2021年5月7日金曜日

春日武之(日光殿堂案内協同組合代表理事)・日光の歴史と文化を伝える名調子

 春日武之(日光殿堂案内協同組合代表理事)・日光の歴史と文化を伝える名調子

世界遺産の二社一寺 東照宮、輪王寺、二荒山神社 観光案内をする堂者引きは唯一許された公認案内人で江戸時代から続いています。  春日さんはこの道44年で詳しい知識と長年の経験をもとに日光の歴史と文化を観光客に伝えています。  現在は後進の指導にもあたっているほか感染の影響で観光客が激減した中、新たな道を模索しています。 

堂者引き、お寺や神社を連れ立ってお参りすることを、江戸時代にはどうじゃ(道者)と呼びました。  「どう」は堂ではなくて道でした。  日光だけはどういうわけか堂者と言っていました。  引率して案内する職業の人を堂者引きと言いました。   今でいえば観光ガイドの先走りみたいなものです。  家康公がなくなり、遺言の日光に東照社という家康をまつる神社ができました。   家光様が現在の美しい形に作り替えて、四代将軍が参拝を許可されました。  その折に物見遊山で来てもらっては困るということで、ルールを決めてしっかりとした解説員をつけて学んでいただこうと、堂者引きというものが形成されたといわれています。    生きるための教えを学び、解説をしています。  観光というのは、その土地、土地の光を見るということで「観光」ということになります。  

説明だけでなく堂者の方々を安全に移動させる、火事とか災害が起きた時に参拝の方々を安全に誘導し、消火のお手伝いをします。   いろいろな緊急対応をします。  現在日光では28名です。  24,5歳から75歳までの方たちです。    堂者引きになるためには、身元調査をして、知識を得るための2,3月間の猛勉強が始まり、先輩からの講習もうけて二社一寺から一人前ということに認められて初めて独り立ちができます。

日光に生まれて、その後東京でくらしていましたが、親の具合が悪くなり、地元に戻ってきて、看病しながらの仕事をということでこの堂者引きという仕事を紹介されました。   25歳でこの道に入りました。   台本があり一通り覚えるところから始めました。  奈良時代からスタートして現在に至るまでが台本に書いてあります。   台本はB4版で厚さが3cmぐらいありそれを覚えることから始まります。   読み合わせだけで一週間ぐらいかかりました。   勉強してゆく中で自分なりに疑問点が出てきて、それを書いてある書物を見つけ出して読むという繰り返しです。   次に知識を言葉に変えて伝える訓練をします。   小さい子から高齢の方までいるのでそれに応じた話の仕方を身に付けて行きます。

歴史はけっこう好きなほうでしたが、興味があまりなかったですね。   この仕事にはいって、歴史の奥を見ることが好きになりました。   矢張り皆さんが興味を持つのが戦国の時代、信長、秀吉、家康のころですね。  日光には家康のことが残っているので話しやすいと思っています。   仕事柄、いろいろな寺社には見に行きます。  それぞれの歴史を語っている本があるので必ず購入してきます。   25歳までの自分とその後とでは人間的にもずいぶん変わったと思います。

勝者の歴史を子供のころから学んできましたが、敗者の歴史はどうなっているのかとか、多くの本から見る道ができたので、日常でも多くの広い判断ができるようになった感じがします。   

一回り2時間弱で回ります。   フルコースを回ると3時間ぐらいかかります。 バス一台のお客さん(30~40名)を案内します。  秋の最盛期のは一日4~5回やります。  体力も必要です。  私は今年70歳になり体力と相談しながらやっています。  体力維持のために走っている人とかジムに通っている方もいます。

紹介したいと思うのはやはり「三猿」(見猿,聞か猿、言わ猿)ですかね。   いろんな病気を猿が治したという話がありますが、もちろん猿自身が病気を治すのではなくて、病が去る、災難が去るという意味(去る=猿)です。 この建物には16匹の猿があり人間の一生を表しているといわれています。  親という字は3つに分解すると、木に立って見るとなりますが、 親猿は木に立って子供の将来を見つめながら育てあげる。 そして三猿の教えを守れば、身も心も美しくなる、漢字で身も心も美しいというと「躾」となります。 そういった形で人間の一生を表しています。

昨年は一般団体で9割減でした。  学生団体が5~6割減。 トータルでは7割減というところでした。  今年もこのところ、感染者の増加に伴って、予約キャンセルもあり心配な状況です。  今取り組んでいるのが、出張講義、小学校6年生が旅行に行かれなくなってしまったということで、日光のイメージを見せたいとの関東近辺の先生の要望があり、話をしてほしいということで、学校に出向いて映像を流しながら話をしています。  日光の歴史を少しでもわかっていただけたらなあと思っています。  映像ではなく本物を見ながら時代背景を含め、学んでいってもらいたい。  貯穀などから愛がテーマになっていますが、親子の愛、家族の愛、人を愛する心、自分の住んでいる土地を愛する心、人々を愛する心、国を愛する心、全世界の人々を愛する心、愛というテーマ、一番大事なのが平和です。  世界史の中で200年以上平和だったのは我が国の江戸時代しかないんです。  平和というものがあるからこそ、人を愛せる。彫刻や時代背景からその平和を伝えられればいいかなと思っています。