2012年2月4日土曜日

クリスティーヌ・レヴィ(大学教授)    ・大逆事件 フランスの反響

クリスティーヌ・レヴィ(ボルドー大学教授) 大逆事件 フランスの反響
大逆事件は1910年桂太郎内閣の時に起きた社会主義者 無政府主義者に対する弾圧事件 
全国で数百人を検挙 され明治天皇暗殺未遂の名目の元に
26人を大逆罪として起訴 24人を死刑宣告 幸徳秋水ら12人が処刑された 
海外でも報じられ冤罪事件として救援運動も起こされました
フランスのボルドー大学教授のクリスティーヌ・レヴィさんは日仏会館の研究員です 
日本歴史の研究者として大逆事件の論文も発表しています
子供の頃京都に住んだことが有る(6~10歳) 父が歴史の教授だった
 
1981年に1年間東大に留学している(労働運動について論文)
今回は4年間の滞在 「日本におけるフェミニズムと母性」がテーマ 「平塚らいちょう」 「青踏」を
読んで興味を持った フランスと日本の出生率の原因をフェミニズムの視点
から検討したいと思った
(フランスはヨーロッパで一番出生率が高く 日本は世界でも最も出生率が少ない)
ボルドー大学では日本語と歴史を教えている フランスではこの15年間で日本への興味が湧いて
きて学生は多くなっている(経済大国・・・アニメ・漫画)

大逆事件への興味の発端は?→労働運動を研究していたら平民新聞を発見して日露戦争に
反対した(反戦運動)のに非常に興味を持った
ヨーロッパでは第一次、第二次世界大戦が有ったが、第一次大戦の前には平和運動が有ったが
それにも拘わらず結局
社会党などが戦争を支持してしまったので戦争が起きてしまった  
ジャン・ジョレス(社会党指導者)が暗殺される
戦争の時にどうやったら戦争に反対出来るのか  反対運動の歴史
戦争が始まっても戦争に反対した・・・平民新聞

幸徳秋水始め12人が処刑されたが 恐怖がタブーを生み出す 
真実を勝ち取ることができるかが非常に大事だと思う 国家は嘘をついていいのか?
この問題には根本的にそれを訴えてそういう事は絶対に受け入れられない 
と言う風に考えないと 国家の嘘を認める事になると怖い大変なことになる 
国家が嘘をついていいと云う事になるとどれだけの人が犠牲になるか判らない

1894年ドレフュス事件(ユダヤ人)  陸軍大尉がスパイと非公開の軍法会議にかけれる 
1896年から他に犯人がいるのではないかと エミール・ゾラが真実を主張する記事を出す
真実を訴える 軍人批判 無実は認められる(1906年) ユダヤ系の人を廃除する動きが裏で
意識的に有った 
フェレール事件1909年(スペイン) 開放的な新しい近代学校を作ろうとした教育者 
カトリック教会が学校を支配していた 自分で考える事のない学校教育だった
モロッコ戦争に反対する運動 2000人が逮捕される 後から彼は捕まった 
運動はしていなかった(思想家故に)
フランスでも何十万人ものデモが有った 1912年に不当判決とされたがその前に処刑されて
しまった(真実は認められた)
大逆事件は真相は明らかにされつつあるが判決は再審請求は否決されている
国家に対する信用  不公平な裁判は問題

フランスには報道はされていた 当時フランスではドレフィス事件の時に動員して国家が間違えた事
に対して大衆運動で真実を勝ち取ったと云う自信を持つようになったというのは大きい
大逆事件が起きて 処刑される前と後では日本の描写が変わった 
処刑前は議会が有るし民主主義的な国だから間違いは起こさないだろうと信用が有ったのが
処刑になったのが 民主主義的ではない日本に対する信用がなくなった 
野蛮な国である     イメージがかなり変わる 
フランスでは日本の大使館に抗議もしている アナトール・フランス ノーベル賞作家も 
抗議している 知識人も抗議をしている
フランス新聞→この人々がいかなる行為も実行しておらず 彼らの意図の身が裁かれている事を
考えるとまったく理解できないと書かれている
実行したと云う証拠の無いのに、人の意図とか思想が裁かれている と言うのは自由が守られていない
 厳しく批判している 当時の一般的な見方

最近の研究では意図すら無い人に対しても含めて処刑されている
アメリカの抗議は大きかった イギリスでもあった デモ行動 大使館への抗議  
日本への抗議行動に対しては情報がなかった(情報が自由でなかった)
大逆事件からの教訓→国家の義務が有ると思う 真実を守ることが大事 守らせる 
民主主義の原点だと思う

戦後60年になるが民主主義的な国なのに自分の歴史に対してどのように立ち向かうのか 
歴史の教訓を得ようとおもうと真実を認めないと云うのは大きな問題だと思う
なんかの形で真実を勝ち取らないと国家に対しての信用は出来るのか疑いを持っても当然ですし、
又人々が懐疑的になると云うのか
別に力関係で真実でなくていいじゃないかと普通に考えるようになると非常に危険だと思う 
そうなれば力関係で全部解決すればいいと云う考え方になって
非常に恐ろしい事が有りうるわけです 
ですから真実を勝ち取る事は非常に重要な事だと思います

中江兆民の『三酔人経綸問答』と 幸徳秋水の「20世紀の怪物帝国主義」をフランス語に訳している
中江兆民 『三酔人経綸問答』は面白い  小国主義 膨張主義について記載又 第一次世界大戦を
予言する様な記述がある 学者が読んでも驚いている
見抜いていたことにびっくりしている 日本は膨張主義ではなく小国主義が良いと云っている  
政治的センスを持っている
中江兆民はフランスに行き(2年) ルソーを翻訳  フランス革命の以前の思想家(モンテーニュ等)
 啓蒙主義を勉強 共和思想の影響が強く受けてる
 
彼は日本に関しては民主主義であったけれども 思想の影響は共和思想が強い
秋水の本は今読んでも意味のある文書 移民問題 愛国心 排他主義 今読んでもとても興味深い 
帝国主義のもたらす悪い問題を分析、言及していている事は驚いた
大逆事件を権力側から作って行った山県有朋 桂太郎 平沼騏一郎らがその後の天皇制 
軍国主義 進んで行って日中戦争 世界大戦 敗戦となり
中江兆民らが警告した意味は非常に大きい 将来的な意味が大きい 
この人たちの方が意味が有り 価値が認められる

これからの日本の進むべき方向としても価値のあるもの 民主主義と言うのは一人一人の価値観
が重要でその価値観によって築かれるものですから
その価値観の中に信用 真実への信用  別に真実でなくてもいいと云うような事であると
民主主義の原則から外れるし 人々が政治に無関心になってしまう  
おそれもある そういう意味でこういう本はとても意味のある 価値のある書物だと思います
今回の来日の研究ジェンダー 女性の位置の改善 今の日本の中ではどうして子供が産みにくいのだろう 
ジェンダーの視点から分析してみたいと思っている
経済的な問題が多いと思うが 戦争問題とジェンダー問題の二つがからんでいると思う
福島については報道が足りなかった 情報をどういう風に庶民に伝えるかという問題がある