017年3月11日土曜日

高橋博之(「東北開墾」代表理事)   ・都市と地方をかきまぜる

高橋博之(NPO法人「東北開墾」代表理事)・都市と地方をかきまぜる
6年前の震災の後、岩手県花巻市を拠点に農業や漁業の現場をダイレクトにつなごうと始まった「東北食べる通信」と云う情報誌があります。
新聞半分の大きさの情報誌。
2016年8号 巨大なメカジキの目などの写真が写っていて、漁師さんたちの奮闘ぶりが書かれていて、食材が付いてくる。
1500部限定で発売されている。
最初の発行から4年になる。
東北だけでなく全国37か所で発行されている。
発行しているのが岩手県花巻市のNPO法人「東北開墾」。

写真が良いといわれます、16ページです。
巨大なメカジキの目に漁船が写ってるが、それで行きました。
大きく表現したいと思い、このように大きな紙面なりました。
紙にこだわったのは取っておいて貰いたかった。
東北は山から海まで食材が豊かなので食材の名前を表紙に持ってきました。
2013年7月が創刊です。
簡単に言うと食べ物付きの定期購読誌ですが、世界初、付録が食べ物。
文章は私が担当して書いています。
メカジキの時には5日間同行して、事細かに書いています。
そこで働く人たちも陸ではダジャレを言ったりする人が、船に上がると野武士のような感じで質問しても答えてくれない。(現場に入った途端にスイッチが入る)
ぼそぼそ独り言を言っているのを記載したりしています。

命をかけて魚をとってきているが、魚は届くが、獲っている瞬間は誰も知らないのでもったいないと思って、それが写真の価値だ思います。
スーパーにきれいに並んだ食材を見て、これが元々動植物の命だったんだと思って有り難いと感謝して手を合わせて居る人はいません。
それを伝えれば価値も上がるだろうと思って、だからそれを伝えたかった。
野菜も農家の人がどの程度手を入れるのか知らないので、そういったものも知ってもらいたかった。
月一回届くが、その時ぐらいはお父さんが台所に立って、お父さんが作ってくれた料理を囲んで、これはどういった食材なのかとか会話をしながら食べると云う事はうれしいと思っています。

創刊号は牡蠣漁師さんを取材しましたが、その前に親しくなっていました。
生産者の苦労や創意工夫を伝えるところがないと思っていたので、忸怩たる思いを伝えてくれると云う事で、取材に応じてくれなかった事はないです。
食べ物の値段が安すぎると思います。
間にはいってくれる人が、生産現場を知らずにいるのでは価値が伝わらないと思う。
生産と消費は昔は見えやすかったが、見えると感謝するが、今は見えない。
消費者が限度を超える要求を突き付けて生産現場が疲弊してゆくと云う事が、食べ物の現場だけはなくてあらゆるところに起きてきてしまっている。
食べ物は自然が相手なので予定通りにはいかないので、紙面を通じて事情が判ってくれているので理解はしてくれています。
相手が見えないと安易になりやすいし、攻撃したりする。
人間関係が希薄になってくると、ウエットな人間関係を求める、特に都会の人はそうだと思います。
故郷難民、帰る場所がない人が都会で増えている。

30年後には帰省ラッシュもなくなるのではないかと言われている。
田舎の農家と漁師、都会の故郷難民をつなげるのではないかと考えました。
血がつながっているから判りあえる事もありますが、繋がっていないからこそいい関係もあると思う。
食べ物を作る側と食べる側は判りやすい関係なので、その関係を都会の人と田舎で作ってもらってたまに故郷に帰って欲しい。
生き物の故郷は海と土だと思う。
海と土から離れると、生きる実感がわかないとか、精神的にも病んでくる。
都会の人間が1年の一定期間、海とか土に触れて都会に帰る、江戸時代の逆の参勤交代です。
移住よりも田舎と都会をある期間行き来できれば良いと思うし、現実的だと思います。
「都市と地方をかきまぜる」と云う事はまさにその事だと思っています。

過密の牛舎で育てる牛は高栄養価の餌だが病気にはなりやすい、自然放牧の牧場は栄養価の低い餌ではあるが病気に感染しにくいが、コストはかかる。
都会では人が密集して栄養価の高いものを食べていて、運動もあまりしなくて心身共に病みやすいので、移住は難しいが「都市と地方をかきまぜる」方がいいと思う。
一番の価値はお金ではないと云う事を考えていかないといけない思うし、東北では出来ると思っている。
食べ物も奪いあえば足りず分かち合えば足りる、奪い合って戦争になってゆくようにはしたくない。
自然災害は昔から日本はやられていて、くることを前提にして、来たときにどうやり過ごすか、どう折り合いをつけていくかと云う事が日本では出来ると云う事だったが、自然とどう折り合いをつけて生きてゆくのか、自然と対話している人たちから学んだほうがいいと思う。