2026年4月2日木曜日

藤原良雄(出版社社主)           ・「100年先も読まれる本を」

藤原良雄(出版社社主)           ・「100年先も読まれる本を」 

このほどフランス政府から芸術文化勲章オフィシエを授与された出版者社主藤原良雄さんのお話です。 オフィシエと言うのは、芸術文化の領域で著しい功績を挙げた人に贈られるものです。 日本では川端康成さんに始まり、草間彌生さん、坂本龍一さんらが受賞者に名を連らねていますが、出版人としては藤原さんが初の受賞です。  フランスを代表する知識人や文学者の著作を数多く日本に紹介したことが評価されました。 藤原良雄さんは、大阪出身の77歳。 大学卒業後、東京の出版社勤務を経て、1989年に藤原書店を創業、以来人文社会科学を中心に、政治、経済や環境など幅広いテーマでおよそ1600点を刊行しています。

受賞の理由は、東京とパリの間で、思想と創造が自由に行き来できる道を開いてくださったということです。  ただ単にフランスの思想を紹介すると言うことだけではなくて、フランスと日本の交流の場を作ってきたことも事実です。 衰退しつつあるマルクス主義に変わる新しい社会の見方、歴史の見方について考えるようになりました。 トータルで歴史を見ると言うことです。 1929年にマルクス主義との葛藤の中で生まれた歴史学と言う、アナール学派と言うような人たちが生み出してきたものです。 ヨーロッパの知識人でアナールの世話になってないと言う人はほとんどないと思います。 私は70年代の半ばにそれに出会いました。

1949年大阪生まれ。 私が生まれてまもなくテレビが誕生してます。 4,5歳の頃相撲に関心を持ちました。 学校でも相撲取ったり、相撲一色の小学校時代でした。 本との出会いの1番最初は、相撲の雑誌でした。  本当に本を読むようになったのは大学生時代です。 乱読しました。 当時出版社はほとんど東京でした。    吉田松陰は29歳で亡くなりますけれども、その頃にも世界に目を向けてものを見てたんだなぁと感じました。 松陰のような人間になりたいと言う思いはありました。

上京して東京の出版社に入りました。(1973年 学生結婚) 会社の倉庫の2階で生活を始めました。  台所はありましたけども、お風呂がなくて1年後に子供ができるんですが、それが大変でした。 そこでの生活は5年半続きました。 学生時代に感銘を受けた作家などに対して読書感想みたいなことで、まずは自分で自分を知ってもらわないといけないと思って、手紙を出して接触できるようにしていきました。 内田義彦さん、井上浩二?さん、清水幾太郎さん、野間宏さんなどに手紙を出しました。 受け止めていただいたのが嬉しかったです。

手ごたえみたいなものを感じて、藤原書店を創立したのが1989年出版活動を通しながら、いろんな人たちとの交流、読者との交流80年代やっていきました妻は、2000年位の時にパーキンソン病にかかってしまいました。 今は寝たきりの生活になってしまいました。 自宅で介護しています。コミュニケーションが取れないのが残念なところです。 

フランスの知識人とはほとんど会ってきました。 アナール派のラデュリを筆頭にエマニエル・トッド等(ラデュリの弟子)、社会学ピエール・ブルデュー、経済学ロベール・ボワイエ、ソ連の崩壊を予言したエレーヌ・カレール=ダンコースさんなど直にお会いしていろんなことを学ばせていただきました。 日本では鶴見和子さん石牟礼 道子さん、中村恵子さん、多田富雄さんなどの著作集を出したりしてきました。

イヴァン・イリイチさんは3つのサービス制度のことを70年代に問題にしました人です。  教育制度としての学校、医療制度としての病院、交通制度としての輸送、エネルギーなど、高度に産業が発展すると大きな問題になるんだと言うことを70年代に提起してます。  80年代になると、シャドーワーク、ジェンダー、水、身体、言語、言葉と言う人間の基本的な問題を80年代になってからは問題提起してます。 エヴァンエイリイチさんはメキシコに私塾を作っていろいろ発言していきます。 エヴァンエイリイチさんの思想は、自分の中で大きな力になったと思います。

人と会う時には初めて一対一で会うわけですから、徹底的に相手のことを調べてからお会いしてます。 常に自分のうちの中で考えた言葉を相手に伝えると言うことをやってきました。  だから相手の心を動かしたんだと思います。       儲けるためにとか売れるからということで出した本は1冊もありません。     これからは東西文化の融合というか、交流をしていかなければいけないと思います。 日本の文化をどんどん向こうに発信していかなければいけないと思います。 日本は発信力が弱いんじゃないかと思います。 100年以上前に後藤新平と言う人間が日本から発信していたと言うことを忘れてはいけないと思います。(感染症を防ぐやり方) まだ世界に知られていない日本の人を知らせていきたいと思います。 

本と言うのは100年、200年たっても読まれると言うのが本だと思います。    出版業界は2兆円から1兆円を割るような貧弱なことになっています。 本当に由々しき問題だと思います。 日本の国家のあり方としても由々しき問題じゃないかと思います。 出版とは人生をかけて己が考えているそういうものを、他者に伝えていく、また後世の人たちに残していくそういうものではないかと思います。