立畑健児(雑誌編集長) ・石を愛でる
風雅な自然石を愛で、室内で鑑賞する水石は後醍醐天皇ですが、織田信長も愛したと伝えられる日本古来の趣味です。 石の愛好家のための全国で唯一の月刊誌の編集長、立畑さん(72歳)は人物を撮るフリーカメラマンから50歳を過ぎてはじめて石の世界に入りました。 今では雑誌の撮影 、編集、発送まで据えて一人で切り盛りしています。 立畑さんをそれまで魅了した石の魅力とは何なのか、石のすばらしさを伝えようと孤軍奮闘で、雑誌の発行を続ける立畑さんに伺いました。
去年、石の数を数えたら220~230ぐらいありました。 それから少し増えたので250~260はあります。 愛石数としては少ないほうです。 10倍近く持っている人がいます。 ここにあるものは20~30cmぐらいが多いです。 鑑賞する趣味というのは奈良時代に中国から渡ってきた鑑真の高弟・鑑禎(がんてい)という高僧が京都の鞍馬寺で石を残しました。 それが現存しています。 貴族、武家など、有名なのが後醍醐天皇、織田信長、親鸞上人などが石を愛でていました。 一般の人が趣味にし始めたのは明治時代になってから広まっていったといわれています。 石ブームは昭和35年から40年ごろにありました。 全国に石の会は300ぐらいあります。 一つの会には10人ぐらいは所属しているので、5000~1万人ぐらいと思っています。
「愛石の友」という雑誌にかかわるようになって石が好きになりました。 その前に熱帯魚を飼っていて水槽の中をデコレーションするんですが、石を探して河原を歩いていました。 フリーカメラマンの時には風景、ヌード、人物、女優さんも撮りました。 「愛石の友」の編集長から手伝ってくれないかといわれたのがきっかけでした。 石は動かないので撮影は楽です。 前編集長が体調を崩して、認知症にもなり出社しなくなり、突然お鉢が回ってきました。 二人でやっていたので全部ひとりでやるようになりました。
編集、レイアウトして、VDVに収めて印刷屋さんへ持ってゆきます。 雑誌が出来上がると地方発送などもやります。 愛好家のかたから記事を送ってもらって、編集などもします。 石を眺めているだけで心が穏やかになってくるというか、癒されます。 探石(石を探す)、養石(川や山で採取した石を棚の上に並べ、日にあて水をやり盆栽と同じように日々養い育てる、そうすると風格が出てきます)、揚石(石を拾い上げる)という言葉があります。 一生一石という言葉がありますが、なかなかたどり着かないです。 石に接しているうちにだんだん見る眼ができてきます。
亡くなってしまった吉田凡石さんという愛好家の方からいただいたもので「流韻」という銘のものがあります。 山形石、山の形をした石は自然を想像させるので一般的に人気がります。 仏像のような形をした石もあります。 私は角がない丸みのあるものが好きです。 値段は有ってないようなもので、お互いが交渉しあって決めます。
雑誌は公称1000部です。 書店売りは手間がかかるので5,6年前にやめました。 年齢層は70,80でしょうか。 男性が9割ぐらいです。 若い女性も開拓しています。 石は質感とか色合いを出したいのでカラー写真になっています。 海外にも愛好家の方はいます、特にアメリカは多いです。 ヨーロッパも次いで多いです。 アメリカには一度行って拾ってきました。
水盤石という言葉が明治時代にできて、縮まって水石となりました。 昔は水盤に飾って居ました。 今は台を作ってその上に置きます。 展示会は地域ごとにありますが去年は壊滅状態でした。
「1200年続く鑑賞石伝統文化を継承する専門誌」と表紙に掲げています。 この灯を絶やさないように頑張るつもりです。