2015年12月13日日曜日

福田文昭(カメラマン)       ・フィルムカメラと歩んだ人生

福田文昭(カメラマン)        ・フィルムカメラと歩んだ人生
シャッターチャンスに命をかけてきた福田カメラマンの想いは、消えてゆく瞬間の時代の証しをフィルムに焼きつけること。
その写す対象はこの時代に暮らしている人々が、知りたいと思っている話題性のある一枚写真です。
昭和54年、福田さんの撮った一枚が、写真週刊誌の先駆けとなり、スクープを求めるカメラマンが数多く誕生しました。
しかし、その世界で有名になった福田さんは鬱病に悩まされ、やっと去年からカメラを手にすることが出来ました。

このレンズは45年一緒にいて、かみさんよりも長く付き合っていて、恋人みたいなものです。
フィルムを巻く瞬間の間の良さが真髄です。
シャッターチャンスを如何につかんでいくか。
今68歳です。
休みたいことはしょっちゅうです、依頼の仕事が無いので自分で計画を立てて撮ったり、仕事に追われていないので、2カ月に一回ぐらい商業出版物に載ったりするので、そんなに追われてはいません。
元首相の田中角栄さんの裁判の写真を撮り、それが雑誌に出て評判になりました。
写真週刊誌が新しく始まるにあたって、ロッキード裁判を写真に撮って載せたら読者の人に喜んでもらえるかもしれないし、注目を浴びるのではないかと思った。
写真を撮ることは許可を出してくれないので、気がつかれないように撮って載せようと思ったが、失敗を重ねて6か月後に撮れて紙面に載せられた。(昭和57年 ロッキード裁判)
判らない様に撮るのは心がぶれるので、ちゃんとシャッターが切れないので、結果はぶれた写真になってしまう。
今日は撮れると思ってシャッターを押したら撮ることができた。
田中角栄さんが憮然とした表情で、閉廷の瞬間だった。

国民の知る権利と被告の人権 板挟み 
正確に国民の人に自分の被告席の姿を見てもらうという事は、決してマイナスのことだけではなく自分を理解してもらう事はプラスになるのではないかと思う。
昭和54年 山口百恵さんと三浦友和さんのデートの写真。
ずーっと張り込んでいて撮る。
人間的魅力を感じたり、反発を感じる様な人もいたり、人間的な面白さに興味を持ってしまって、一人の人間としてどうなんだろうと、写真に収めたいとだんだん強くなってきて、百恵さんも恋の炎が燃えている様に感じた。
最初家の前で待っていたが3カ月手掛かりが無く諦めて、友和さんのマンションの前で2カ月で待って、写真を撮ることが出来た。
罪悪感はないか?
職業的に人間を追い掛けているので、逃げられてしまえば仕方ない、不運なところにつかまってしまうと、写真に撮られてしまうので、宿命みたいなもので、辛いと言えば辛いが、それで悩んでしまったらこの仕事は辞めただろうと思います。
写真を撮った翌日に、百恵さんは「私の恋人は三浦友和さんです」と公表する。
スクープは古くなってしまった。

張り込みの写真は止めるようになる。
ニュースになる様な動物の写真を撮ってはどうかとの編集長からの依頼がある。
7年間毎週毎週、日本国中歩いて撮りました。
いくら動物の写真を撮っても疲れない。
デジタルカメラになって、プロカメラマンとしては職業的技能を必要とされなくなった。
デジタルは感度を上げられるので、暗いところで撮っても色がそれなりに良く出るので、舞台は暗いので舞台で撮るときには使います。
デジカメの方がけばけばしい色で、実際の色よりも作った色になってしまう。
逆光では明るいところが飛んでしまって、よく映らないのが欠陥だと思います。
いくらデジタルが進歩してもフィルムカメラの豊かさには追い付かないと思う。
フィルムは色の出具合が豊潤、柔らかい、白から黒までの階調が非常に豊か。
デジタルは途中が省略されてしまうようで、あまり立体感が出ない。

新聞社の写真は秒を争う様な写真なので、デジカメで使うメリットがある。
コマーシャルで組み立てて写真を作り上げる様な人は、デジカメでいろんな組み立て方ができるので、メリットがある。
フィルムは楽しい。
フィルム会社もフィルムを作り続けると宣言しています。
プロのカメラマンの主流はまだフィルムです。
雑誌社などからの仕事の要請は無くなってきて厳しくなり、鬱になってしまう。(50歳代後半から依頼が来なくなってしまった)
夜眠れない、どう悪い状況を打開出来るか考えるが、答えが見つからない。
それが何日も続くと精神状態が混乱してきて、家に引きこもり、社会性が段々無くなり、友人から電話が来て一緒に会おうといってきても、段々閉鎖的になってしまう。
10数年前と3年前ぐらい、2回あります。

2011年 大震災の時に、民家がめちゃくちゃに壊れているところに行って、観てもシャッターをなかなか押せなかった。
取材は2日で終わったが、大トラブルになってしまって、今後商業ジャーナリズムで仕事をすべきかどうか悩んで、もうやめてしまおうと思って、深刻に辞めようと思った時に、自殺をしようかと思ってしまった。
人には相談も出来なくて、どん底まで行ってしまった。
明日の朝と思った時に、その朝起きれなくて、今日は駄目だと思って、本屋さんに行ったら「自殺」という本が飾ってあって、著者が末井昭さんで昔「写真時代」という写真雑誌の編集長で一緒に仕事をした人だった。
本を読んでみたら、インターネットで自殺について自分で調べてブログに書く様なことをやって、評判になっていたので、或る編集者の人が本にしたいという事で、末井昭さんも病んでいたが、上向きになって本を完成した。
自殺しようとした人を救済した人に直接会いに行ってインタビューしている。
秋田県が自殺の一番多いところで、秋田県を訪ねて行ってルポしている。
自分の足で自殺というテーマを分析しながら書いている。

1週間で4~5回読んでみて、自分なりにどう脱出していいかを自分なりに分析して、答えを見つけられると思って、そういう風に考えるようになって、自殺しなくてもいいかなあと思えるようになった。
本の最後のメッセージに、「皆自殺しないでくださいね、生きていれば色々良い事があるんですから」、という事で、確かにそうだと思った。
ハンセン病の夫婦の事を数年にわたってドキュメントした、等身大に観た写真展を一緒に見に行って、或る人から又写真教室を始めてくださいと言われて、これはやらなくてはいけないと思って写真教室を始めたら、いい加減な写真を見本に見せると生徒に馬鹿にされると思って、一生懸命に撮るようになった。
真剣に生徒に見せる、そうしているうちに真面目に一生懸命写真を撮るようになって、全然元気になり、それが去年の4月からです。
今は自分でチラシを作って、家族が一番くつろげる場所でペットを含めて家族全員の写真を撮るというのを、出張して撮ります、というのをやっています。
フィルムのモノクロ写真は心が映る、デジカメでは心が映らない。