2020年5月27日水曜日

山中麻須美(英国キュー王立植物園公認植物画家)・「植物のいのちと響きあう(2)」

山中麻須美(英国キュー王立植物園公認植物画家)・「植物のいのちと響きあう(2)」
日本の植物は江戸時代にシーボルトなどがヨーロッパに持ち帰ったものですね。
イギリスの庭には日本の植物が普通に見られるものが結構多いです。
冗談で日本の植物がないとイングリッシュガーデンも作れないといわれるぐらいです。
イギリスの方は日本から来たものだとはご存じないんです。
キューガーデンにも世界中の人が来るので日本の植物の美しさを知っていただきたいというのがテーマです。
小石川植物園の加藤竹斎が明治の初めに来て彼の絵だとか、高知の牧野植物園の牧野富太郎博士の原画、練馬の牧野記念館から服部雪斎の絵だとか江戸から明治にかけての歴史的な日本の植物画を展示させていただきました。
古い日本の植物画と現代作家の植物画を展示して対比が非常に面白いと言われて高い評価を得ました。
日本の植物画家の石川美枝子さんと小西美代子さんにお願いして日本のアーティストの方々を35人選んで、その方々にキューガーデンが作った300種類の日本の植物のリストをお送りしてそこから3種選んでいただき3年以内に描いていただくということにしました。
展示会のために描いていただきました。

野生種でなくてはいけなくて、かつ科学的に正しくなくてはいけないので、年に一度東大の村田先生、大場先生、池田先生にお願いしてアーティストの方々の絵を全部厳しくチェックしていただきました。
イギリスも日本ブームでTV番組を見てきたという人もいますし、ファイナンシャルタイムスが大きな記事を載せてくれました。
明治の初めに日本のイギリス大使館とキューガーデンがどういう風につながっていたのかという風な歴史を学ぶことができます。
イギリス大使館のハリーパークス公使が集めたものはパークスコレクションと呼ばれているし、アーネスト・サトウが送ってきた書物などもたくさんあります。
当時のキューガーデンは力を持っていて、世界中に散らばった外交官たちに珍しい植物、珍しいなにか植物を使ったものを集めてくる、世界中からいろんなものを集めました。
キューガーデンは2003年に世界遺産に指定されていますが、植物を守ることが地球を守ることにつながるというミッション、その使命とその活動が世界遺産に指定されているんです。

一つの植物が絶滅したことで、それにかかわっているものがいろいろあり、どれぐらいの大きな波がやってくるかということはかなり後にならないとわからない。
例えば虎は絶滅するかもしれないといわれているが、それを守るためには虎が生きてゆく森を作らないといけない。
その森には虎が生きてゆく草食動物がいなくてはいけないので、その草食動物が食べてゆく草がないといけない。
人間だけが他の生物と共生していないということはありえなくて、植物のこと、自然環境を今考えるべきだと本当に思います。
私たちには何ができるのか、私はアーティストでなにができるのか、それは植物を描くことだと思います。
植物の美しさだけではなく植物の科学、植物の役割をたくさんの人にわかっていただくための絵を描くことも大事だと思っています。
地球の現状を植物を通して発信してゆく。

科学者が100人いるよりも私たち地球に住んでいる全員がほんの僅か地球のことを考えるだけで地球は大きく変わっていくと思います。
太陽エネルギーを使って毎日の生活をどう他の生物と共生しながら暮らしていくかということが大切だと思います。
キューガーデンで10年おり、いろんなプロジェクトに参加したりして、地球の環境を支えるのは植物だということをいろんな方に伝えていきたいと思っています。
描いてゆくためには植物の勉強もしなくてはいけないし、生物多様性、自然環境などを強く意識するようになりました。
植物と共生している昆虫なども一緒に絵に入れていこうかと考えています。
趣味として世界中でボタニカルアートを習っていて楽しんでします。
日本には日本植物画クラブがあり、日本の絶滅危惧種についてはずーっと取り組んできました。
アメリカにもアメリカ植物画クラブがあり絶滅危惧種について展示会されたりしています。
日本の展示会ではキューガーデンの展示会とは少し変えてキューガーデンの歴代のアーティストが描いた日本の植物を一緒に展示しました。

「奇跡の一本松」 2012年4月にキューガーデンの日本庭園のなかで震災1周年のイベントが日本大使館とキューの合同で行われて、その時に岩手県から子どもたちが招待されて一本松の種を持ってきてくれました。
キューガーデンにはシードバンクがあり種はそこに保管されています。
陸前高田の市民の生活を守っていた松だったが、津波でみんな流されて一本だけ残っていたがその後レプリカになってしまったが、松の絵を描いて2016年に震災5周年記念のイベントがロンドンの日本大使館で行われたのでそちらにお送りしました。
NHKのニュースになったりしました。
2020年陸前高田の記念館ができるのでそこに展示する予定になっています。
乳がんになってから15年たったので再発はなくなったと思います。
不幸だった出来事で変わってしまうが、何かのきっかけになるのではないかと考えました。
キューガーデンの日本庭園は日本国土交通省が昔働きかけて作っていただいた経緯があり、今度はキューガーデンがプロデュースした庭が陸前高田にできるのもいいのではないかなあと思います。
その庭が交流する場になってくれればと思います。
自然との共生を一本松の絵から発信できればと思います。
マダガスカル島にはサファイアが取れるので、そのために自然林がどんどん伐採されています。
8割近くが固有種であるので、絶滅に瀕している動植物を描いていろんな方にメッセージを送ろうという夢を持っています。