2024年7月21日日曜日

村田吉弘(京都・老舗日本料理店 三代目) ・〔美味しい仕事人〕 和食の伝統を革新でつなぐ

村田吉弘(京都・老舗日本料理店 三代目) ・〔美味しい仕事人〕 和食の伝統を革新でつなぐ 

和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて10年が経ちます。 村田さんは和食の無形文化遺産登録に尽力し、その後も全日本食学会理事長、日本料理アカデミー名誉理事長として日本の食文化を次の世代に繋ぐ活動をつづけています。 若い人を育てるにも料理の科学を筋道立てて教えるなど、明快な指導を心掛けています。 これまで口伝で伝えてきた調理法も、文献で共有できるように取り組んで来ました。  和食を守ってゆくには、単なる伝承ではなく、守るべき伝統を革新的につなげてゆくという事が必要だと語ります。 

2013年12月4日にユネスコ無形文化遺産に登録されて10年が経ちます。 見直しが定期的にあって、ちゃんと出来ていないと取り消しになります。 文化を維持継承するシステムが機能しているかどうか。 法律改正して頂いて、食が文化のなかに入りました。  日本料理アカデミーでは200人ぐらいは料理人で、100人は学者の先生方です。 今1億2500万人の人口で自給率が37%、50年後には8000万人になってきて、自給率が19%になるんです。 他の国ではそうそうないので、日本料理を世界の料理にすることによって、日本の食べ物が輸出されるということを望みました。 登録前は輸出が4000億円だったのが、今は1兆4000億円になりました。 25年度には2兆円にするという事を政府から言われました。 日本の食の将来を守るためにいろいろ活動をしています。 登録前は日本以外の日本料理店は5万6000軒でしたが、今は18万軒になりました。(ラーメン屋を含め)  おむすびなど日本人しか食べないと思っていたら、日本人がおいしいものは世界で美味しいんです。 

日本料理は寿司とラーメンと思っている外国人はたくさんいますが、だんだんわかってきて、焼き鳥、天ぷらとか判って来て、今は懐石料理を食べたいとか、という風になってきています。 イギリス人などはアユなどの魚は絶対頭から食べなかったが、今は美味しいと思うかもしれないので食べてみます。 ウニもヨーロッパ人は食べなかったが、食べるようになってしまいました。 お母さんのおっぱいの中には、糖質、脂質、旨味成分が入っています。 これらは脳を刺激して、ドーパミンというホルモンが出てきて、もっと食べたくなります。 糖質は全世界の人が食べます。 世界の料理は油脂を中心に料理を構成している。 一民族(日本)だけが旨味を中心に料理を構成したんです。  油脂は1ccで9kカロリーがあります。  フランス料理はデザート前までで2500kカロリーあり、日本料理では1000kカロリーです。  世界中のトップシェフが日本に学びに来ています。    日本には菜種油ぐらいしかない。 京都の公家に2,3時間かけて食べてもらうのに、夏には野菜と川魚しかなくて、小さいポーション?にして沢山、いろいろ出した。 そこに旨味を添加してゆく。  最終的には北海道の北前船で運ばれてくる礼文島の昆布、土佐から運ばれてきた鰹節を使ってやったら美味しくなった。 京都御所から始まった料理です。 

110年ぐらい前に帝国大学の池田菊苗先生が、湯豆腐を作るのに水だけと、昆布をひいて作るのでは味が違う事を発見した。 昆布の出汁を煮詰めたら、結晶が出て来た。 それがグルタミンソーダでした。 その弟子が獣類の肉からっ出てくるイノシン酸、キノコから出てくるグアニル酸を発見した。  外国人は味は4つで旨味は概念だと言っていたが、結晶化したものがある。 2006年に甘味を感知するすぐ横に、旨味を感知する受容体が見つかりました。 今では5つの味(+旨味)を理解するようになりました。 今では昆布がフランス料理の厨房にはあります。 

日本料理アカデミーでは今年はトップシェフを7人招きました。 今では世界中のシェフは発酵(味噌、みりん、酒など)です。 麹が輸出されるのでいろんな豆で味噌を作っています。 日本料理アカデミーでは日本の和食の良さを広げなければいけないという事で、始めました。 勘と経験を数値にしようと京大の先生と一緒に「日本料理大全」という6巻の本にまとめました。 そうしないと世界の人々にはわからない。 日本語と英語で作っていて、英語は全世界に対して無料配信します。 パソコンで翻訳機を使えばすんべ広がる。 いま5巻まで作りました。 「煮る、炊く」というのを後一巻にまとまます。 在庫の本は世界中の図書館に寄付するようにと考えています。 

跡継ぎという事が嫌でした。 料理は好きなのでコックになろうと思いました。 フランス領路をやろうと思いました。  フランスに行きましたが、まだ何も決めていませんでした。 安いホテルも紹介してもらって、そこには上柿元勝(フランス料理のレジェンド)さんがいました。  彼から雇われ方のコツを教えてもらいましたが、駄目でした。 日本料理の情けない状態を知って、フランス料理ではなく日本料理を世界の料理にすことをライフワークにしようと思いました。  

人生の一コマに料亭がある。 お食い初め、お宮参り、初節句、七五三、成人式、両家のお顔合わせ、喜寿、米寿などのお祝い、法事など。  社会的な施設としての役割がある。  「伝統は革新」 日々新らた、新しい発想をしてゆく。 伝統と伝承とは違う。 守るべきものは守って破るべきものは破る。