萩原智子(シドニーオリンピック競泳日本代表)・【スポーツ明日への伝言】優しさと笑顔あふれるオリンピック
水泳競技は4月に代表選考を兼ねた代表選手権が行われ、33人の競泳の代表が決まっています。 選手時代からハギトモの愛称で親しまれた萩原さんはオリンピック代表に4回挑戦見事代表となった2000年のシドニーオリンピックでは、200m背泳ぎ4位、個人メドレー8位入賞という活躍をしました。 ご自身の現役時代を振り返りながら今回の代表選考会について伺います。
選手、関係者の立場からすると、オリンピック パラリンピックは開催してほしいという気持ちはあります。 世界の平和があるからこそ開催できるもので、今の状況でどうなのかなというのは日々私も葛藤しています。 1年延びたことで相当の気持ちの強さがないとこの選考会は乗り切れないだろうと思っていました。 若い選手がノンプレシャーで生き生きしていたのを感じました。 水泳競技は個人種目とはいえ日本はチーム力で戦ってきた面もあり、選ばれた33人をどうしてチーム力を高めていくのか、相当努力されるだろうなあと思います。 33人中22人が初めてのオリンピック代表選手という事で2/3が初めてですね。 年齢も17歳から31歳までで凄く幅広いです。
リオのオリンピックも半数以上が初めてでした。 アテネオリンピック800m女子自由形金メダリスト柴田 亜衣さんを合宿に呼んで経験談、気持ちの持ちようなどを情報共有するんですね。 コロナ渦で合宿も変わってきて、平井監督がオンラインで選手の状況とか、一人にしないという事を心掛けているようです。
注目選手としては男子の平泳ぎの佐藤翔馬選手で今回の大会で100m、200mともに優勝しています。 女子の400m個人メドレーで大橋唯選手が優勝して、2位に高校生の谷川さんが入って、3位にベテランの清水咲子選手が入りましたが、事前ではおそらく大橋唯選手、清水咲子選手だろうと予想していましたが、谷川選手が入ってきました。 ショックでプールから上がれないのではないかと思いましたが、二人の選手に対して、祝福して頑張ってと言える姿です。 人間性が素晴らしいと思いましたし、素晴らしいものを教えてもらったと思いました。 池江璃花子選手にはびっくりしました。 自分の力を120%出せる力、精神力の強さをすごいなあと思います。
オリンピック パラリンピックに対して賛否がありますが、選手は何が何でも開催というような思いの選手はいなくて、そのことは皆さんにもわかってもらいたいと思います。
ハギトモといわれるようになったのは、中学生の時の山梨県の代表合宿の時に先輩の小川智子さんと一緒の背泳ぎの選手でした。 よく二人とも怒られる選手で「ともこ」といわれると二人とも振り返ってしまって、いつのまにか「オガトモ」、「ハギトモ」といわれるようになりました。 小学校6年生で170cmあったので、ランドセルが入らずリュックを背負っていきました。 小学校の2年生で海でおぼれて水泳を始めました。
オリンピックで印象に残っているのがバルセロナオリンピックの岩崎恭子さんの金メダルでした。(1992年) 小柄な選手が金メダルを取れるんだとすごくインパクトがありました。 自分もオリンピックに出たいとあこがれました。 4年後のアトランタオリンピックには出場を目指すことになりました。(高校1年生) 中学3年の夏に日本歴代2位の記録を出して注目されました。 反抗期で天狗になった一面もあり本当の努力、覚悟をしていなかったと、今思うと情けないと思います。 結果は3位で行けませんでした。 背泳ぎが一番自分に合っていたかどうかは今になってもわかりません。 2000年のシドニーオリンピックに出たいという気持ちになりました。 200mの背泳ぎと個人メドレーで代表に選んでいただきました。 選考会が4月にあり気持ちよく誕生日を迎えられるかどうか、全く違いました。
200mの背泳ぎで4位、0.16秒差でメダルを逃しました。 今思うと努力が足りなかったと思いますし、もっとできる事があったのかと思います。 あの時はベストをだしきったので悔いはないと思いました。 銅メダルを取ったのが先輩の三木さんで、私もうれしかったし、ライバルが来て私も高めることができたと思っています。
アテネの代表選考に挑むことになりましたが、故障もあり、無呼吸症候群になってしまったり、健康でチャレンジすることが幸せだという事を思って、選考会に臨みました。 代表選考に漏れて引退表明します。 2012年ロンドン大会の選考会にチャレンジすることになりました。(31歳) このときは水泳をやっていて一番楽しかったかもしれません。 結果は伴わなかったが、選考会で自分の持っているものをすべて出し切ったと思います。
シドニーオリンピックの男子100m自由形の予選で赤道ギニアのエリック・ムサンバニ選手が溺れそうになりながらも、一生懸命泳ぎ切るみたいな感じでした。 私も気が付いたら立って拍手を送っていました。 周りもほとんどの方がスタンディングオベーションで彼に拍手を送っていました。 彼がゴールした時には歓声が起こり、これがオリンピックの本当の意味だなあと思いました。
山梨県の甲府市で水泳をやってきましたが、地元の良さ、地元の力は大きいです。 励まし、温かい声援をいただいてきました。 コメンテーターとして、選手のその人となり、人間性を知っていただくとより応援に力が入ると思っていて、彼ら彼女らはこんなにすばらしい方だと少しでもわかっていただきたいと思っています。 こういう時だからこそ心がつながっていたいと思います。