2024年7月11日木曜日

小菅 正夫(札幌市円山動物園参与)     ・子ども科学電話相談40周年 ~動物園とともに歩んで~

小菅 正夫(札幌市円山動物園参与)・子ども科学電話相談40周年 ~動物園とともに歩んで~ 

30年目閉園の危機にあった北海道の旭山動物園の園長として、様々な取り組みで日本でも有数の人気の動物園にしたことで知られる小菅さんにお話を伺いました。

子ども科学電話相談、20年以上やっています。 判るように話すにはどうしたらいいかを考えながら子供たちと話すのは楽しいです。 うちの職員全体に展示動物だと言っていました。 自分たちもお客さんに見られていると言う事ですね。  心配性なんです。 柔道をやっていましたが、柔道は「細心かつ大胆」なんです。 細かいことをずっと見ながら、やる時には大胆にぐっとやるという事です。 細心のいいのは常に最悪のことも考えているんです。 最悪なことが起きても想定内なんです。 

入園数が減ってきて危機だったという事も知らないで入りました。 本庁からするとあんな動物園はいらないという議論になっていました。 僕は飼育係がお客さんの側にいないからだと思いました。 飼育係がお客さんの所に行けば、動物は飼育係を見ると同時に、その周りのお客さんを見るわけです。 お客さんと飼育係が一緒にいれば自然と話しますよね。  どうやったら動物の本来の動きが発揮できるようになるか、担当者が考えるんです。   形態的展示、分類学的展示はずっと昔からやってきていました。  これでは図鑑と変らない。 オラウータンの空中散歩を作りました。 動物が動く時にはどういう目的かというと、食べ物を探す時と異性を求める時なので、その二つのどちらかかを与えてやればいいわけです。  檻が無いので、誰かがオラウータンが逃げていると言ったんです。 オラウータンは逃げるために絶対飛び降りない。 あの高さは落ちたら死ぬ高さなんです。

行動展示によって、閉園の危機だった旭山動物園は大人気になりましした。 それが日本に広がりました。 嬉しかったのは動物が生き生きしていると言ってくれたことでした。  それは動物が本来的な行動をとってくれるからなんです。 動物にとってはいい事なのでどんどんやって下さいという事です。 設計図を貸し出しましたが、それぞれが工夫してゆくんです。  

祖母が生き物が好きでした。 ジュウシマツ、カナリヤなど小鳥を飼っていました。 犬、猫、金魚もいて、そのうち手伝っているうちに、虫を取って来て飼い始めて、亀とか目につくものは買ってきました。 父親が出張のお土産にカブトムシ、ゲンジボタルなど買って来て、蚊帳の中に放して、幸せの極地でした。 飼うと繁殖させてみたくて、それは最初はハツカネズミでした。(小学校4年生)  200匹ぐらいになりました。  蛙、サンショウウオなど春になるとその卵を取りに行きます。 200匹のハツカネズミは飼い猫が飼育箱をひっくりがえしてしまって全部逃げました。(父親に叱られる) 自分で管理できないような飼い方をしてはいけないと凄く反省しました。  

中学から柔道部に入りました。 レスリング部、ラグビー部などから声がかかって凄く忙しいんです。 北海道大学に行こうと決めてはいましたが、高校の先生は「お前大学にいくの。」と言っていました。  2回落ちて、自分は成長していないと思って、必死に勉強をしました。 3回目に合格しました。 柔道部に入りました。 理類に入りました。 その後学部移行で理学部生物学科に行きました。  合わなくて農学部の農業生物に行きました。 そこはネズミでした。(トラウマ) 次に獣医学部に行きました。  教授が馬の手術を馬がたったままやっていて、凄く素早い縫い方でした。 その姿を見て俺の生きる道はこれだと思いました。(動物を生かす方向)   牛の獣医になろうと思って、牛の診断でおしりから手を入れて、触診するんですが、柔道で鍛えた腕では入りませんでした。 獣医の免許だけは取ろう決めました。 就職先の案内に旭山動物園がありました。 卒業式の日に面接に行って合格しました。 

日本の動物園は象を繁殖させる自覚がなかった。 ミャンマーに行ってオスとメスにチェンジして、それが繁殖に成功しました。 僕の想像を絶するような出産と子育てでした。  象は出産後はナーバスになって暴れて、子供を蹴とばしてしまう様な危険があるから、子供を取って翌日落ち着いた雌に返しなさいと言うのが、常識でした。 丸山動物園は一切かかわらないという飼い方をしているので、何も出来ない。 最悪の時を考えていろいろなことを決めておきました。 夜、陣痛が始まったが、まだまだだと思っていたら、僕が着いた時には赤ちゃんが生まれていました。 しかも立っていました。 吃驚しました。 母親のやるべきことを全部やっていた。  まず生まれた子に砂をかけました。 象以外の動物は舌で舐めて綺麗にする。 砂をかけることで滑らなくしている。 母親(パール)も自然界で故郷の出産の光景とか見て学習してきている。  群れにこだわっているという事はそういうことなんです。

一番年上のシュティンという雌と母親のパールは実は仲が悪いんです。 一緒にした時の赤ちゃん(タオ)が年寄りのお母さんに対しても寄ってゆくんです。 そういったことをやっているうちに段々と距離が短くなってゆく。 象の基本的な群れが出来たんです。 これが社会性というものだと思いました。  象のことは判っていたつもりでしたが、全然判っていなかった。  人間の生きてゆく目的は自分の思いの達成を第一に考えているが、動物は自分のなかのDNAを次の世代に間違いなく引き継ぐために生きているんです。 動物には人間はとてもかないません。 

子供達には、動物は自分と同じあると思ってほしい。 自分なりの動物を解明して行くことはとっても面白いと思う。  飼うためには、この生き物が絶対に幸せに生きていけるような、飼い方をしていかなければいけない。 そのためにはその生き物のことを知らなければいけない。